インタビュー

プーさんのホラー映画を作った監督に「ミッキーの映画は作るの?」と聞いてみた


児童小説「くまのプーさん」の著作権が切れたことを機に制作された『プー あくまのくまさん』は、わずか10日で撮影されたにもかかわらず500万ドル(約7億7000万円)を稼ぐヒット作となりました。そんな前作から予算もキル数も大幅に増えた『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』が2024年8月9日(金)に公開します。公開に先立ってリース・フレイク=ウォーターフィールド監督にインタビューする機会を得られたので、「ミッキーマウスの映画は作るの?」など気になっていることを聞いてきました。

映画『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』公式サイト
https://akumano-pooh2.com/

GIGAZINE(以下、G):
では、1つ目の質問からさせていただきます。今作『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』は2023年公開の『プー あくまのくまさん』から始まるシリーズの2作目ですが、すでにシリーズ3作目も構想していると聞いています。さらに、バンビやピノキオといった著作権切れキャラクターを映画化する「POONIVERSE(プーニバース)という計画も始動しているとのことですが、特に思い入れのあるキャラクターを教えてください。

リース・フレイク=ウォーターフィールド監督(以下、RFW):
そうですね。最も好きなキャラクターを1つ選ぶとすれば、やっぱりピノキオです。ただ、ここ1、2カ月間はずっとピノキオが登場する新作映画『Pinocchio Unstrung』の準備に取り組んでいるので、それで気持ちが傾いているという面もあると思います。それでもやっぱり、ピノキオはとてもユニークかつ興味深いキャラクターなので、たくさんの人にワクワクしてもらえると考えています。

2番目を選ぶとしたらプーですね。一番の成功をもたらしたキャラクターがプーなので。バンビやピーター・パンなどのキャラクターは上位には入らないです。


G:
なるほど。ちなみに、ミッキーマウスが登場する『蒸気船ウィリー』の著作権が2024年に切れてパブリックドメインとなったのですが、ミッキーマウスが登場する映画を作る予定はありますか?

RFW:
ミッキーマウスについてはですね、ちょっと今、手を出さないでいます。ミッキーマウスは以前も「パブリックドメインになる時期が来たけど、ディズニーが保護期間の延長を働きかけた」といった事例がありました。また、ミッキーマウスには権利上の色んな問題が残っているので、リスクが高いと考えています。それに、ミッキーマウスについては他の人たちがホラー映画化を計画していて、すでに5、6本の計画が明らかになっています。このちょっとザワザワした感じが落ち着いたら、ミッキーマウスも少し使ってみようかなとは思っています。あと、ポパイが登場する映画も作ってみたいです。

ただ、あまり多くの企画を立てすぎるとスタジオのキャパシティが足りず各作品のクオリティが下がってしまいます。だから、ミッキーマウスについて考えるのは色んな企画が落ち着いてからにしようと思います。

G:
では、監督が「著作権切れキャラクターをメインに扱う映画」をたくさん作るに至った経緯を教えてください。

RFW:
そうですね。理由は大きく分けて2つあります。1つ目の理由は「今までと違うものを作りたい」というものです。最近のホラー映画にはアイコニックなヴィラン(悪役)が少ないなと感じていたんです。キャラクターが小さく収まっているような感覚を受けていたわけです。そこで、スラッシャー映画のヴィランとして新しいアイコンになるものを作りたくて、今作のような「パブリックドメインになったキャラクターをデザインし直す」という手法にたどり着きました。

2つ目の理由は「観客に選ばれる映画を作りたい」というものです。最近のホラー映画には説教臭いものが多くて「誰も求めていないんじゃ?」と感じてしまう作品も目に付きます。そういった状況を打破するために、パブリックドメインとなったキャラクターを使って観客に選ばれるような映画を作ることにしたのです。


G:
今作は前作の公開から約1年という短いスパンで公開されました。今作の制作はいつ頃から始まったのでしょうか?

RFW:
前作は公開直後に大きな反響を得られたので、公開直後の2023年3月~6月に構想を練って撮影に取り掛かりました。今作は前作から変更したい部分が多くあったので、「前作は今作の世界の中で公開された映画だった」という設定にしました。この設定のおかげでキャラクターデザインやクリストファー・ロビン役の俳優を変更することができました。すでに次に制作する『Pinocchio Unstrung』のストーリー部分についても考えていて、数カ月以内に撮影を開始する予定です。

G:
前作の撮影期間はわずか10日間だったと聞いているのですが、今作の撮影期間はどれくらいでしたか?

RFW:
前作は撮影の大部分は7日で終わったんです。その後、再撮影に数日を要して、合計で10日間という感じでした。今作は全部で23日かかりました。前作と比べて予算が大幅に増えたので撮影期間を長くできたんです。だけど、増えた予算はどちらかといえば血のりのクオリティ向上やクリーチャーのデザイン向上の方に費やしました。

G:
デザインに関連して聞きたいことがあります。前作のプーは「黄色くてふくよかな顔」が特徴的でしたが、今作では見た目が大きく変わって「彩度が低く細めな顔」になっていました。このようなキャラクターデザインの変更に至った経緯を教えてください。

RFW:
前作では予算の都合でプーの見た目に600~700ポンド(約11万8000~13万8000円)しか使えなかったんです。だから、仕方なくゴムマスクをかぶっただけの見た目となりました。今作では予算が潤沢だったので特殊メイクを採用できました。そこで、「コメディ要素のあるホラー」といった感じの前作よりもホラー要素やシリアス要素を強調した見た目にしました。前作はいわゆるB級映画っぽい雰囲気でしたが、「森から出てきた時に鮮やかな黄色だったらあまり怖くないな」と感じていたので、今作ではダークな雰囲気を目指したんです。また、今作では「人間が森を焼き払い、動物が死に、プーたちの食べ物がなくなった」という状況なので、プーたちが飢えていることを表現するために細目の顔にしました。


G:
今作ではプーがチェーンソーや狩猟用の罠など多様な武器を使っていましたが、プーに使わせる武器の選定基準を教えてください。

RFW:
ジェイソンの斧やフレディの鉤爪など、アイコニックなヴィランは武器も特徴的でした。そこで、プーにも特徴的な武器を持たせたいと考えました。今作には「人間がプーたちを狩ろうとしている」という背景があり、プーたちを狩るための罠が森に仕掛けられています。そこで、「人間が仕掛けた武器をプーたちが回収して、武器として使っている」という設定を思いついたんです。クマを狩るための罠は非常に残酷なものですし、既存のホラー映画にも登場していない武器だなということで採用を決定しました。狩猟用の罠が既存のホラー映画に登場しないのは、撮影現場での取り扱いが大変かつ危険という事情もあると思いますね。

G:
なるほど、狩猟用の罠は撮影すら危険なんですね。今作は森が出てくるシーンがとても多いですが、森での撮影において大変だった点があれば教えてください。

RFW:
まずは、森のシーンをなぜ入れたのかという話からなんですけれども、今作を制作するにあたって「舞台をどこにするか」ということを話し合った際に「街を舞台にしたい」という意見と「森を舞台にしたい」という意見が半々くらいだったんです。そこで、「プーたちが森から街へ行く」という構成が今作ではちょうどいいと考えて街と森が半分くらいずつ登場するようにしました。

今作は再撮影の時期が12月になり、冬の森で撮影を敢行することになったんですが、気温が約0度だったんです。本当に寒くて、地面も凍りかけているような状況でした。今作のクライマックスでは登場人物が白い息を吐いているんですが、あれは映像処理で追加したものではなく、寒さで自然と息が白くなったんです。もちろん森の中に暖房なんてないですから、本当にみんな幽霊みたいな状態になって撮影に挑みました。

また、地面が泥だらけでぬかるんでいるのも撮影時の障害となりました。1万ポンド(約197万円)する機材が泥にまみれて壊れてしまったんです。


G:
なるほど、それは大変そうですね。映画全体の雰囲気について気になった点があるのですが、前作では「ハチミツの壺」とか「プーの家」といった、いわゆるアニメのプーさんっぽい描写がたくさんありましたが、今作ではアニメのプーさんっぽい描写が少なくなったように感じました。このような変化が起きた理由を教えてください。

RFW:
ハチミツは要所で登場していますが、確かに前作とくらべて登場機会が減っています。これは、今作を前作よりもシリアスな作品にするための変更です。今作に「プーがハチミツにおびき寄せられる」といったシーンを入れると、コメディ色が強まってしまいますし、滑稽さが増してしまいます。これを避けるために、ハチミツなどの登場回数を減らしました。だけど、ハチミツに関するアイデアは自分の中にたくさんあって、「ハチミツに毒を混ぜてプーに対して有効な武器とする」といったアイデアを3作目のために温めています。

G:
なるほど。3作目の公開も楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。

RFW:
ありがとうございました。

なお、『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』は2024年8月9日(金)に新宿ピカデリーほか全国で公開予定です。


『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』
8月9日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
監督・脚本:リース・フレイク=ウォーターフィールド(『プー あくまのくまさん』)
脚本:マット・レスリー(『サマー・オブ・84』)
出演:スコット・チェンバース、サイモン・キャロウ(『恋におちたシェイクスピア』)
2023年/アメリカ/英語/93分/シネスコ/5.1ch/原題: Winnie-the-Pooh: Blood and Honey 2/日本語字幕:中沢志乃 /提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
R15+
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in インタビュー,   映画, Posted by log1o_hf

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