オリンピック後に少なくない数のアスリートが「心理的苦痛」を抱えてしまうという問題
スポーツの祭典「オリンピック」に出場するトップアスリートたちは、競技終了後に大きなメンタルの問題を抱えてしまうという事例が多数報告されています。アスリートたちの心理的苦痛とその改善策について、The Conversationが解説しています。
Beijing 2022: why some athletes struggle with their mental health after the Olympics
https://theconversation.com/beijing-2022-why-some-athletes-struggle-with-their-mental-health-after-the-olympics-177008
2021年に行われた調査によると、オリンピックまたはパラリンピックに出場したイギリス人アスリート137人のうち約24%が、出場後に高い心理的苦痛を経験したと分かったとのこと。こうした選手の中にはこの種の心理的苦痛について公の場で語る者も存在し、例えばフリースキーのニック・ゲッパー氏は2014年のソチオリンピック後にうつ病を経験したと話し、競泳のマイケル・フェルプス氏も過去に何度もうつ病を経験したと話しています。
アスリートたちが心理的苦痛を抱えてしまう原因はいくつもあり、例えばパフォーマンスをうまく発揮できなかったり、有名になったことに対する負の影響があったり、チームメイトからの支援が減ったりしたという理由が考えられます。こうした心理的苦痛は好成績を収めれば無縁だと考えられることもありますが、興味深いことに、メダルを獲得したり自己ベストを記録したりしたアスリートでさえ心理的苦痛を抱える可能性があるとのこと。アスリートたちはオリンピック期間中は世間からの注目を浴びているものの、メディア出演が減り世間の関心が薄れるにつれ、気分の落ち込みや孤立といった感情に襲われる可能性があります。
スポーツ専門医として多数のアスリートを診てきたイギリスのノッティンガム・トレント大学のリサ・オハロラン氏は、このような心理的苦痛を回避する1つの手段として「アイデンティティを広げること」を推奨しています。多くのアスリートたちは幼い頃からスポーツに打ち込み、スポーツそのものが自身のアイデンティティを構築していると考えてしまいがちとのことですが、アスリートであることが唯一のアイデンティティだと考えている場合、パフォーマンスの低下やケガ、引退によって簡単にアイデンティティが脅かされてしまいます。
15人の引退したオリンピック選手を対象に行われた調査では、引退後にセカンドキャリアをスタートしたアスリートほどポジティブな心情であったことが分かっているとのことで、The Conversationは「新しいキャリアを積んだり、家族や友人と過ごす時間を増やしたり、学校に行ったり、アイデンティティを広げて『単なるアスリート以上の存在』になることで、心理的苦痛が和らぐ可能性があります」と述べました。
また、「オリンピックでメダルを獲得する選手は全体の10%未満であり、残念な結果を受けてアスリートが失意に暮れてしまうのも無理はありません。ただ、私たちがアスリートをアスリート以上の存在として見てあげるということは、競技終了後のアスリートを助ける手だてとなるかもしれません」とも述べ、周囲の人間がアスリートをサポートできる可能性についても示しました。
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in Posted by log1p_kr
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