メモ

LINEの情報漏えい問題でソフトバンクとNAVERの間に亀裂が生じて日韓関係に悪影響が及ぶのではないかと懸念されている


LINEは日本を中心に使われているメッセージングアプリであり、運営企業のLINEヤフーの親会社であるAホールディングスは、日本のソフトバンクと韓国のNAVERが半分ずつ株式を保有しています。歴史的経緯から外交的緊張が走りやすい日韓関係において、LINEを取り巻く状況は日韓の協力体制の象徴的意味合いを持っていますが、近年は再びLINEの所有権を巡る緊張が走っているとアメリカの日刊紙であるニューヨーク・タイムズが報じました。

Japan and South Korea Are Fighting Over an App at a Tense Time - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/06/24/business/naver-softbank-line-south-korea-japan.html


韓国のインターネット企業・NAVERの子会社が開発したLINEは、2011年3月の東日本大震災で電話回線が混乱したり不通になったりして、人々の通信が困難になったことがきっかけで発案されました。2011年6月にアプリの公式サービスが提供され、記事作成時点では日本のメッセージングアプリで首位の座を走っており、台湾やタイ、インドネシアでもユーザー数を増やしています。

2019年にはソフトバンク創業者の孫正義氏とNAVERの創業者である李海珍氏が、両社の子会社であるヤフーとLINEの経営統合に合意し、Zホールディングス(現LINEヤフー)がヤフーとLINEを運営することが決定。2023年にはグループ再編が行われ、ZホールディングスはLINEとヤフーを吸収した上でLINEヤフーに商号を変更して現在に至ります。LINEヤフーの親会社であるAホールディングスはソフトバンクとNAVERによる合弁契約が結ばれており、両社が50%ずつ出資する合弁会社となっています。

2018年には第二次世界大戦中に韓国人が強制労働させられたとする徴用工問題(旧朝鮮半島出身労働者問題)で、新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償の支払いが命じられ、翌2019年には日本政府が韓国を貿易管理上の優遇措置を受けられるホワイト国から除外するなど、2019年当時は日韓関係が歴史的に見ても冷え込んでいた時期でした。そのため、ソフトバンクとNAVERの協力体制は、緊張した外交関係において協調の象徴的意味合いを持っていました。

その後、2023年3月には日本との関係改善を進める韓国の尹錫悦政権が、政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う徴用工問題の「解決策」を発表。同月には会議に合わせたものを除き12年ぶりとなった日韓首脳会談が行われ、韓国向け半導体素材の輸出規制が解除されるなど、日韓関係は大きく改善しています。


ところが、LINEの運営を巡るソフトバンクとNAVERの間には亀裂が生じているとニューヨーク・タイムズは指摘しています。LINEヤフーは2023年11月、何者かがNAVERの業務委託先企業サーバーを攻撃し、LINEヤフーのシステムも不正アクセスを受けてLINEの利用者情報など約44万件が流出した可能性があると発表。その後、流出した情報は約52万件に修正されました。

日本政府の個人情報保護委員会はこの問題を受けて、LINEヤフーに対し「情報を守るための措置が不十分だった」として改善を求める勧告を行いました。LINEヤフーは同月に、総務省からも再発防止を求める行政指導を受けています。

4月にも2度目の行政指導を行った総務省は、LINEヤフーに対して情報漏えいの原因となったNAVERとの資本関係を見直すように求め、NAVERや一部のアナリストが反発する事態に発展。尹大統領の政策主席補佐官は5月の会見で、LINEヤフーが十分なセキュリティ強化計画を打ち出した場合、日本政府はNAVERの株式売却を強硬するような措置をとるべきではないと主張し、「韓国企業が海外で差別的措置や不当な扱いを受けないよう引き続き取り組んでいきます」と述べました。

その後、松本総務大臣は5月10日の記者会見で、行政指導はグループ全体でのセキュリティの見直しを求めたものであり、NAVERによる経営への関与を奪うことが目的ではないと強調しました。また、5月の日韓首脳会談で岸田首相と尹大統領は、LINEの問題は両国間の関係とは別のものであり、「懸案にならないよう管理する必要がある」という認識を確かめました。

国際安全保障について各国政府に助言を行うCCSIアジア太平洋のCEOを務める竹内舞子氏は、「過去に何度も見てきたように日韓関係は移り変わりが激しく、戦時中であろうと平時であろうと小さな緊張がすぐにエスカレートし、防衛や外交に広い影響を及ぼす可能性があります。日韓の良好な関係を維持することがこれまで以上に重要だという強い見方が、アメリカやその他の国々から示されています」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
日本は半導体サプライチェーンをどのように支えているのか? - GIGAZINE

台湾の半導体メーカー「TSMC」の熊本工場がついに完成、さらに第2工場の建設に約7300億円の補助金の交付を日本政府が決定 - GIGAZINE

日本のチップメーカー「Rapidus」が約5兆円を投入する工場でチップの製造とパッケージ化を計画しておりTSMC・Intel・Samsungとは一線を画している - GIGAZINE

Armの中国合弁企業がArmからの独立を宣言、一部ライセンスや中国市場の顧客をそのまま横取り - GIGAZINE

北朝鮮のハッカーが韓国の防衛請負業者10社に何か月もハッキングしていたことが判明 - GIGAZINE

セキュリティ企業・Kasperskyの幹部12人に財産凍結措置、ロシア政府と関係がある疑い - GIGAZINE

HuaweiやZTEなど中国メーカー5社の通信機器の販売を「国家安全保障へのリスク」を理由にアメリカ連邦通信委員会が禁止、イギリス政府も制限へ - GIGAZINE

ユニコーン企業が10社程度と少ない日本のスタートアップ事情に変化の兆しか - GIGAZINE

FBIの「LINEから入手可能な個人情報リスト」がリークされる、一体どんな情報にアクセス可能なのか? - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.