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Googleが患者の咳を分析して結核を検出できる生体音響ヘルスケアAIモデル「HeAR」を開発


Googleの研究組織「Google Research」が、1億もの咳の音を用いてトレーニングすることで、結核などの病気の初期症状を検出することが可能なAIモデル「Health Acoustic Representations(HeAR)」を発表しました。

[2403.02522] HeAR -- Health Acoustic Representations
https://arxiv.org/abs/2403.02522


Can we hear disease before we see it? - YouTube


Researchers built an AI model to detect diseases based on coughs
https://blog.google/technology/health/ai-model-cough-disease-detection/

Google and Others Are Developing AI That Can Hear Signs of Sickness - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2024-08-29/google-and-others-are-developing-ai-that-can-hear-signs-of-sickness

インドのAIスタートアップ・Salcit Technologiesと提携して開発されたHeARは、ザンビアの病院やYouTube上の動画から入手した3億を超える鼻をすする音や咳をする音、くしゃみの音、呼吸音でのトレーニングが行われています。また、トレーニングデータの中には約1億の咳をする音が含まれていました。

無数のデータから得られた情報を基に、HeARは健康関連の音のパターンを識別します。GoogleによるとHeARは、さまざまなタスクで同様のモデルよりも上位の性能を発揮し、健康関連の音響データのパターンをキャプチャする場面において優れたパフォーマンスを備えていることが明らかになりました。Googleは「HeARはデータが不足していることが多いヘルスケア研究の世界において重要な要素です」と語っています。

さらにGoogleはHeARとSalcit Technologiesが開発した「Swaasa」を組み合わせることで、咳の音に基づく結核の早期発見に向けた研究と強化に取り組んでいることを報告しました。Swaasaは、AIを使用して患者の咳の音を分析し、肺の健康状態を評価するモデルで、10秒間の録音データを用いると約94%の精度で病気を診断することが可能です。


かつて不治の病と言われた結核は、医療技術が発達した現代では治療可能な病気となっています。しかし、全世界で毎年数百万人もの患者が、貧困などの問題から医療サービスにアクセスできず放置されています。WHOなどの組織は結核を撲滅するために活動していますが、撲滅には診断の改善が不可欠です。そこで白羽の矢が立つのがHeARなどのAIです。AIは結核の発見プロセスを改善するだけでなく、世界中の人々がよりアクセスしやすく手ごろな価格で治療を受診できるようにする上で重要な役割を果たすことができます。

Google Researchのプロダクトマネージャーであるスジャイ・カカルマス氏は「何らかの理由で結核の診断が遅れるのを見るたびに心が打ちひしがれます。しかし、HeARなどの音響バイオマーカーは、この悲しい物語を終わらせる可能性があります。結核の撲滅に向けた活動の中でHeARが果たすことができる役割に深く感謝しています」と語りました。また、結核の撲滅に向けた国連主催の組織であるStopTB Partnershipのデジタルヘルススペシャリストのチン・ジージェン氏は「HeARのようなソリューションにより、AIを活用した音響分析が可能になり、結核のスクリーニングと検出に新境地を開くことができます。これにより、結核が流行する貧困国などの人々が経済的な負担を強いられることなく、手軽にアクセスできるツールになる可能性があります」と述べています。


Google Researchは「HeARは音響健康研究における大きな前進です。私たちは結核や胸部、肺、その他の疾患領域における将来の診断ツールとモニタリングソリューションの開発を進め、研究を通じて世界中のコミュニティの健康状態の改善に貢献したいと考えています」と報告しました。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1r_ut

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