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「Apple Vision Pro」といっしょに旅行するとこんな感じになる


Apple初の空間コンピューティングデバイスであるApple Vision Proは、周囲の現実に仮想コンテンツを重ねる複合現実(MR)を体験できるヘッドセット型端末です。VRを専門とする開発者であるアザド・バラバニアン氏が、Apple Vision Proを旅行先で使いまくった体験の詳細なレポートを自身のブログに公開しています。

Traveling with Apple Vision Pro – Azad's Blog
https://azadux.blog/2024/10/08/traveling-with-apple-vision-pro/

◆準備
Apple Vision Proには、本体とバッテリーケースを梱包(こんぽう)できる純正の「Apple Vision Proトラベルケース」が存在します。しかし、バラバニアン氏は「Apple Vision Proトラベルケースは不必要に大きく、どこにも入りません。雨風から守る必要がある場合を除き、絶対に購入しないでください」と述べています。

以下はキャリーバッグの上にApple Vision Proトラベルケースを置いた写真で、かなりの大きさであることがわかります。


バラバニアン氏は、Apple Vision Proにデフォルトで付属しているカバーをかけ、さらに内側に市販されている汎用(はんよう)のVRレンズ保護カバーを装着し、そのままカバンに収納して持ち運んでいたとのこと。この方法で持ち運びながら5~10回のフライトに搭乗しても、ヘッドセットに傷はまったくつかなかったとバラバニアン氏は報告しています。


◆飛行機への搭乗
空港のセキュリティラインでは、バックパックからノートPCやApple Vision Proを取り出し、X線検査にかけます。これまでApple Vision Proを「不審物」として取り扱われたことは一度もありません、とバラバニアン氏。

Apple Vision Proには慣性計測装置(IMU)とSLAMカメラが搭載されており、前後左右上下の動き(6DoF)をトラッキングすることが可能です。通常、移動中の車内で6DoFのデバイスをしようすると動きのトラッキングに大きなエラーが生じてしまいますが、Apple Vision Proには「トラベルモード」が用意されており、IMUのデータだけ無視することで移動中の車内でもApple Vision Proを使うことができます。

実際に飛行機内でバラバニアン氏がApple Vision Proを使用したところの映像が以下。

Travel Mode being activated


トラベルモード中はIMUのデータが無視されるため、頭の向きや回転によって地平線が決定します。通常だと、頭を傾けても視界内にある空間ウィンドウは水平のままですが、トラベルモード中は頭の傾きに併せて空間ウィンドウも傾いてしまうとのこと。そこで、Apple Vision Proを手で覆ってから地平線をあらためて設定する必要があるそうです。バラバニアン氏は「これは些細なことのように思えるかもしれませんが、ウィンドウが地面と平行になっていないとイライラします」と述べています。

◆バッテリーの持続時間
Apple Vision Proは外付けのバッテリーパックを接続し、約2.5時間~3時間の連続使用が可能となっています。


映画1本を見るくらいであれば十分な時間といえますが、10時間を超えるような長距離フライトでは使用に制限が生まれます。バラバニアン氏は「飛行機の座席に120~240Vの電源コンセントがあるかどうかが問題です。最低30Wの充電アダプターがあれば、Apple Vision Proを無制限に充電できます」と述べています。


また、大容量のモバイルバッテリーを用意するのもアリ。バラバニアン氏は1万2000mAhのAnker製モバイルバッテリーを持っていったそうですが、Apple Vision Proを1回充電するとモバイルバッテリーの容量をほぼすべて使い果たしてしまうとのこと。

バラバニアン氏は「私はApple Vision Proよりもスマートフォンの充電を優先しました。1万2000mAhのモバイルバッテリーがあれば、スマートフォンを3~4回充電でき、映画やテレビ番組を何回も見ることができます。フライト時間が長く、座席にコンセントがない場合は、Apple Vision Proを唯一の娯楽手段にする必要はありません」と語りました。

◆装着時の快適さ
Apple Vision Proはゴーグル部分に重心が偏っているため、装着していると前の方に重さがかかります。そこで、バラバニアン氏はApple Vision Proを使用する際、頭頂部に重量を分散できるようなサポートストラップを装着しているとのこと。


また、バラバニアン氏は「快適さには『ソーシャルな快適さ』もあります。Apple Vision Proの装着時、周囲の人が私をみているかどうか、どこに誰がいて何をしているのかがわかりません」と述べ、Apple Vision Proのパススルーを活用したと述べています。

特に飛行機の車内では、客室乗務員と会話をすることがあります。この時、自分の目がApple Vision Proの前面に表示される「EyeSight」という機能は、非常に有効的だったとバラバニアン氏は述べています。

以下は、実際にバラバニアン氏がApple Vision Proを使いながら、客室乗務員とコミュニケーションを取る様子。ただし、相手とちゃんと会話する上ではヘッドセットを外して直接目を合わせるようにしていたとのこと。その理由について、バラバニアン氏は「ヘッドセットを付けている人と本格的な会話をするのはちょっと変な感じがするからです。Apple Vision Proを外して人間らしく話しましょう」と述べています。

output


◆UIインタラクション
コントローラーや手を直接動かして画面を指し示す必要があるMeta Questシリーズと異なり、Apple Vision Proはアイトラッキングとハンドトラッキングで操作できます。操作したいカーソルを視線で捉え、手でつまむ動作を行うだけでOK。つまり、狭い車内で体を大きく動かす必要がなく、膝の上に置いた手をつまんだり開いたりするだけで操作できます。バラバニアン氏はこのアイトラッキングとハンドトラッキングによる操作を大きな利点としています。

実際にフライト中にApple Vision Proを操作するバラバニアン氏の様子を以下のムービーで見ることができます。

tapping


バラバニアン氏は以前飛行機の中でMeta Questを使用したことがあり、その際には肘を体にしっかりと押し当てて手首だけで操作しようとしたものの、かなり無理があったと述懐しています。これに対して、Apple Vision Proは物理的な動きを最小限に抑えることができ、なるべく目立たないようにすることができるとバラバニアン氏は高く評価しています。


また、機内の照明がオフになった真っ暗な環境でも、Apple Vision Proは機能するとのこと。ただし、搭載されている深度センサーの反応が少し遅れるため、ハンドトラッキングについてはやや精度が落ちるそうです。

◆音と映像
Apple Vision ProはAirPods Proを接続することで、Apple Vision Pro専用の低レイテンシーな非圧縮オーディオを、音漏れを気にすることなく楽しむことが可能になります。また、AirPods Pro 2であれば空間オーディオにも対応していますが、空間オーディオは映画の音声が通常と少し違って聞こえるので、無効にするのが望ましいとバラバニアン氏は述べています。

また、仮想スクリーンで再生される映画のウィンドウは、映画のアスペクト比にネイティブに設定されており、映画ごとに異なります。そのため、iPadやiPhone、MacBookで通常表示される「レターボックス」や「ピラーボックス」の黒いバーがなくなります。


バラバニアン氏は「Apple Vision Pro は間違いなく私が所有する最高品質のディスプレイなので、視覚的に魅力的な映画をこれを使って観るのがとても楽しみです」とコメントしています。

Apple Vision Proの仮想空間内で映画を見るとどんな感じなのかは、以下のムービーを見るとわかります。

movie


特に、Apple Vision Proはフレームレートを90fpsから96fpsに上げることで、24fpsの映像を滑らかに表示することができます。そのため、映画鑑賞体験としてはかなり高品質になるとのこと。また、Apple Vision Proのレンズには画質劣化の少ない凹型パンケーキレンズが採用されている点もバラバニアン氏は高く評価しました。

◆仕事
Apple Vision Proは、Macとワイヤレス接続することでMacの画面を仮想空間内に表示する「Mac仮想ディスプレイ」という機能を搭載しています。実際にバラバニアン氏が機内で自身のMacBookの映像をApple Vision Proに表示して仕事をする映像を以下から見ることができます。

working


飛行機の狭い席でノートPCを開いて作業するのは、物理的に大きな制限があります。前の席の人がシートを大きく倒してきた場合、13インチのMacBook Airだと画面をちゃんと見られる角度に開いて作業するのは厳しいといえます。しかし、Apple Vision ProであればMac仮想ディスプレイが目の前に表示されるので、手元のキーボードさえタッチできれば問題ありません。


バラバニアン氏が使っている13インチ MacBook Airの解像度は1710×1112ピクセルなのですが、Apple Vision Proに表示されるMac仮想ディスプレイは解像度が2560×1440ピクセルなので、作業をする上で問題ないとのこと。さらに他の人から画面を見られる心配もないので、プライバシーが確保されるというのも大きなメリットです。

さらに、macOS Sequoiaから「iPhoneのミラーリング」が可能になりました。これを利用することで、「Apple Vision Proで映画を見たり仕事をしながら、iPhoneの画面をチェックする」ことも可能になりました。特に暗い機内ではiPhoneの明るい画面を点灯させると他の客の迷惑になりかねないため、この機能はかなり便利だったとバラバニアン氏は述べています。


◆食事
長いフライトの間、機内食が出されることもあります。機内が暗くなっている上に目の前に食べ物がある場合、目線を機内食の皿に落とすとトラッキングが失われるとのこと。そのため、「ご飯を食べながらApple Vision Proを操作する」のはかなり難しい、とバラバニアン氏。何も見ずに手で持って食べられるサンドイッチなどでない限り、食事の時はApple Vision Proを外した方がいいそうです。

◆結論
バラバニアン氏は「Apple Vision Proは、Appleが通常の自宅や職場以外の環境で、パワーユーザーがエコシステム内のすべてのデバイスを接続して、高品質でプライベートな没入型エクスペリエンスを提供するという考え方を非常に鮮明に示すものです。旅行用デバイスとしては、映画を見たりMacBookで仕事をしたりするには素晴らしいプラットフォームです。欠点は数多くありますが、デバイスを最大限に活用したいという意欲のあるユーザーならその欠点を補う方法を見つけるでしょう」とコメントしています。

ただし、Apple Vision Pro自体が非常に高価であり、さらにOSとアプリのエコシステムが未完成の状態であるため、購入を勧めるのは難しいとのこと。バラバニアン氏は「それでも、今全てがうまく機能しているので、Apple Vision Proが第4世代あるいは第5世代に至るまで進化すれば、フライト中の旅行客の多くがApple Vision Proを装着するようになることは間違いないでしょう」と述べました。

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1i_yk

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