300社以上を騙して北朝鮮関連のIT労働者を雇用させ核開発資金を稼いだ疑いでアメリカ司法省が5人を起訴
アメリカ司法省が2024年5月16日に、北朝鮮の核兵器開発計画の収益獲得に関与したとしてアメリカ人女性1人など合計5人を起訴しました。
Rewards for Justice – Reward Offer for Information on North Korean IT Workers - United States Department of State
https://www.state.gov/rewards-for-justice-reward-offer-for-information-on-north-korean-it-workers/
Chapman Indictment 05082024 GJ VERSION FINAL.REDACTED - chapman_indictment.pdf
(PDFファイル)https://www.justice.gov/usao-dc/media/1352191/dl
American IT Scammer Helped North Korea Fund Nuclear Weapons Program, U.S. Says - WSJ
https://www.wsj.com/politics/national-security/american-it-scammer-helped-north-korea-fund-nuclear-weapons-program-u-s-says-65430aa7
Five charged for cyber schemes to benefit North Korea's weapons program
https://www.bleepingcomputer.com/news/security/five-charged-for-cyber-schemes-to-benefit-north-koreas-weapons-program/
クリスティーナ・マリー・チャップマン被告とオレクサンドル・ディデンコ被告らは、2020年10月から2023年10月にかけて、北朝鮮政府が「核兵器開発計画の収益を得るために、違法にアメリカの雇用市場に潜入する」キャンペーンに関与したとされています。チャップマン被告は2024年5月15日にアリゾナ州で、ディデンコ被告は2024年5月7日にポーランドで逮捕され、記事作成時点でアメリカ司法省はディデンコ被告のアメリカへの身柄引き渡しを求めています。
起訴状によるとチャップマン被告らは、北朝鮮のIT労働者用のコンピューターを自宅に保管し、あたかもその人物がアメリカ国内で働いているかのように見せかけていました。しかし実際にはこれらのIT労働者は北朝鮮国内から遠隔でチャップマン被告らが所有するPCにアクセスし、日々の業務を遂行していました。
北朝鮮のIT労働者は、リモートソフトウェアおよびアプリケーション開発者として、航空宇宙・防衛企業や、大手テレビネットワーク、テクノロジー企業など複数のアメリカ企業に採用され、労働の対価として合計680万ドル(約10億円)もの給料を得ていました。
また、ディデンコ被告は北朝鮮のIT労働者がアメリカでの職を探す際に偽のIDを使えるようにするサービス「UpWorkSell」を提供していました。なお、記事作成時点でUpWorkSellはアメリカ司法省に差し押さえられており、UpWorkSellのページには「This Website Has Been Sized(このウェブサイトは差し押さえられました)」との記述があります。
アメリカ司法省は「ディデンコ被告は約871件ものプロキシIDを管理し、3つのフリーランス開発者雇用プラットフォームにプロキシアカウントを提供していました。また、3つの異なるマネーサービス送信業者にもプロキシアカウントを提供したとされています」「ディデンコ被告は今回起訴されたジホ・ハン被告やハオラン・シュウ被告、チュンジ・ジン被告と共謀して、アメリカを拠点とする少なくとも3つの『ラップトップ・ファーム』を運営し、約79台のコンピューターのホストを行いました。ディデンコ被告は2018年7月以降、92万ドル(約1億4300万円)を送金または受領しています」と主張しています。
アメリカ司法省によると、チャップマン被告らの行為により、60人以上のアメリカ人のIDが侵害され、300社以上のアメリカ企業が影響を受けました。また、35人のアメリカ国民に虚偽の納税義務が課せられたとのこと。
今回の一件が有罪となれば、共謀罪やマネーロンダリング、電信詐欺、なりすまし詐欺、銀行詐欺の容疑で起訴されたチャップマン被告には最長97.5年、ディデンコ被告には67.5年、マネーロンダリング容疑で起訴されたハン被告らには最長20年の懲役刑が科せられます。司法省刑事局長のニコール・アルジェンティエリ氏は「チャップマン被告らはアメリカ国民の身元を盗み、海外に拠点を置く個人がアメリカ国内のリモートIT開発者を装えるようにしました」と述べています。
また、2024年5月16日にアメリカ国務省はチャップマン被告の共謀者や北朝鮮のIT労働者、チャップマン被告らへの指示役に関連する情報に対して、最大500万ドル(約7億8000万円)の報奨金を提供することを発表しました。
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