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社内SNSの導入に際して管理職が知るべき落とし穴と上手な活用方法とは?

by greyweed

最近では社内のコミュニケーションツールにSlackYammerなどの社内SNSツールを導入し、業務連絡の円滑化を図る企業が増えてきました。そんな社内SNSを導入する時に「管理職が社内SNSについて知っておいたほうがいいこと」について、Harvard Business Reviewが解説しています。

What Managers Need to Know About Slack, Yammer, and Chatter
https://hbr.org/2017/11/what-managers-need-to-know-about-social-tools?_lrsc=8d4748d3-511b-4e25-896d-c2963ddacbc9

マッキンゼー・グローバル研究所が4200もの企業を対象に実施した調査によると、約72パーセントもの企業が社内コミュニケーションの向上を目的に社内SNSを導入したと答えたとのこと。多くの企業で社内SNSが導入されているか、導入を検討しているといえそうです。


大手金融サービス会社を対象に実施された社内SNSの効果を測定する実験では、従業員を「社内SNSを利用するグループ」と「社内SNSを利用しないグループ」の2つに分け、6カ月間にわたってそのパフォーマンスを計測したとのこと。すると、社内SNSを利用したグループでは業務において重要な専門知識を持つ他のメンバーを見つける可能性が31パーセントも向上し、誰が問題解決に適切な専門家と連絡を取れるのかを知る可能性が88パーセントもアップするという結果になりました。調査では社内SNSの使用によって他のメンバーとの会話がしやすくなるだけでなく、他のメンバーが会話した内容を知ることも出来るようになり、この結果につながったと分析されています。

以上の研究結果のように、社内SNSは社内の専門知識を持っている人物や専門家にアクセスできる人物の発見を容易にし、業務の円滑化に役立ちます。しかし、社内SNSを導入する際に管理職が知っておくべき落とし穴があるそうです。

by Scary Side of Earth

◆1:若い従業員に対する誤解
社内SNSを導入した際、多くの管理職は10代や20代の若い世代が最もSNSの扱いに慣れており、社内SNSをうまく使いこなせると考えています。ところが、この考えは誤りだとのこと。なぜなら、若者が使用するTwitterやFacebook、Instagramなどは全て個人的なつながりに使用するものであり、社内SNSのように仕事上のつながりに使用するSNSの扱いには慣れていないからです。若者にとってSNSは基本的にプライベートな用途で使うものであり、LinkedInなどをキャリア構築のために使ったり、社内SNSを業務連絡用に使ったりするのは別物。多くの管理者は社内SNSにおいて、業務以外の個人的なやり取りも行って団結感を強める効果を期待していますが、若者はSNSで職場の人間とつながることを嫌がります。

◆2:社内SNSで私的なやり取りを禁止する
社内SNSで個人的なやり取りを忌避する従業員がいる一方、完全に私的なやり取りを禁止してしまうことも、社内SNSの効果を十分に発揮できなくしてしまう危険性があります。いくつかの企業では社内SNSで私的なやり取りを行えないようにし、掲示板に仕事と関係のないスレッドを建てられないようにしている場合もあります。しかし、「SNSの本質とは生活をのぞき見ることだ」とHarvard Business Reviewは述べています。顔も性格も知らない社内の人間にコンタクトを取るのは、どうしても難しく感じてしまうものですが、社内SNSで相手の人となりを多少でも知っていると連絡しやすくなります。社内SNSで非公式なやり取りがある場合は、ない場合に比べて適切な社内専門家へのアクセスが3倍も増えるという研究結果があるとのこと。

ある通信会社のマーケティング部門で働くホセ氏は、社内SNSでサッカーについてのトピックを投稿していた同僚のアレックス氏に興味を持ち、本来であればあまり関わりのない電子商取引部門で働くアレックス氏と交流するようになったそうです。2人のやり取りを見た他のサッカー好きの従業員も話に参加するようになり、ホセ氏はそのつながりから電子商取引部門のノウハウをマーケティング部門に生かすなど、業務に役立てることもできたと述べています。社内SNSで活発にやり取りしている人間は「周囲からの信頼がある」と見なされるそうで、仕事上の専門知識を求めてアクセスされやすくなるそうです。

by freeimage4life

◆3:SNSツールの効果を過小評価する
社内SNSの効果を「SNSツールを使って有用な知識を学習する」ことだと勘違いしてしまう点も、管理職にありがちな誤解だとHarvard Business Reviewは述べています。「多くの場合、従業員が社内SNSにおいて果たす役割は他の人のやり取りを見ているだけで、直接何かを学んでいるわけではない」とのことで、社内SNSの効果を知ろうとしてアンケートを実施しても「社内SNSから直接何かを学んだことはない」と返答される場合がほとんどだそうです。

しかし、社内SNSが効果を発揮するのは「直接的知識」の学習ではなく、「メタ知識」の学習にあるといいます。「メタ知識」は知識そのものではなく、「誰がその知識を持っているのか」という知識であり、これは社内SNSのやり取りを傍観していると学習できるもの。問題に直面したとき、「そういえばAさんとBさんがこの問題について話していたな」と社内SNSで交わされていたやり取りを思い出した従業員は、AさんまたはBさんにアクセスします。そこで初めて問題解決に必要な知識を得るのであり、社内SNSから直接知識を吸い上げるのではないという点を、管理職はあらかじめ知っておき、従業員に周知しておくべきだとしています。

by Imagens Portal SESCSP

◆4:「専門知識」の意味を見誤る
Harvard Business Reviewは、社内SNSを使うことで「専門知識を誰が最も持っているか」という点が浮き彫りになるといいます。ある企業の部門再編により、これまで一緒に働いていなかったITエンジニアたちが集まったある部門では、初めは年功序列的に年上の従業員が専門知識を持っているとみなされていたとのこと。あるとき、部門内SNSでコミュニケーションの円滑化を図ろうとしてSNSツールを導入したところ、エンジニアたちの質問に最も的確に答える従業員が浮き彫りになりました。なんとそれは、これまで部門内の専門家として考えられてきた最年長のペギー氏という技術者ではなく、逆に最も若いエンジニアだったのです。

やがてペギー氏が退職しましたが、部門の管理職は初め、これが大きな出来事になるとは考えていませんでした。最も専門知識があるのは最年少のエンジニアであり、ペギー氏が退職したところでそれほど痛手にならないだろうと思っていたのです。しかし、ペギー氏の退職からわずか2カ月で、部門の組織内での評価が急落してしまいました。実は、ペギー氏は部門内の技術的問題の解決にはそれほど寄与していなかったものの、組織全体の文化に精通し社内のバランスを見極めることにも優れていたのです。ペギー氏は問題に対する優先順位を的確に判断でき、またそれぞれのエンジニアが持つ技術知識の範囲も把握していましたが、社内SNSのやり取りでは技術的知識の有無だけがピックアップされ、ペギー氏の強みが隠されてしまっていたとのこと。

管理職は社内SNSに反映されるものだけが全ての評価基準ではなく、記録に残らない面でも従業員の評価をするべきだとHarvard Business Reviewは述べています。

by Indiana Public Media

◆社内SNSを役立てるには
以上のとおり社内SNSを導入する際に陥りがちなトラップについて説明してきましたが、「社内SNSを有効活用するにはどうしたらいいか」という疑問に対してHarvard Business Reviewは、「社員に社内SNSを使う目的が『横断的な知識の共有である』ことを明示し、管理職が率先して社内SNSを使用するべきだ」としています。多くの従業員は導入当初こそ社内SNSを使ってみるものの、SNSツールの強みを理解できないまま漫然と使っていては、たとえ社内専門家へのアクセスが容易になったとしてもその事実を自覚できず、やがて社内SNSの使用をやめてしまいます。そうならないために、まずは社内SNSの強みを全従業員に理解してもらうことが大事だとのこと。

そして、多くの企業では社内SNSの導入を部門間に限定する傾向がありますが、狭い範囲でしかSNSが使えなければ、遠く離れた部門にいる専門家の存在を知ることが出来ません。そのため、できるだけ広い範囲で社内SNSが使えるようにし、業務に関すること以外のやり取りも活発に行うべきだとのこと。私的なやり取りは、マーケティング部門のホセ氏が電子商取引部門のアレックス氏との交流が生まれ、思いがけないコラボレーションにつながったように、関わりの薄い部門間の思わぬシナジーを生み出す可能性もあります。

by Scott Schiller

社内SNSでは他にも、他部門で自分と同様の業務が行われていたことに気づいて、業務に使う時間とコストを大幅に削減できたり、多国籍企業の連帯感を強めたりする効果も期待できます。社内の管理者は社内SNSを業務に役立てるために、自らが率先して社内SNSを有効活用し、従業員の見本となるように努力する必要があると、Harvard Business Reviewはまとめています。

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in メモ,   ソフトウェア, Posted by log1h_ik

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