サイエンス

南極の「極渦」による温暖化現象が発生中、地球全体で異常気象を引き起こす可能性


冬季を迎えている南半球、特に南極上空の成層圏でまれな温暖化現象が発生しており、地球全体に異常な気象などの壊滅的な影響をもたらすおそれがあると、専門家が警鐘を鳴らしました。

A rare Stratospheric Warming event has begun over the South Pole, with unusually strong anomalies now developing
https://www.severe-weather.eu/global-weather/polar-vortex-stratospheric-warming-event-south-hemisphere-winter-fa/

Rare Sudden Stratospheric Warming event detected over Antarctica - The Watchers
https://watchers.news/2024/07/15/rare-sudden-stratospheric-warming-event-detected-over-antarctica/

気象現象についての情報を専門とするニュースブログ・Severe Weather Europeのライターで、気象コミュニティ内で「Recretos」と呼ばれているアンドレイ・フリス氏によると、南半球における成層圏の温暖化現象はまれで、過去数十年の間に数回発生したのが確認されているのみだとのこと。しかし、その影響は大きく、地球全体に波及するおそれがあります。

この現象を引き起こしているのは、極地の上空にできる大規模な低気圧である極渦(きょくうず)です。以下はフリス氏が示した極渦の例で、上空から地表付近までの大きな渦ができているのがわかります。


北半球で比較的よく見られる極渦は、非常に大きなサイクロンのように振る舞い、北極全体から中緯度までを覆うことがあります。

また、極渦は障害物が少なく回転も速い上空の成層圏と、地形などに影響を受けて不安定になることがある地表付近の対流圏とで異なる動きをすることもあります。


基本的に、強いジェット気流により安定した環流を形成した極渦(左)は北極圏の冷たい空気を閉じ込めるので、北米などの地域の気候は穏やかになります。一方、乱れた極渦(右)は寒気を閉じ込めることができなくなり、大気のバランスの乱れにつながります。


このメカニズムは南半球の極渦でも同様ですが、2024年の南半球では例年にない問題が発生しています。以下は南半球の上空の平均気温を表したグラフで、赤枠で囲われた部分を見ると、2024年7月の南極の大気は気温が急激に高くなっていることがわかります。


これにより、南極の極渦の不安定化と南極圏の温暖化が進行していますが、さらに深刻なことに、その影響は北半球にもおよぶ危険性があります。


南半球の温暖化が地球全体に影響するのは、ブリューワー・ドブソン循環という大気の循環により、地球の北と南の極地の成層圏がつながっているからです。


2019年に南極上空で発生した温暖化現象を調査した研究では、南極上空の成層圏突然昇温(SSW)が北米やヨーロッパを含む北半球の電離層の異常につながり、2019年から2020年の冬季の北半球に観測可能なレベルの影響をもたらしたことが示唆されているとのこと。

大気の動きと気象現象の関係は複雑なので、この異常がただちに目に見える影響になるかどうかはわかりませんが、フリス氏は「SSWのような大規模な気象現象は、南極上空で長期にわたる高気圧異常を引き起こす場合があります。数週間から数カ月もあれば、この影響が北半球にも現れるかもしれません」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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