国家安全保障上の理由から主に中東で国ごとのAIチップ販売数に上限を設けることをアメリカ政府が検討中か
NVIDIAなどのアメリカ企業が国外の企業へ製品を販売する際、国ごとに販売数の上限を設けることをアメリカ政府が検討していると、Bloombergが情報筋の話として報じました。
US Weighs Capping Nvidia, AMD AI Chip Sales to Some Countries - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-10-15/us-weighs-capping-exports-of-ai-chips-from-nvidia-and-amd-to-some-countries
US govt reportedly mulls capping AI GPU exports from Nvidia and AMD to the Middle East | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/artificial-intelligence/us-govt-reportedly-mulls-capping-ai-gpu-exports-from-nvidia-and-amd-to-the-middle-east
匿名を条件に語った人物によれば、このアプローチは国家安全保障上の観点から行われるもので、政府関係者は特にアラブ首長国連邦やサウジアラビアといった中東諸国に目を向けているとのこと。このような国ではAIデータセンターへの関心が高まりつつあり、そのための資金を潤沢に持っているためです。
これまでバイデン政権は、製品が中国に横流しされる恐れがあるとして、NVIDIAやAMDのようなチップ企業が中東やアフリカ、アジアといった40カ国以上にAIチップを出荷することを制限しています。これに加えて国別の販売上限を設定した場合、明らかな制限強化に当たり、関係者の中にはAIチップの輸出を外交の切り札と見なすようになった人もいるとのことです。
情報筋によると、検討はまだ初期段階にあり、流動的とのこと。
2024年9月30日、アメリカの商務省はデータセンター向けのテクノロジー輸出についての枠組みを更新し、ライセンスの認証水準を厳格化した上で、パートナーがより容易にアメリカの技術へアクセスできるようにしています。この際、商務省の担当者は「さらに多くのルールが登場する」と述べていたとのことです。
Bloombergは商務省およびNVIDIAやAMD等に取材しましたが、いずれもコメントを控えたといいます。
アメリカはすでに中国等への半導体輸出に制限を設けていますが、制限を受けた中国が国内で技術をまかなうべく多額の投資を行ったり、アメリカの半導体メーカーが制限を回避できるような低スペックの半導体を製造したりして、半導体の確保に尽力しています。
NVIDIAがアメリカの輸出規制に対応した中国向けの新しいフラグシップAIチップ「B20」を開発中との報道 - GIGAZINE
Bloombergによれば、政府関係者の中には世界のAIチップ輸出に対してより制限的なアプローチを採用すべきだと主張する者もいれば、中国が台頭して世界中の顧客をかっさらうような事態が起こらないよう、規制を強くしすぎないよう警告する者もいるとのことです。
Bloombergは「もし国別の上限規制を進めるのであれば、バイデン大統領の任期の最後の数カ月で新政策を実現するのは難しいかもしれない。このようなルールは施行するのが難しく、アメリカの外交関係にとって大きな試練となるだろう」と述べました。
・関連記事
NVIDIAは2024年に中国でH20チップを100万個販売して2兆円を売上げる予定、HuaweiのAIチップの2倍を販売して存在感を示す - GIGAZINE
中国IT大手TencentがNVIDIAに頼らず自社製AIインフラのAI学習能力を20%強化 - GIGAZINE
アメリカが中国への半導体技術規制をさらに強化する方針 - GIGAZINE
半導体製造業界で中国のSMICが3位に躍進したと調査会社が報告 - GIGAZINE
・関連コンテンツ