サイエンス

チンパンジーの「危ない木渡り」は幼少期がピーク、人間の思春期が危なっかしく見える仕組みが示唆される


人間の子どもが思春期になると危なっかしい行動が増える理由について「心身の変化に伴って無謀な行動をしたくなるから」と考えている人もいるかもしれません。しかし、野生のチンパンジーを観察した研究結果は、思春期の子どもが危なっかしく見える理由について異なる視点からの示唆を与えています。

Chimpanzee locomotor risk-taking points to the importance of parental and alloparental supervision in humans | iScience
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(25)02713-0

Risks young chimps take as they swing through the trees underscore role of protective parenting in humans | The Conversation
https://theconversation.com/risks-young-chimps-take-as-they-swing-through-the-trees-underscore-role-of-protective-parenting-in-humans-272787

ミシガン大学の人類学者であるローラ・マクラッチー氏、ジェームズ・マディソン大学の生物学者ローレン・サリングハウス氏らの研究チームは人間の危険な行動について知るため、人間に近い動物であるチンパンジーの行動を研究しています。危険な行動について解明するために人間を危険にさらすことは倫理的に許されませんが、野生のチンパンジーは年齢を問わず木々の間を移動するため、優れた代替研究対象だとのこと。

今回研究チームが注目したのは、チンパンジーが木の上を移動する途中で「体を支えるものがなくなる瞬間」が生まれる動きです。木の枝を握ったまま飛び移るのではなく、完全に手を離して飛び移る、落ちて下の枝へ移るといった動きが含まれます。マクラッチー氏らはこれを「leaping and dropping(飛び移りや落下)」として説明しています。


「leaping and dropping」は木々の間を移動する際に使われますが、チンパンジーは必ずしもうまく飛び移ったり着地したりできるとは限りません。長年の観察から、時にはチンパンジーが着地に失敗してケガや死亡の原因になることがわかっているとのこと。

研究チームは、チンパンジーが身体的リスクのある「leaping and dropping」をするパターンが人間と似通っているのではないかと考えました。そこで、同じウガンダのキバレ国立公園にいる野生のチンパンジーを観察の対象とし、年齢の幅が広い集団を追跡して樹上移動の様子を記録しました。その上で、飛び移りや落下が年齢によってどれだけ起きやすいかを統計的に比べています。


結果は、人間の「思春期にリスク行動が増えやすい」という印象と逆でした。チンパンジーでは2~5歳頃が最も飛び移りや落下が多く、年齢が上がるほど減っていきます。論文によると、15歳以上の成体と比べて2~5歳は約3倍、5~10歳は約2.5倍、10~15歳は約2倍ほど飛び移りや落下が起こりやすかったとされています。つまり、思春期に急に増えるのではなく幼い時期に多く、成長するにつれて落ち着いていく形です。


論文では飛び移りや落下の起きやすさが性別だけではあまり説明できない点も示されました。たとえば「オスだから無茶をする」「高い場所にいるから無茶をする」といった単純な図式には当てはまらず、成長段階そのものが大きく効いている可能性が高いということです。

研究チームは、2歳未満の子どもは母親にしがみついて過ごす時間が長いため、今回の分析からは外しています。その一方で2~5歳になると母親の腕が届かない範囲で動く場面が増え、この年齢層では飛び移りや落下が観察されたケースの82%で母親の腕が届かない位置にいました。こうした状況が、幼い時期から危ない動きを試しやすくしている可能性があります。


ただし、この結果だけで「チンパンジーの思春期は危険ではない」と結論づけられるわけではなく、論文が扱っているのは木の上での移動に伴う身体的な危険のみです。マクラッチー氏らは、危ない動きを止められるかどうかだけで年齢差を説明するのではなく「大人は体が重く骨の柔軟性も下がるため、落下のダメージが大きくなりうる」とも述べています。

その上でマクラッチー氏らは、リスク行動が目立つ時期は心身の成長段階だけで決まるのではなく保護者が子どもの危ない行動を止められるのかどうかといった環境の違いでも変わりうるとまとめています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1b_ok

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