サイエンス

アスリートは何歳でピークを迎えるのか?


アスリートがオリンピックなどの大舞台で活躍するには長年のトレーニングや才能が必要不可欠ですが、それらに加えて「大会の時期にアスリートとしてのピークを持ってこられるかどうか」も重要です。カナダ・ウォータールー大学の研究チームが新たな論文で、「陸上競技のアスリートがピークを迎える年齢」を統計学的に分析した結果を報告しています。

Peaks and primes: Do athletes get one shot at glory? | Significance | Oxford Academic
https://academic.oup.com/jrssig/article/21/3/6/7686552


At what age do Olympic athletes peak? | Waterloo News | University of Waterloo
https://uwaterloo.ca/news/media/what-age-do-olympic-athletes-peak

At what age do Olympic athletes perform their best? - Earth.com
https://www.earth.com/news/at-what-age-do-olympic-athletes-perform-their-best/

今回研究チームが調査した「陸上競技」には短距離走や長距離走、跳躍、投てきなどが含まれます。多くのアスリートは、キャリアパフォーマンスを平均値を中心として釣り鐘状になった正規分布(ベルカーブ)で表すことができ、特定の年齢で個人のピークに達した後は徐々にパフォーマンスが低下してきます。

論文の筆頭著者であり、ウォータールー大学のデータサイエンス修士課程に在籍するデヴィッド・アウォソガ氏は、「サッカーやテニスなどオリンピック以外で注目度の高い試合が開催される競技と違い、陸上競技にとってオリンピックはアスリート同士が競い合う最高の舞台です。オリンピックは4年に1度しか開催されないため、陸上選手はオリンピックへの出場権を獲得する確率を最大化するために、いつ、どのようにトレーニングするべきなのかを慎重に検討し、自分にとってのピークを持ってこなくてはなりません」と述べています。


研究チームは、1996年のアトランタオリンピックとそれ以降のオリンピックで陸上の個人種目に参加した全アスリートを対象に、年齢ごとのパフォーマンスデータを収集しました。そして、「性別」「国籍」「種目」「エリートレベルでトレーニングしていた期間」「その年にオリンピックが開催されたかどうか」などを分析しました。

その結果、陸上競技のアスリートがオリンピックに参加した平均年齢は、過去30年間で男女ともに一貫して「27歳弱」であることが判明しました。アウォソガ氏は、「私たちの研究では興味深いことに、アスリートのピーク年齢の中央値が27歳であることも示されました」と語っています。研究チームによると、27歳を過ぎた後にアスリートのピークがやってくる確率は44%であり、その数字は年々減少していったとのこと。

さらに、論文の共著者である学部生のマシュー・チョウ氏は、「しかし、アスリートのピークを左右するのは年齢だけではありませんでした。本当にエキサイティングなのは、『その年がオリンピックイヤーかどうか』が、アスリートのパフォーマンスを予測するのに役立つことがわかったという点です」と述べています。つまり、オリンピックへの出場を果たしたアスリートは、オリンピックの開催年にピークを持ってくることができていたというわけです。


今回の研究はあくまで理論的なものですが、研究チームはこの結果がアスリートとファンの両方に役立つ可能性があると考えています。アウォソガ氏は、「私たちの主な収穫は、あなたのピークがいつ来るのかを予測するのに役立つ変数のリストを確立したという点です。オリンピックの開催年や遺伝、国籍などは変えられませんが、これらの生物学的・外的要因に合わせてトレーニング方法を変更することはできます」と主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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