EAがAIを使ってわずか3カ月で1万1000人分の大学アメフト選手をスキャンしてゲームに実装することに成功
アメリカのカレッジフットボールを題材としたエレクトロニック・アーツ(EA)の最新ゲーム「EA SPORTS College Football 25」では、AIを用いて1万1000人の大学生を3Dスキャンし、3Dモデルが作成されています。
How AI Brought 11,000 College Football Players to Digital Life in Three Months - WSJ
https://www.wsj.com/tech/ai/how-ai-brought-11-000-college-football-players-to-digital-life-in-three-months-84d7c00f
Virtual versions of 11,000 real college football players are taking the field for EA's 'College Football 25' | TechRadar
https://www.techradar.com/computing/artificial-intelligence/virtual-versions-of-11000-real-college-football-players-are-taking-the-field-for-eas-college-football-25
アメリカのカレッジフットボールの最高レベルであるNCAAディビジョンIフットボールボウルサブディビジョン(FBS)には、プロのアメリカンフットボールリーグであるNFLの約6倍の選手が所属しています。また、カレッジフットボールではプロになる選手や新しく入学してくる選手がいるため、春の終わりまで選手名簿は頻繁に変更されるそうです。
そんなカレッジフットボールを題材とした「EA SPORTS College Football 25」が、2024年7月19日に発売されました。同作には1万人を超える選手が登場するわけですが、選手それぞれの3Dモデルを作成するために、EAはAIを用いて選手写真をスキャンしたことがウォールストリートジャーナルの報道により明らかになっています。
College Football 25 | Official Reveal Trailer - YouTube
EAはFBSに所属する大学のアメリカンフットボール部に所属する選手のバストアップ写真を集め、AIを使ってわずか数秒でゲーム内で利用できる3Dモデルを作成しています。この技術はOpenAIのDALL-Eのような画像生成AIとは異なり、写真からデータを取得して完全な3Dアバターを作成するというものです。
AIが作成した3Dモデルの出来栄えが気に食わない場合、アーティストが手を加えてAIにフィードバックすることが可能となっています。このフィードバックを通してAIは3Dモデルの生成精度を向上させることができるようになっているわけです。
「EA SPORTS College Football 25」に登場する各選手の3Dモデルは、NFLを題材とした「Madden NFL 25」ほど3Dモデルが精細ではありませんが、EAが同シリーズでカレッジフットボールの選手に似せた3Dモデルを実装したのは今回が初めてです。
その理由は、全米大学体育協会(NCAA)が大学スポーツにおいて、選手が名前や写真、肖像権から収益を得ることを禁じていたためです。しかし、NCAAが2021年になって選手の肖像権を認める新たな方針を発表したことで、ゲーム内に選手の名前などが利用できるようになりました。
EAのスポーツゲーム部門であるEAスポーツのカム・ウェーバー社長は、「NCAAのルール変更は大胆なものだった」と言及。しかし、人間のアーティストが手作業で選手ひとりひとりの3Dモデルを作成していたのでは、選手名簿が頻繁に変わるFBSで各選手の3Dモデルを実装することはできません。ウェーバー社長は「これまでのワークフローでは選手の3Dモデルを実装することはできませんでした」と語り、AIを用いることで「EA SPORTS College Football 25」が実現したことを強調しています。
なお、EAによるとゲーム内で登場する134校分のカレッジフットボールスタジアムは、社内で開発した別の技術を使用して作成されているそうで、ノートルダム大学の「タッチダウンジーザスや、アーカンソー州立大学の滝など、各大学のスタジアムが持つ特徴的な構造まで再現することに成功しているそうです。
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