AI検索エンジン「Perplexity」の中の人に「どんな広告を表示するの?」「日本ではどう展開するの?」などいろいろ聞いてきた
Perplexityは2022年にサービスを開始したAI検索エンジンで、「鶏肉の保存方法を教えて」「京都でラーメンを食べるなら何がオススメ?」といった自然な文章を入力するだけでインターネット上から情報を探して回答を提示してくれます。そんなPerplexityの最高ブランディング責任者(CBO)を務めるドミトリー・シェヴェレンコ氏にインタビューする機会を得られたので、「日本での展開」「広告表示形式」「社員数」など気になることを聞いてみました。
Perplexity
https://www.perplexity.ai/
GIGAZINE(以下、G):
Perplexityを利用する際は、Perplexityの独自モデルのほかに、GPT-4oなどの他社製モデルも選択できます。独自モデルの開発にはどれくらい力を入れているのですか?
ドミトリー・シェヴェレンコCBO(以下、シェヴェレンコCBO):
当社が最も力を注いでいる技術は「オーケストレーション(複数のAIにタスクを割り振る仕組み)」です。Perplexityではユーザーが入力した質問文をシステムが理解可能な形式に変換し、それを検索インデックスに通し、ウェブ上から得た情報をふるいにかけ、得られた回答を言語モデルを用いて読みやすい文章にして出力しています。この操作の精度を高めるために研究開発の大半をオーケストレーションの向上に費やしています。
AIの研究開発は急速に進んでおり、「最も高性能な言語モデル」は常に変化し続けています。このため、ユーザーに常に最適な言語モデルを使ってもらえるように、複数の言語モデルを選択可能にしました。
G:
ウェブ上にはAIによって生成されたコンテンツが大量に存在しています。Perplexityの検索サービスにおいて、AI生成コンテンツをフィルタリングする計画はありますか?
シェヴェレンコCBO:
Perplexityではランキングアルゴリズムを用いて質の高い回答を提供しています。このランキングアルゴリズムで「AI生成コンテンツか否か」も確認しています。しかし、AI生成コンテンツがすべて低品質というわけではないので、生成されたコンテンツの内容をチェックして信頼に足る情報か否かを判断した上でふるいにかけています。
G:
そのランキングアルゴリズムはPerplexityが独自開発したものですか?
シェヴェレンコCBO:
そうです。我々が独自に開発したアルゴリズムです。
G:
ランキングアルゴリズムは英語や日本語など言語ごとに最適化されているのですか?
シェヴェレンコCBO:
Yes。言語固有のファクターに対応できるようにしています。例えば、日本語で質問した場合は日本語の情報源を用いて回答するようにしています。
G:
日本語ユーザーは常に日本語の回答を求めているわけではなく、「英語圏の情報も集めたいな」といったように日本語以外の情報を求めることもあります。こういった自国語以外の情報を欲する状況にも対応できるのですか?
シェヴェレンコCBO:
そうですね。「日本語のみを返す」といったように固定化しているわけではなく、質問に対して関連性の高い結果を返す仕組みになっています。
G:
なるほど。Perplexityはソフトバンクとの戦略的提携を発表していますが、この戦略的提携はどのような流れで実現したのでしょうか?
シェヴェレンコCBO:
ソフトバンクと初めて会合したのは、2024年2月にバルセロナで開催されたテクノロジー見本市「MWC Barcelona 2024」です。その後、2024年4月には提携に関する契約を結び、6月から提携開始しました。かなり速いスピードで話が進みました。
G:
今後、日本ではどのような展開を計画していますか?
シェヴェレンコCBO:
日本ではまず、ソフトバンクのユーザーに対してPerplexity Proの無料キャンペーンを実施しており、これを足掛かりにモバイルユーザーを増やして認知度を高めたいと考えています。また、ソフトバンクとの提携とは別に、頭脳労働者対して「仕事でもプライベートでも使えるサービス」として認知させていきたいです。
G:
日本での展開に向けて、日本国内向けのチームは設置されていますか?
シェヴェレンコCBO:
はい。すでにユーザーの質問に対して対応する日本語サポートチームのメンバーを採用しました。また、エンタープライズ向けのサポートチームの採用も進める予定です。
G:
PerplexityのFAQページには日本語版も存在していますが、Perplexityの英語表記とカタカナ表記が混在していたり、「Perplexity」が「混乱」に直訳されていたりと、翻訳品質が悪くてかなり読みにくいです。ドキュメントの日本語品質向上に力を入れる計画はありますか?また、ドキュメントの多言語化は人力かAIかどちらで実行しているのですか?
シェヴェレンコCBO:
ご存じのように、我々はまだ新しい会社であり、Perplexityのサービス開始から18カ月しか経過していません。運営期間の短さに対して急速に成長しているわけです。もちろん、ローカライズにも力を入れていきたいとは考えています。ローカライズ作業は人間が実行しているはずです。急いで作業したために品質が悪くなっているのかもしれません。
G:
現時点の全ユーザーに対する日本人ユーザーの割合はどれくらいですか?
シェヴェレンコCBO:
日本人ユーザーは上から4番目に多いです。また、日本人ユーザーの数は直近の4カ月で6倍に増えています。
G:
PerplexityのシステムやAIモデルを動かすために、どのような規模のサーバーを用意しているのか教えてください。
シェヴェレンコCBO:
その質問は2億回くらい聞かれています(笑)。我々はAWSを使っており、リアルタイムでいつでも必要な容量を確保できる契約を結んでいます。
G:
Perplexityの社員の人数や役割を教えてください。
シェヴェレンコCBO:
社員は100人以下です。大部分はエンジニアやデザイナーです。一部のビジネス部門担当者がパートナーシップの拡大やマーケティングの仕事を担っています。我が社の当面の目標はPerplexityの性能向上です。
G:
Perplexityは株式公開を計画していますか?
シェヴェレンコCBO:
可能性はあります。
G:
スマートフォンやノートPCにAI特化チップが搭載されるようになってきました。それらのAI特化チップを用いた「オフラインで動くPerplexity」というものは検討していますか?
シェヴェレンコCBO:
「オフラインで動くPerplexity」は検討していません。Perplexityはリアルタイムでウェブ上の情報を収集して返答することを強みとしています。スマートフォンやノートPCの中の情報だけをソースにする仕組みは考えにくいです。
G:
これはテクノロジーニューサイトとして聞きたいことなのですが、CBOが使っているスマートフォンのOSはAndroidですか?iOSですか?
シェヴェレンコCBO:
iPhoneを使っています。デザインが美しい。
G:
「デザインが美しい」というところに関連して、PerplexityのUIをデザインするに当たって参考にしたサービスはありますか?ChatGPTのUIに似ていると思うのですが。
シェヴェレンコCBO:
私たちは検索と言語モデルを結び付けたサービスをリリースした最初の企業です。なので、むしろ他のサービスがPerplexityのUIを模倣したのだと思います。
世の中には美しい製品、完成度の高い製品がたくさんありますので、そういった製品からインスピレーションを得てUIを設計しています。
G:
Perplexityでは、「ユーザーがどのウェブページにアクセスしたのか」という情報は収集していますか?
シェヴェレンコCBO:
収集していません。
G:
Perplexityの主な収入源は何ですか?
シェヴェレンコCBO:
Perplexity Proのサブスクリプション料金です。
G:
今後、収入源を増やす計画はありますか?
シェヴェレンコCBO:
エンタープライズ向けのサブスクリプションプランを開始しており、すでに1500件の契約を締結しています。また、2024年第4四半期にアメリカで広告事業を始める予定です。さらに、広告事業は日本でも展開する予定です。
G:
広告主へアピールできるPerplexityの強みを教えてください。
シェヴェレンコCBO:
Perplexityのユーザーは「何かを買おう」と考えながらPerplexityを使うことが多いです。この点が広告主に対するアピールポイントになると考えています。
G:
広告について具体的に教えてください。Perplexityの回答結果に広告が含まれるということでしょうか?
シェヴェレンコCBO:
回答自体に広告を含めることはありません。Perplexityでは回答の下に「次はこんな質問がオススメ」というような画面を表示しているのですが、この関連質問リストの中に広告を含める予定です。広告には広告だと分かるラベルを付与します。
G:
次に、Perplexityの製品からは離れた質問をさせてください。AIでは正確でない情報を正確な情報であるかのように扱う「幻覚(ハルシネーション)」が問題になっていますが、このハルシネーションは人間の「創造性」に近いものなのではないかと考えています。シェヴェレンコCBOがハルシネーションについてどのように考えているのか教えてください。
シェヴェレンコCBO:
我々の設計思想では、AIは人間が知識をまとめるための源泉であると考えています。AIはすでにある情報を組み合わせて何かすることはできますが、何かを創造することはできないと考えています。
G:
では、最後の質問です。Perplexityの最終的な野望を教えてください。
シェヴェレンコCBO:
我々の野望は、世界中の人々の好奇心を無限に拡大することです。ユーザーがいろいろなことを検索して、探求を広げられるような世界を作りたいと考えています。
G:
なるほど。今日はありがとうございました。
シェヴェレンコCBO:
ありがとうございました。
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