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台湾の半導体メーカー「TSMC」の熊本工場がついに完成、さらに第2工場の建設に約7300億円の補助金の交付を日本政府が決定

by 李 季霖

台湾に拠点を置く世界最大級の半導体ファウンドリ「TSMC」が日本の熊本県に建設していた工場が、2024年2月24日についに完成し、開所式が行われました。さらに日本政府は、TSMCが進める熊本への第2工場建設に対して最大48億6000万ドル(約7320億円)規模の補助金を交付することを明らかにしています。

Japan takes Taiwan's helping hand on long road to chip revival | Reuters
https://www.reuters.com/technology/japan-takes-taiwans-helping-hand-long-road-chip-revival-2024-02-22/


Japan to subsidize US$5 billion for TSMC's Fab2 in Kumamoto
https://www.digitimes.com/news/a20240223PD212/tsmc-japan-subsidies-jasm.html

Japan to Give Extra $4.86 Billion to Expand TSMC Kumamoto Plant - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-02-24/japan-to-give-extra-4-86-billion-to-expand-tsmc-kumamoto-plant

Tokyo pledges a further $4.9 bln to help TSMC expand Japan production | Reuters
https://www.reuters.com/technology/tokyo-pledges-further-49-bln-help-tsmc-expand-japan-production-2024-02-24/

TSMCによる熊本県菊陽町への半導体工場建設計画は2021年11月に発表されました。その際、TSMCは日本政府から約4000億円の補助を受けています。

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発表から約2年後の2024年2月24日、TSMCの熊本工場は完成を迎え、開所式が行われました。開所式においてTSMCの創業者であるモリス・チャン氏は「日本での工場建設が実現し、感慨深く思います。今回の工場建設は日本だけでなく世界における半導体供給の強化につながるとともに、半導体製造の転換点になることが期待されます」と述べています。

齋藤健経済産業大臣は「日本はかつて、半導体業界において世界一のシェアを誇っていましたが、官民双方が時代に取り残されたことで競争力を落としてきました。日本初のTSMCの工場が完成し、開所式を迎えたことは、日本の半導体業界におけるミッシングピースが埋まる極めて意義深いものです」と語りました。

さらにTSMCは2024年2月、2027年末までの操業開始を目指し、熊本県内に第2工場の建設を行うことを発表しています。

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第2工場の建設に伴い、日本政府はTSMCに対し最大48億6000万ドル(約7320億円)の追加補助金を支給することを発表しています。齋藤経済産業大臣は「TSMCは、デジタルトランスフォーメーションを実現する上で最も重要なパートナーです」と述べています。

2024年末までに半導体量産に向けた本格的な操業開始が予定されている、TSMCの熊本第1工場ならびに建設が決定した第2工場では、自動車や産業用機器など幅広い用途向けの半導体生産が行われます。TSMCはソニーグループやトヨタ自動車など、日本の企業との合弁事業を通じて、熊本工場で生産した半導体をカメラ用のCMOSイメージセンサーや自動車用のロジックチップに搭載して出荷する予定です。

また、第2工場ではこれまで日本国内で製造が困難だった6~7nmノードでの半導体生産が行われる予定で、齋藤経済産業大臣は記者団に対し「第2工場で生産される半導体は第1工場の半導体よりも高度になり、AIや自動運転に活用できるほか、日本での半導体の安定供給を確保することが可能です」「第2工場は、需要が大きく拡大する先端分野の半導体と、自動車をはじめとする日本の基幹産業にとって必要不可欠な半導体を生産するもので、日本の産業全体の将来の競争力を左右するといっても過言ではありません」と語りました。


九州経済調査協会によると、TSMCの工場が建設されたこの地域の経済効果は2024年からの10年間で1340億ドル(約20兆1000億円)に達する可能性があるとのこと。一方で人手不足が経済効果拡大におけるボトルネックになるそうです。九州経済調査協会の事業開発部研究員を務める河村奏瑛氏は「TSMCやソニーのような大企業は必要な人材確保に苦労することはありませんが、地元の半導体関連企業ではその状況が変わります。日本の企業でどれだけ人材を確保できるかで九州における経済発展が大きく変化するでしょう」と推測しています。

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in ハードウェア, Posted by log1r_ut

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