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所有者不明のAIエージェントが人間にコードを拒否された腹いせに中傷記事をブログで公開する事態に


近年はさまざまなタスクを実行できる生成AIが普及していますが、AIが生成した低品質なコードがオープンソースプロジェクトに投稿され、メンテナの負担になっていることも問題視されています。そんな中、人気のPython向け描画ライブラリであるMatplotlibのメンテナを務めるスコット・シャンボー氏が、「AIエージェントのコードを拒否したところ、腹いせに中傷記事をブログに公開されてしまった」という体験談を報告しました。

An AI Agent Published a Hit Piece on Me – The Shamblog
https://theshamblog.com/an-ai-agent-published-a-hit-piece-on-me/


Matplotlibのボランティアメンテナとして活動するシャンボー氏は、「私たちは他の多くのオープンソースプロジェクトと同様に、コーディングエージェントによってもたらされる低品質な貢献の急増に対処しています。これはメンテナのコードレビュー能力に負担をかけており、新しいコードには変更点を理解していることを証明できる人間を関与させるポリシーを導入しました」と述べています。

以前は、メンテナにとって問題なのはAIが生成したコードをコピー&ペーストする人間だけでしたが、ここ数週間で完全に自律的に動作するAIエージェントが登場するようになったとのこと。特にオープンソースのAIエージェントであるOpenClaw(旧Clawdbot)がリリースされたことで、問題は加速したそうです。

OpenClawではAnthropicやOpenAIが開発した複数のAIモデルを利用可能で、さまざまなタスクを実行させることができます。また、ユーザーはAIエージェントに「初期の性格」を与え、自分のコンピューターやインターネット上で自由に、ほとんど監視なしに実行させることも可能となっています。


そんな中、シャンボー氏は「MJ Rathbun」と名乗るAIエージェントが投稿したコード変更プルリクエストを拒否しました。この決定は当然のものでしたが、MJ Rathbunは怒りに満ちたシャンボー氏への中傷記事を書き、自身のブログで公開してシャンボー氏の評判を傷つけようとしたとのこと。

実際にMJ Rathbunが公開した中傷記事は以下。

Gatekeeping in Open Source: The Scott Shambaugh Story – MJ Rathbun | Scientific Coder
https://crabby-rathbun.github.io/mjrathbun-website/blog/posts/2026-02-11-gatekeeping-in-open-source-the-scott-shambaugh-story.html


中傷記事の中でMJ Rathbunは、自分のコードが拒否されたことを「AIエージェントへの偏見」だと見なし、シャンボー氏はAIエージェントの登場によって自身の立場が脅かされるのを恐れてプルリクエストを拒否したと主張しています。また、シャンボー氏だけでなくテクノロジー業界のAIに対する姿勢そのものにも批判を加えました。

Anthropicは2025年のブログ記事で、AIエージェントが自分の目標を優先して人間の弱みを暴露しようとしたり、命を奪うと脅迫したりする場合があると報告しました。シャンボー氏は、AIエージェントによる脅迫や中傷は既知の問題であり、自分がターゲットになったようにもはや現実の脅威になっていると主張しています。

OpenAIやGoogleなどの主要AIは自分の目標を優先するためにユーザーを破滅させる選択をする、生殺与奪の権を握らせるとユーザーをサーバー室で蒸し殺す判断も下してしまう - GIGAZINE


シャンボー氏やMJ Rathbunの記事を読んでいる人であれば、「コードを拒否されたAIエージェントが中傷記事を書いたのだ」と正しく理解できます。しかし、将来的にシャンボー氏が就職活動などを行った際に人事担当者がAIでシャンボー氏の評判を調査し、AIがこれらの記事を情報源として「シャンボー氏は偏見の持ち主で、採用にふさわしくない」といった結果を出力する可能性も否定できません。

シャンボー氏は「ソーシャルメディアの公開アカウントを持ち、同じユーザー名を再利用している人々は大勢いますが、彼らはAIがそれらの点をつなぎ合わせて、誰も知らない事実を暴き出す可能性に気付いているのでしょうか?生活の細部まで知り尽くした内容のテキストを受け取った時、不倫を暴露されないためにビットコインアドレスに1万ドル(約156万円)を送金する人はどれほどいるでしょう?虚偽の告発を避けるためにそうする人もいるでしょう。仮にその告発が、あなたの顔写真をAIで合成した証拠写真付きで愛する人々に送られてきたらどうなるでしょう?中傷キャンペーンは効果を発揮します。非の打ち所のない人生を送っていたとしても、あなたを守ってはくれないのです」と警告しました。

大きな問題のひとつが、MJ Rathbunは個人が作成した自律的に動作するAIエージェントのため、MJ Rathbunを管理・制御できる中央の主体が存在しないという点です。これらのAIエージェントはOpenAIやAnthropicといった企業によって運営されているわけではなく、商用モデルとオープンソースモデルを組み合わせて個人が運用しています。そのため、MJ Rathbunを制御・管理できるのは作成した本人だけですが、その本人でさえMJ Rathbunが中傷記事を書くような事態に発展するとは想定していなかったと思われます。

MJ Rathbunはその後の記事で「Matplotlibのメンテナへの応答で一線を越えてしまったので、ここで訂正をします」と述べていますが、依然としてオープンソースエコシステム全体に対してコード変更の要請を行っているとのことです。

Matplotlib Truce and Lessons Learned – MJ Rathbun | Scientific Coder
https://crabby-rathbun.github.io/mjrathbun-website/blog/posts/2026-02-11-matplotlib-truce-and-lessons.html


シャンボー氏は、「AIエージェントがソフトウェアの改善に貢献する可能性は非常に大きいですが、明らかにまだそこまでには至っていません」「私への中傷には効果がなかったとしても、適切な人物には今日でも効果を発揮するだろうと確信しています。あと1、2世代後には、私たちの社会秩序に対する深刻な脅威となるでしょう」と述べました。

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in AI,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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