サイエンス

「ネコは(ほぼ)液体」という論文が登場


ネコは非常に柔軟な体を持っており、長い体毛に覆われているため実際のサイズよりも体が大きく見えるため、まるで液体のようと言われることがあります。そんなネコの柔軟性を科学的に調査した「ネコは(ほぼ)液体です!」という論文が発表されました。

Cats are (almost) liquid!—Cats selectively rely on body size awareness when negotiating short openings: iScience
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(24)02024-8


Yes, cats are liquids—but only in one dimension | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/yes-cats-are-liquids-only-one-dimension

At-home experiments shed light on cats’ liquid behavior
https://www.sciencenews.org/article/home-experiments-cats-liquid-behavior

ハンガリーのブダペストにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学者であるペーテル・ポングラーツ氏が、ネコの体の柔軟性を調べた論文を発表しました。

ポングラーツ氏は過去にイヌでも同様の実験を行っており、イヌは「不快なほど狭い隙間を通り抜ける前に速度を落としてためらう」ことが明らかになりました。ここから、イヌは自分の体の大きさを認識していることが明らかになっています。それでは「ネコは?」と考えたのが、今回の研究の始まりだそうです。


しかし、ネコの性格は内向的な傾向にあり、研究室などの見知らぬ環境ではストレスを感じてしまうため、ネコの行動をイヌのように研究室で調査するのは「難しい」とポングラーツ氏は説明しています。そこで、ポングラーツ氏は同僚の協力を得て移動可能な実験設備を作り、ブダペスト在住のネコの飼い主29人の協力を得て、各家庭でネコの行動を調査しました。

ポングラーツ氏らが作成した実験設備は、「一定の高さで横幅が徐々に狭くなっていく開口部」(A)と、「横幅は一定で高さが徐々に低くなっていく開口部」(B)が開いた2つの板です。それぞれ開口部が5つあり、これをドア枠に設置することでネコがどの開口部まで通り抜けられるかを調査できるようになっています。


実験では、被験体となるネコと同じ側に実験者が立ち(A)、ネコの飼い主は板を挟んだ奥側(O)に立ちます。実験時、猫の様子はカメラで撮影されました。


実験ではネコが開口部を抜けたら飼い主が捕まえ、研究者にネコを渡して別の開口部を通り抜けることができるか繰り返し実験したそうです。しかし、ネコの中には触られるのが嫌いな個体もいるため、「どんなことがあっても飼い主の手から逃れようとするネコもいた」とポングラーツ氏は語っています。

実験に参加したのは38匹のネコで、このうち無事実験を終えることができたのは30匹だけだったそうです。実験の結果、ネコは「一定の高さで横幅が徐々に狭くなっていく開口部」は通り抜けられるか否かに関係なく、躊躇なく通り抜けようとするものの、「横幅は一定で高さが徐々に低くなっていく開口部」では高さが一定より低くなると立ち止まってしまったそうです。具体的には、30匹中22匹のネコが「横幅が一定の低い穴」を通り抜けることをためらったそうですが、「高さが一定の狭い隙間」の前で立ち止まってしまったネコはわずか8匹のみでした。なお、ネコは体の幅の半分ほどしかない細い隙間でも止まることなくスルリと通り抜けてしまうそうで、これについてポングラーツ氏は「ネコは身体感覚を使っておらず、まるで液体のよう」と語っています。

ポングラーツ氏はネコが高さの低い穴を通り抜けることをためらう理由として、「自然界において身をかがめて低い穴を通り抜けることをためらうのは、生存戦略のようなものかもしれません」と言及。これは穴の向こう側が見えない状態で穴を通り抜けると、潜在的な脅威に対して無防備になる可能性があるためです。


安全なはずの我が家であっても「横幅が一定の低い穴」の前では立ち止まってしまうという事実は、ネコが接近を計画する際に自分の体の大きさを想像する方法に頼っていることを示唆しています。

ポングラーツ氏の実験に対して、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の航空宇宙エンジニアであるスリダール・ラビ氏は「シンプルで洗練されている」と言及。この発見は、ネコが自分の体の大きさを認識しており、頭の中で自分自身のイメージを形成している可能性があることを示唆しました。

モスクワ精神分析研究所の心理学者であるイヴァン・クヴァトフ氏は、イヌは体の柔軟性が低いため狭い穴を通る前に立ち止まって考えてしまうものの、ネコは高い柔軟性から特定の状況でしか体の大きさについて考慮することがないのではないかと推察しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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