サイエンス

勃起するとペニスがメスの性器の7倍にも大きくなるコウモリは哺乳類初の「ペニスを挿入しない交尾」をする


ユーラシア大陸の温帯および亜熱帯の乾燥林に生息しているセロチンコウモリ(Eptesicus serotinus)は、オスが体長の約22%に及ぶかなり大きいペニスを持っていることで知られています。セロチンコウモリが大きすぎるペニスでどのように交尾しているのかを進化生物学者が観察したところ、セロチンコウモリは哺乳類で初めて「ペニスを挿入しない交尾」をすることが発見されました。

Mating without intromission in a bat: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(23)01304-0

This Bat's Member Is So Exceptionally Large It's Used as an Extra Arm : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/this-bats-member-is-so-exceptionally-large-its-used-as-an-extra-arm


Bats with weirdly giant penis have sex for up to 12 hours in a way never seen in mammals before | Live Science
https://www.livescience.com/animals/bats/bats-with-weirdly-giant-penis-have-sex-for-up-to-12-hours-in-a-way-never-seen-in-mammals-before

スイスのローザンヌ大学の進化生物学者であるニコラス・ファーゼル氏らは、2023年11月に生物学ジャーナルのCurrent Biologyに、セロチンコウモリの交尾に関する論文を発表しました。論文によると、セロチンコウモリは哺乳類で初となる「非挿入生殖性交」の例であることが観察によって確認されたとのこと。ファーゼル氏は「セロチンコウモリのペニスは、メスの性器より長さ、幅ともに約7倍ほどもあり、不釣り合いに大きいことが知られています。そのため、『どういう仕組みで交尾しているのか』と長らく疑問に思っていました」と述べています。

研究では、オランダにある教会の屋根裏とウクライナにあるコウモリの保護、研究、啓蒙活動を行うコウモリリハビリセンターに、コウモリがとどまることができる格子状のエリアを設置しました。そのエリアに設置したカメラでセロチンコウモリの交尾を合計97回記録した結果、いずれの交尾でもペニスの挿入は観察されませんでした。

以下のムービーは、科学系メディアのScienceAlertが公開したセロチンコウモリの交尾を撮影したもの。ムービーでは、勃起したペニスを、手前にいるメスの体にこすりつけ続けている様子がわかります。ムービーは一部を切り取ったものですが、この接触交尾は平均53分続く時間がかかるもので、最も長いものでは13時間かかっていました。

Mating behavior of the serotine bat - YouTube


観察された映像ではすべて、オスがメスの首元をつかみ、勃起した巨大なペニスをメスの外陰部(性器の外側)に押し付けて動かす様子が映っていたそうです。研究者によると、犬などでは勃起前のペニスを挿入して交尾することがわかっていますが、セロチンコウモリのペニスはメスの外陰部に接触する前に拡大しており、「勃起すると大きすぎて交尾ができないため、勃起前に挿入している」という可能性も排除されているとのこと。

研究チームはまた、生きたセロチンコウモリのペニスを詳細に観察しています。結果として、ペニスの先端が「ハート型」に膨らんでいることが記録されました。論文では「ペニスの末端は数本の短い毛で覆われており、2つの大きな勃起組織で構成されています。この毛はメスの外陰部を見つけるのに役立つセンサーとして機能しているのではないかと我々は考えています」と指摘しています。


セロチンコウモリのペニスが巨大な理由としては、コウモリの持つ「尾膜」と呼ばれる機能にあると研究者らは推測しています。尾膜とは、空を飛ぶときに下半身を覆って守ったり、エサとなる昆虫を捕まえたりする際に用いられます。ファーゼル氏は「尾膜はメスがオスから身を守るためにも使っており、この尾膜を乗り越えて外陰部に到達するために、オスは大きなペニスを発達させたのです」と語りました。

セロチンコウモリの挿入を伴わない「接触交配」は、鳥類などでは過去に観察された例がありますが、哺乳類としては初めて観察されたものです。この観察では、非挿入時にオスのペニスから精液が放出されている様子は確認できるものの、正確には詳細を観察できていないため、より観察しやすい専用の施設を開発することなどに研究者らは取り組んでいると話しています。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1e_dh

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