イスラエル政府がスパイウェア会社に対するWhatsAppの訴訟を妨害していた可能性があることが明らかに

イスラエルに拠点を置くソフトウェア企業のNSOグループは、Metaのメッセージングアプリ「WhatsApp」を利用してスパイウェアを配布していたとしてMetaに裁判を起こされています。新たな調査により、イスラエル政府がWhatsAppの訴訟を妨害していた可能性があることがわかりました。

Leak Reveals Israeli Government Interfered With WhatsApp's Lawsuit Against Spyware Company - FindLaw
https://www.findlaw.com/legalblogs/courtside/leak-reveals-israeli-government-interfered-with-whatsapps-lawsuit-against-spyware-company/

NSOグループはスパイウェアの「Pegasus」を開発したことで知られている企業です。Pegasusは「テロと戦うために使える」などとうたわれたスマートフォン監視用アプリですが、ジャーナリストや人権活動家、政治家の監視に使われているなどの報告もあり、アメリカなどでは規制の対象となっています。

2019年、WhatsAppのシステムを利用してPegasusを配布したとして、WhatsAppのチームがアメリカでNSOグループを訴えました。WhatsAppによると、NSOグループは2019年4月末から5月中旬までの2週間で20カ国・1400人以上のWhatsAppユーザーにサイバー攻撃を行い、Pegasusをインストールさせたとのこと。この訴訟の直前には、WhatsAppの通話機能に脆弱(ぜいじゃく)性があり、マルウェアをインストールされて情報を盗み取られる可能性があることが伝えられていました。WhatsAppは、NSOグループがこの脆弱性を突いて攻撃を仕掛けたと主張しています。

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WhatsAppチームは損害賠償を請求するとともに、NSOグループが同社のサービスにアクセスすることを阻止し、WhatsAppユーザーをターゲットにしたスパイウェアの開発と販売を停止する差し止め命令を裁判所に求めています。

一方でNSOグループは不正行為を否定し、同社の製品は、テロや犯罪に対抗するために政府の情報機関や法執行機関の審査に合格した機関のみに販売していると主張しています。

訴訟は5年以上続き、2024年にはPegasusのコードをWhatsAppに引き渡すよう裁判所が命じるところまでこぎつけています。新たにリークされた資料から、イスラエル政府が裁判を妨害していた可能性があることが明らかになりました。

リークされた資料によると、2020年7月、NSOグループ宛に文書の開示請求が送られた際、NSOグループのオフィスから多くのファイルとコンピューターが持ち去られた可能性があり、この件にイスラエル政府が関与していたことがわかったとのこと。

上記の出来事は、NSOグループがイスラエル政府関係者と面会し、文書開示請求への対応について話し合った後に起こったとされています。法律を取り扱う情報サイトのFindLawによると、NSOグループの弁護士の一人がイスラエルの弁護士に対して「イスラエル政府はNSOグループの救済に乗り出す用意があるのか？」と尋ね、イスラエルの弁護士が「危険性を強く意識しており、選択肢を検討中である」と答えたとのこと。その数日後、イスラエル政府当局者がNSOグループのオフィスを捜索し、コンピューターとファイルを押収することを認める秘密の令状が発行されたそうです。

FindLawは「今回のリークによって、裁判における国際的な法的操作と政府の介入が複雑に絡み合っていることが明らかになりました。リークにより、民間の監視技術への政府の関与の度合いや、プライバシーの潜在的な影響について深刻な問題が提起されることとなっています。この事件は、デジタル時代における『国家安全保障上の利益と個人のプライバシー権のバランス』について、さらなる議論を巻き起こすでしょう」と伝えました。