七色に輝くチョコレートの作り方


装飾やコーティングではなく、チョコレート自体の表面が虹色に輝く「光学的チョコレート」の作り方を、科学系の企画を投稿するYouTubeチャンネルのTech Ingredientsが解説しています。

Optical Chocolate - Making Diffraction Gratings - YouTube


Diffractive Chocolate |
https://wp.optics.arizona.edu/oscoutreach/diffractive-chocolate/

太陽光などは無数の色の光が混ざることで白色に見えているため、その白色光を分解する形で光を反射した時、虹色に見えます。以下のように、回折格子に白い光を照射すると、反射光は虹色になります。


回折格子から虹色の光を作り出すメカニズムについては、Tech Ingredientsと同じように虹色の光を反射するチョコレートを作成しているThe Action Labのムービーをみるとよくわかります。

Using Quantum Mechanics to Make Holographic Rainbows on Chocolate - YouTube


赤いレーザーを、等間隔の穴が開いた黒い紙に当てた場合、光はスリットを通って分散されながらスクリーンに伝達します。


このスリットの距離や配置を調整すると、スクリーンの光の見え方も当然変わります。


ここで興味深いのは、スリットの距離を固定していても、光の色を変えることで、スクリーンに投写される光の幅が変わる点です。これは、光の色は波長に関係しており、スリットを通過する際の光の動きが波長によって異なるためです。


回折を引き起こす回折格子のまったく同じ位置に赤い光と青い光を当てた場合でも、波長の違いにより、スクリーンに映る青い光と赤い光はズレて表示されます。


白い光は赤、緑、青という光の三原色を重ねて作られているため、同じ回折格子を通して白い光を見た場合、白い光がそのまま見えるのではなく、赤い光、緑の光、青い光がズレて虹色のように見えるというわけ。


CDの裏面などが虹色に光って見えるのも、白い光が複雑な形をする表面に当たることで回折し、それぞれの色に分散するためです。つまり、回折して分散するような形状がチョコレートの表面に再現できれば、「虹色に輝くチョコレート」を作ることができます。というわけでTech Ingredientsが用意したのは、コンロやボイラー、耐熱のへら、温度計、シリコンの型、溶かす用のチョコレート、そして虹色に光を反射する「回折シート」です。回折シートはそのまま使うわけではなく、回折シートをチョコレートの型として使って「回折シートの表面の形状」をチョコレートに写し取らせるために使います。


Tech Ingredientsはまず、砂糖やカラメルなどを溶かした素材を回折シートの上に流すことで、虹色に反射するキャンディを作成しています。透明なキャンディは回折シートの表面を比較的簡単に写し取れるそうです。


一方で、チョコレートで同じことをする場合は、少し複雑なテクニックが必要になります。チョコレートの場合は温度管理がかなり重要。チョコレートに結晶成分を混ぜることでより簡単になりますが、Tech Ingredientsではできる限り純粋なチョコレートを光らせたいと考えており、そのためには適切なテンパリングを行う必要があります。


チョコレートの一部を完全に溶かした後、固形のチョコレートを追加し、徐々に温度を下げていきます。これにより、チョコレートの結晶構造を安定させながら液体にすることができます。ここでは、溶かしたチョコレートが90度を超えない程度に均一になるよう調整しています。


そして、溶かしたチョコレートに回折シートをくぐらせます。これを冷やした後、シートからチョコレートを取り外すことで、「回折シートと同じ表面構造のチョコレート」を作れるというわけです。


冷やし終わったものが以下。まず透明のキャンディーは全面で光を反射し、虹色に光っていることがよくわかります。


回折シートの上に薄く広げただけのキャンディーとは異なり、回折シートにまとわせて冷やしたチョコレートは、シートから慎重に剥がす必要があります。


シートから剥がした薄いチョコレートの表面には、光が虹色にしっかり反射していました。


光らせるための科学物質などは使用していないため、光るチョコレートは問題なく食べることができます。


このムービーが話題になったHacker Newsでは、「余計な食材や科学物質が必要ない(味が変わらない)なら、なぜショコラティエたちは虹色に光るチョコレートを活用しユニークな作品を作らないのでしょうか?」という疑問が述べられていました。それに対して、「回折現象は平らで曲面のない表面にしか適用できないため、応用が難しい」「チョコレートは簡単に溶けるため、回折効果も店から持ち帰るような間ですぐ消えてしまうはず」などの問題点が指摘されています。

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in サイエンス,   動画,   , Posted by log1e_dh

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