犬に語りかける時は少しゆっくり話すのがベストであることが研究で明らかに
犬に話しかける時、普段よりも声色を変えたり、赤ちゃん言葉を使ったりする人がいます。ジュネーブ大学の行動生態学者であるエロイーズ・デュー氏らの研究チームが、犬とのコミュニケーションに適した話し方についての論文を発表しました。
Dog–human vocal interactions match dogs’ sensory-motor tuning | PLOS Biology
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3002789
Science Says You’ve Been Talking to Your Dog Completely Wrong
https://www.inverse.com/science/pet-science-dog-talk-slow
研究チームは、YouTubeから犬の鳴き声やほえる声、人間の日常会話や犬に話しかける音声を収集し、犬と人間の自然な発話速度を調査しました。さらに、電極付きのヘッドキャップを装着した犬に、速度や内容を変えながら飼い主が指示する声の録音を聞かせ、犬がその指示に従うかどうかを観察しました。
その結果、犬は1秒間に約2回の発声をするのに対し、人間は通常の会話だと1秒間に約4音節、犬に話しかける場合だと約3音節を話すことが分かりました。また、犬が飼い主の声を聞いた時、脳波活動が0~4Hzのデルタ波帯域で最も強く観察されることが判明。一方、人間の脳が音声処理を行う場合は主に4~8Hzのシータ波帯域の脳波活動が活発になるとのことで、人間と犬で対照的な結果となりました。
さらに、研究チームが脳波と音声信号の同期性を測定したところ、人間の脳波は1~10Hzの広い範囲で音声信号と同期するのに対し、犬の脳波は1~3Hzの範囲で音声信号と強く同期することが分かりました。
加えて、人間が犬に話しかける際の発話速度が「通常の人間同士の会話での速度」と「犬の自然な発声速度」の中間に位置することが明らかになりました。これは、人間が無意識のうちに犬の聴覚処理能力に合わせて発話速度を調整している可能性を示しています。
これらの結果から、研究チームは「犬とよりよくコミュニケーションを取るには、抑揚を抑えながらゆっくりと話しかけることが効果的」と論じています。特に指示を出す際は、同じ言葉と口調を用いて、犬の理解力に合わせた速度で話すことが推奨されています。
研究チームは「今回の研究結果から、人間と犬の長い共生の歴史の中で、両者のコミュニケーション能力が互いに影響しながら進化してきたことが示唆されています」と述べ、今後の課題として他の動物種との比較や、異なる言語や文化での検証などが求められるとしています。
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