メモ

「AIは実際のところ従業員の生産性を低下させている」という指摘


生成AIツールは時間のかかるさまざまなタスクを代替し、職場の生産性を大幅に向上させるのではないかと期待されています。ところが、2500人以上の労働者や経営者を対象にした調査では、実際のところ生成AIツールは仕事量を増やし、生産性を妨げていることが明らかになりました。

AI is actually making workers less productive - WorkLife
https://www.worklife.news/technology/ai-is-actually-making-workers-less-productive/


アメリカのカリフォルニア州に拠点を置くフリーランスプラットフォームのUpworkは、2500人以上のフルタイム労働者やフリーランス労働者、経営者を対象に「生成AIを仕事で使うことで生産性が向上したと思うかどうか」を調査しました。

その結果、仕事で生成AIを使用している労働者の約80%が、生成AIによって仕事量が増えてしまい、生産性が妨げられていると回答しました。これは、生成AIツールがこれまで人間によって行われてきた煩雑なタスクを減らし、生産性を大幅に向上させるという期待と真逆の結果です。


調査に回答した労働者は、AIが生成したコンテンツのレビューやモデレーションに多くの時間を費やしているほか、ツールの使用方法を学ぶための時間も増えていると述べています。Upworkの調査では、経営幹部の約96%が「AIが生産性を向上させる」と予想した一方、従業員の約40%が「AIによる生産性向上がどのようにして実現されるのかわからない」と回答しており、経営側と現場側で断絶が起きていることも示されました。

労働や人事に関するウェブメディアのWorkLifeは、「雇用主は新しいテクノロジーを効果的に統合し、一定のROI(投資利益率)を得るために、AIへの期待とアプローチを調整する必要があります。しかし、得られる利益は雇用主が期待しているよりは少ないでしょう」と指摘しています。


経営コンサルティング企業のガートナーでシニアディレクターアナリストを務めるエミリー・ローズ・マクレー氏は、「何が起きているのかというと、AIの誇大広告のバブルがあまりにも巨大すぎて、現時点で展開されている方法でもたらされる影響と釣り合っていないということです」と述べました。

実際にマクレー氏が話したあるクライアントの取締役会は、生成AIの導入によって人員を約20%削減できると見込んでいたそうです。しかし、どの企業もAIの導入でそのような人員削減に近づいてはおらず、「AIを導入したから人員が削減できる」と簡単に結論付けられるものではありません。

生成AIツールの問題点として挙げられるのが、生成AIはいまだに幻覚(ハルシネーション)を起こしたり、合理的に聞こえる答えを捏造(ねつぞう)したりする不完全さを持っているという点です。確かにAIは物事や情報をまとめるのに役立ちますが、それを実際のビジネスに適用する前に、人間による資料や事実の再確認が必要不可欠です。そのため、すべてのケースで生成AIの導入が生産性の向上につながるとは限らないというわけです。

もちろん、法律分野では弁護士が既存の判例を調査・分析し、膨大な量の情報を要約する際にAIツールが役立っているなど、一部の分野では生成AIが労働者の時間短縮につながっています。また、生成AIを搭載したチャットボットを社内に導入することで、従業員が新しいソフトウェアの操作方法やタスクの進め方について学ぶ時間を大幅に短縮できたり、従業員の質問に答えて適切な社内リソースに誘導することで人事の負担を減らしたりと、有益なユースケースも存在します。

しかし、いずれの場合でも出力の有効性を確認するには人間が必要であり、時間のかかるレビュープロセスを怠るとさまざまなリスクが生じるのも事実です。Upwork Research Instituteのマネージングディレクター兼責任者であるケリー・モナハン氏は、「大規模言語モデルの多くは人間がループの間に入り、人間の判断と監視がある時にのみ適切に動作します。それがこのテクノロジーの現状です」と述べました。


モナハン氏は、生成AIツールを使用して生産性を向上させるには、「解決しようとしているビジネス上の問題とは何か」を考える必要があると指摘。しかし、労働者は生成AIツールの活用に向けて仕事のやり方について考え直すどころか、テクノロジーに置いてきぼりにされていると感じているそうです。

Upworkの調査によると、労働者の約40%は「AIの活用について会社側があまりにも多くのことを求めすぎている」と感じており、生成AIツールの使い方を独学するために多くの時間を費やしているとのこと。マクレー氏は、雇用主が生成AIツールに関するフォーカスグループを開催し、従業員が直面している障壁や必要なトレーニングを正確に判断することで、従業員をより適切にサポートできると主張しています。

マクレー氏は、「従業員が生成AIを試し、その使い方を学ぶことが最優先事項であるならば、AIで行ってほしいことの実際の事例があることを確認し、その方法を学ぶためのツールと余裕を提供してください。しかし、それと同時に『AIは私たちにとって必要なことをしてくれない』『AIが実際には役に立たない』というフィードバックに対し、非常にオープンであることも重要です」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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