この世界は破滅に向かっているのか?
テレビやSNSを見ると、毎日のように悲惨なニュースや心が暗くなる現実が押し寄せてくるため、「この世界はどんどん悪くなって、やがて破滅するのだろう」という感覚を持ってしまっている人もいるはず。これに対して科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが、人類がこれまで築き上げてきた進歩に目を向け、これから先の未来に思いをはせる動画を公開しています。
Is Our World Broken? - YouTube
現代社会は明らかに、これまで人類が生きてきたどの時代よりも素晴らしい時代だといえます。これほど多くの人々が健康で裕福に暮らせていた時代は、過去にありません。
それにもかかわらず、生きるということは非常に困難です。世界中では1日あたり1万5000人以上の子どもが亡くなっており、7億人が極度の貧困の中で暮らしています。また、たとえ豊かな国や地域に暮らしているとしても、その中には多くの不平等と日々の苦しみ、そして格差や政治思想による分断があります。
人類はこれらの問題を解決することはできていないため、多くの人々は「暗い時代に生きている」という感覚にとらわれています。人はあまりにも大きくて解決できない問題に直面すると、孤立感や無力感を覚えやすくなってしまうとのこと。
しかしKurzgesagtは、これまで人類が歩んできた道のりを物語として振り返ることで、新たな視点を得られるのではないかと主張しています。
時間と空間は約140億年前、ある種の純粋なエネルギーの状態から始まりました。
エネルギーはやがて力と粒子に変わり、カオスの中から自然法則が生まれ、星が作られました。
新しい星とさまざまな世界が出現し、複雑でないものはそのまま消滅していく中で、ちょうどいい条件を持つ星ではさらに複雑なものが誕生しました。
それが生命です。
数十億年にわたる環境とその他の生命との戦いを経て、生命は進化を続けました。その結果、植物・動物・菌類といった異なる生物群が誕生。
地球では、複雑な生物がフルスピードで進化と絶滅を繰り返しました。数百万もの新種が登場しては消滅を繰り返し、そのたびに進化を重ねて、これまでの生物より優れた存在が現れました。
そして約600万年前、ついに人類(ヒト亜族)が誕生しました。
当初は他の多くの動物の中の一種だった人類ですが、進化と絶滅を繰り返す中で、次第に脳が発達していきました。それに伴ってこの世界についての認識を深め、星に祈ったり、火を利用したり、石を道具として使うようになりました。
そして20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が登場しました。世代にして、現代人からおよそ1万世代前の祖先に当たります。
生活は依然として過酷なものでしたが、当時の人々は世界をより良いものにしたいと考えていました。そのため、より優れた道具を作り、死後も情報を残す方法を編み出しました。
人々は農業を始め、最初の村や寺院が作られ、雪だるま式に文明が発展していきました。
文学・天文学・医学・哲学・科学が成長し、工業化が進んでようやく現代の情報化社会へとたどり着いたというわけです。
ここ数世代で、人類はこれまでにない方法で世界を変えました。土地を切り開いて食料を生産する農場に変え、コンクリートや機械で覆い尽くされた都市を作り上げました。
この世のあらゆるものを構成する原子について知り、他の星にまで到達しました。
しかし、現代社会を生きる人間自体は、古い時代から変わっていません。
祖先が生きていた厳しい世界で生き抜くのに必要な資質は、今でも現代人の生活に影響を及ぼしています。たとえば、カロリーの高い食べ物を好む性質も、食べ物が少なく飢餓が身近にあった祖先が生き抜くために重要な要素でした。
仲間に受け入れてほしいという欲求も、暗闇に潜む外敵を想像しておびえるのも同様です。
格下だと見なした相手や他の動物に対して残忍であるのも、縄張り意識や所有欲が強いのも、変化を起こすのを恐れるのも、自分がもたらす害を軽視するのも、「自分たちの外部」で困っている人を無視しがちなのも、人間に備わった性質だといえるとのこと。
Kurzgesagtは、「人間は善良ではありません。私たちの歴史を振り返ってみると、自分自身にそんな期待はできないとわかります。自然界では美しさだけでなく、道徳や優しさのかけらもない暴力や闘争も目にします。私たちは本能に突き動かされてきた頂点捕食者であり、思いやりのない世界で生き残ってきました」と述べています。
SNSや石炭火力発電所、核兵器などが登場した現代社会に生きる人々も、根本的なところでは原始人とそう変わりません。現代社会の進歩に人間は追いついていないというわけです。
Kurzgesagtは、「今日に生きる人類の本当の悲劇は、私たちが驚くほど強力な存在であるということや、その可能性に気付いていないということです」「しかし、宇宙の物理的な限界を除けば、私たちが文字通りの楽園を創造するのを妨げるものは何もありません」と述べ、人類には大きな可能性があると主張しています。
人類は長いこと「いずれ来る終末」について考え続けてきましたが、現代社会に生きる人々が終末を直接目にする可能性はかなり低いものです。人類が今後数百年、もしくは数百万年にわたり存続する可能性は十分にあります。
未来の人間からすれば、現代社会はほんの始まりに過ぎないかもしれないのです。
さらに、600万年前の祖先は何もかもが手探りの状態から出発しましたが、現代人や次世代の子孫はこれまでに蓄積された豊富な知識を活用することができます。これは、他の人が膨大な時間を費やしたゲームのセーブデータを手渡されたようなものだといえます。
確かに現代社会は問題が山積みですが、これまでに存在した中で最も素晴らしい世界であることも間違いありません。そして人類は、これを改善していくことができます。
おそらく1924年に生きていた楽観的な人でさえ、わずか1世紀の間にこれほど貧困が減り、病気の新たな治療法が開発され、余暇や娯楽の選択肢が増えるとは想像できなかったはずです。
約1万年前、農業が誕生したことによって人類の歴史は大きく変わりましたが、現代がまさに未来人にとっての農業革命に当たる時代かもしれません。
宇宙開発やAIの普及、バイオテクノロジーの進展、新たなエネルギーの利用方法などは、数世代も人類が考え続けた結果として生み出されました。今ある貧困や病気、格差、気候などの問題も数十年、数世紀にわたって考え続ければ、答えが出る可能性は高いとのこと。
もちろん、これからの世界がすべてトントン拍子で改善されるというわけではなく、その道のりは困難で挫折に満ちたものとなるはずです。それでもKurzgesagtは、「もし私たちが自分たちの行いを正すことができれば、望んでいるよりもはるかに素晴らしい世界を作り出すことができるでしょう」と主張しました。
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