メモ

「死」を目前にすると幸せを感じる人がいるのはなぜか?


一般的に「死」は恐ろしいものと考えられがちですが、一部の人々は死を目前にしたタイミングで「幸せ」を感じることが報告されています。一体なぜ死を目前にした人が幸せを感じるのかについて、スウェーデンのルンド大学緩和ケア研究所で博士研究員を務め、臨床心理士としても活動するマティアス・トランバーグ氏が解説しました。

Why are some people happy when they are dying?
https://theconversation.com/why-are-some-people-happy-when-they-are-dying-234309


2024年7月15日に47歳で亡くなった援助活動家のサイモン・ボアズ氏は、2023年9月に末期の喉頭がんだと診断され、自らの死と向き合うこととなりました。BBCが2024年7月4日に公開したボアズ氏へのインタビューの中で、ボアズ氏は記者に「私の痛みはコントロールされており、とても幸せです。奇妙に聞こえるかもしれませんが、私は人生で経験したことがないほど幸せなのです」と打ち明けています。

インタビューの中でボアズ氏は、末期がんの宣告を受けたことで死が避けられない人生の一部であることを受け入れ、人生をより楽しんで優先順位を付けるのに役立ったと述べています。また、人生の終わり際に自らがあくまで陽気な態度を保つことが、残される妻や両親の助けになることを望むとも語りました。

死が近づいているのに幸せを感じるというのは不思議に思えるかもしれませんが、臨床心理士として死を間近に迎えた人々と接しているトランバーグ氏の経験から言っても、死を目前にする人々が幸せだと話すケースは珍しくないとのこと。2017年の研究では、死期が近づいている人々のブログは死を想像してブログを書く対照群と比較して、自分の経験を説明するためにポジティブな言葉を多用することも報告されています。トランバーグ氏は、「これは『死ぬ』という経験は私たちが想像するよりも喜びにあふれた、あるいは少なくとも不快ではないことを示唆しています」と述べています。


2020年と2021年に発表された2つの研究では、死期が近づいている人々に対して「何が自分にとっての幸せを構成しているのか」を尋ねました。

その結果、両研究に共通して回答者から得られたテーマとして、「社会的なつながりを持つこと」「自然の中に身を置くといった単純な喜びを楽しむこと」「前向きな考え方を持つこと」などが挙げられました。また、病気の進行に伴って「喜びを求めること」から「意味や充実感を見つけること」に焦点が移る傾向もみられたと報告されています。


実際にトランバーグ氏が臨床心理士として接した「ヨハン」という男性も、死期を迎えているにもかかわらず人生や人間関係、自身の興味などについて明確な会話をしており、脚が不自由になっても「モンブランをサイクリングしたい」といった前向きな目標を持っていたとのこと。

やがてヨハン氏は松葉づえすら握れない状態になりましたが、それでも友人と一緒にモンブランをサイクリングする動画をYouTubeで見たり、高価なマウンテンバイクを買って飾ったりして人生を楽しんでいました。さらに、「もし奇跡的に生き延びることができたら、週1、2回のシフトで家事介護サービスのボランティアをしたいです。彼らは一生懸命に働き、信じられないほどの貢献をしています。彼らがいなければ私はアパートから出られなかったでしょう」と語るなど、感謝の気持ちと希望を忘れなかったそうです。


トランバーグ氏は、「生命を脅かす病気を抱えた患者を診てきた経験から言えば、悲しみと同時に幸福を感じたり、一見相反するような感情を抱いたりすることがあり得ます。患者は1日のうちに感謝、自責の念、憧れ、怒り、罪悪感、安堵(あんど)感などを一度に感じることもあります。存在の限界に直面することで視野が広がり、これまで以上に人生に感謝できるようになるのです」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
死への恐怖を和らげる4つの方法 - GIGAZINE

死が近づいている人はどのような言葉を話すのか? - GIGAZINE

私たちは「死」から逃れられないのか? - GIGAZINE

脳には「死」を「人ごと」として処理する防衛機構が備わっている - GIGAZINE

自殺や自傷行為について考えるとストレスが軽減されることが判明 - GIGAZINE

オックスフォード大学の哲学者たちが考える「人生を幸せに送る方法」とは? - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.