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ジャック・ドーシーに「なぜBlueskyを去ったのか」と直接聞くインタビューが登場


SNS「Bluesky」誕生に大きな役割を果たしたTwitter(現X)元CEOのジャック・ドーシー氏が、2024年5月にBluesky PBCの取締役を退任しました。ドーシー氏はBlueskyのアカウントも削除しており、退任については認めたものの詳細は語っておらず、どういった事情があったのかは謎でしたが、ITニュースレター・Pirates Wiresのマイク・ソラナ氏が退任後のドーシー氏を直撃し、その理由を聞き出しています。

An Interview With Jack Dorsey
https://www.piratewires.com/p/interview-with-jack-dorsey-mike-solana


ソラナ氏ははじめに直球で「なぜBlueskyを離れたのですか?」と質問。ドーシー氏はまずはそうなった背景から答えていますが、最終的に出てきた言葉からは「Blueskyが思っていたのとは違うものになったから」であることがわかります。

ドーシー氏はTwitterの創業者であると同時に、決済サービス「Square」(現Block)の創業者でもあり、Squareでは、ビットコインプロトコルのオープンソース開発者らに資金提供を行っていました。これは、巡り巡ってSquareに直接的な利益をもたらすことにつながっていました。

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by John Verive

ドーシー氏はTwitterでも同じような仕組みを作りたかったようですが、アカウント関係の問題や、ブランド広告モデルに基づく上場企業になっていたTwitterで同様の取り組みを行うのは難しかったとのこと。

そこでドーシー氏は「Twitterのプロトコルレイヤーを分離し、Twitter社がプロトコルレイヤーをコントロールできない状態にする必要がある」と考えて、Twitterとは独立したチームによって、オープン標準のプロトコルを構築し、Twitterでも使用するようにすることを思いつきました。これが2019年の「分散型ソーシャルメディアの『オープン標準』開発推進」宣言です。

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by PhotoMIX-Company

2021年8月には、現在BlueskyでCEOを務めているジェイ・グレイバー氏がプロジェクトリーダーに就任しました。そこまでの約2年間は、いろいろなプロトコル開発者との面談期間だったそうです。

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面談した開発者の中には分散型SNSプロトコル「Nostr」を考案したfiatjaf氏も含まれていたそうですが、何らかの理由で採用は見送られています。なお、ドーシー氏はfiatjaf氏との面談には参加していないので面談内容は知らず、「まったく注意を払っていなかった」と振り返っています。

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グレイバー氏をリーダーに選んだドーシー氏は、プロジェクトに1400万ドル(約21億8000万円)を投資し、プロトコル開発を推進しました。ドーシー氏はこの時点で、すでにTwitterのCEOを辞めてパラグ・アグラワル氏に引き継ぐことを決めていたそうです。

なお、プロジェクトは約半年後の2021年末に「Bluesky PBLLC」としてTwitterから円満に独立しています。グレイバー氏はニュースサイト・The Vergeによるインタビューの中で、独立した理由について「プロトコル開発プロジェクトはドーシー氏がTwitterのCEOとして推進しているものであり、CEOが代わるとプロジェクトが立ち消えになる恐れがあったため」と説明しています。

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ドーシー氏の言葉に寄れば、自らの理想とBlueskyの方針の食い違いが出てきたのは、BlueskyがTwitterから独立した時期からのようです。Blueskyのテクニカルアドバイザーを務めるWhy氏に聞いた話では、「Blueskyの独立にあたってTwitterにはBlueskyの取締役を1人選ぶ権利が与えられていて、選ばれたのがドーシー氏だった」ようなのですが、ドーシー氏いわく「『顧問』席は用意されていたが、情報提供はなかった」とのこと。

さらに、グレイバー氏らがベンチャーキャピタルなどから資金調達を行い、取締役会の設置などを進めていくのを見てドーシー氏は「自分が満足する方向ではないな、そういう意図ではなかったな」と思ったそうです。


オープンプロトコルや非中央集権化を求めていたドーシー氏にとって大事なのは「プロトコル」であり、Blueskyも当初は分散型SNSプロトコル「AT Protocol(旧称ADX)」を主力製品に位置づけていました。しかし、Blueskyは途中で「プロトコルでどのようなサービスを作れるか」を示すためにSNS開発へと方針を転換し、2022年10月のSNS「Bluesky」発表に至りました。

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さらに、Twitterが2022年11月にイーロン・マスク氏により買収されたのち、問題点が噴出したことで、Blueskyは「Twitterからの移住先」の1つになりました。

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ユーザーが増える中で、ドーシー氏が素晴らしいアイデアだと思っていた「会話がどのように見えるかを選ぶことができるアルゴリズムストア」よりも、ユーザーはモデレーションツールを求め、他のユーザーを追い出すようになり、Blueskyはドーシー氏にとって「私が望んでいたことではなく、作る手助けをするつもりだったものでもない」ものになっていってしまったとのこと。

ドーシー氏はBlueskyを「文字通り、Twitterが犯したすべての過ちを繰り返していました。分散型プロトコルなどではなく、Twitterのわだちをたどっているだけの『別のアプリ』です」と表現しています。

なお、ドーシー氏はその後「Nostr」に共感し資金提供を行っているとのこと。Blueskyの取締役退任後はNostrに集中していることも明かし、「Nostrプロジェクトが取締役会を必要としているとは思えないし、求めているとも思えません」と語っています。

ドーシー氏へのインタビュー記事が公開された後、BlueskyのグレイバーCEOは「(Blueskyのプロトコルは)オープンソースで開発されています。私たちのコードはすべて公開されており、システムのあらゆる部分が誰でも実行可能な状態になっています。BlueskyはUIやUXがTwitterに似ているかもしれませんが、それはTwitterが大幅に変更を加える必要のないシステムだったからです」と述べ、Blueskyのプロトコル(AT Protocol)がオープンなものであることをアピールしています。


また、Why氏はBlueskyがプロトコルだけでなくSNSアプリの開発にも注力している理由について「実際の製品が存在しないプロトコルは存続できずに消滅してしまう」と述べ、Blueskyアプリの開発はAT Protocolを存続させるために必要な試みであると主張しています。


なお、AT ProtocolやBlueskyアプリのソースコードは以下のリンク先で確認できます。

bluesky-social · GitHub
https://github.com/bluesky-social

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in メモ,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by logc_nt

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