なぜ新たなチームへ移動した際には「WTF Notebook」というアプローチが役立つのか
新たなチームへ移動した際に役立つアプローチ「WTF Notebook」について、ソフトウェアエンジニアのナット・ベネット氏が解説しています。
Why you need a "WTF Notebook"
https://www.simplermachines.com/why-you-need-a-wtf-notebook/
ベネット氏は新しいチームに参加するたびにノートの新たな1ページを開き、一番上に「WTF - チーム名」とタイトルを付け、「なんてことだ(What The Fuck)」と思ったり変更したい事を思いついたりしたときにメモを書くとのこと。
チームに参加してから2週間はそうしたメモの内容をチームに伝えたり解決に動いたりせず、ただ見て、聞いて、奇妙に思えることを書き留めるだけにします。今回ベネット氏はこの単純なやり方でどのように物事を効果的に成し遂げる人としての評判を築き、常に不平不満を言っている人にならないように役立つのかを解説しました。
新しいチームには「なんてことだ」と思わせる出来事がいつも存在しています。チームが深刻な問題について1時間話し合い、その後何もアクションアイテムを作成せずに解散したり、ローカルでテストを実行していなかったり、ビルドボードの大きな部分が常に赤く表示されていたり、重要な行為を実行できるのが1人だけだったりします。
こうした出来事をひたすらメモに書いて大きなリストができたら次は項目に線を引いて削除していきます。項目を削除する理由は下記の4つとのこと。
・一見奇妙に見えても実はちゃんとした理由がある
・チームはすでに修正に取り組み中
・チームはそんなこと気にしてない
・非常に簡単に修正可能
例えばローカルでテストを実行しないという問題の場合、それはチームが既に気付いている問題の可能性があります。全ての作業を仮想マシン上で実行してそれらのマシンを簡単なチャットコマンドでプロビジョニングしていたり、非常に優れたCI/CDパイプラインが構築されていてローカルでテストを行わなくても問題なく1日に複数回デプロイを行えたりしているかもしれません。
また、場合によってはリストに書かれている問題は非常に簡単に修正できることが判明することがあります。例えばドキュメントやスクリプトの場所さえ分かればその内容を編集して終わりという事がありますが、初めて問題を見た際にはそのことがすぐに理解できるとは限らずリストに入っている場合があります。こうした問題については修正方法が見つかったらそのまま実行してリストから削除します。
こうしてリストを数週間かけて整理してもまだ残っている問題点については、この時点でようやくチームの他の人々やチームリーダー、マネージャーと話し始めるとのこと。まずリストに上がっている問題点について、「なぜそうなっているのか」「どのようにしてそうなったのか」を尋ねます。
ベネット氏の経験では、リストに残っている問題点には下記の理由のいずれかが存在しているとのこと。
・チームが気付いていない
・チームが問題に慣れてしまっていた
・実は過去にもっと悪い問題があり、解決策として比較的マシな問題が新たに導入された
・チームが問題を解決する方法を知らない
・以前に問題を解決しようとしたものの失敗した事がある
多くのチームでは、判明した問題点について最初のいくつかの質問をするうちに質問を受けた人がすぐにその問題を修正したり、修正方法を見つけるのを手伝ってくれるとのこと。技術的な問題であればストーリーやチケットを一緒に書いたり、プロセス的な問題であればチーム全体で話し合ったりします。
また、チームが気付いているものの技術的スキルなどの都合で対処を恐れている問題についてはここまでの取り組みのリストをマネージャーに見せて、「これらの問題の一部は進んでいますが、さらに時間がかかりそうな問題もあります。チームに話す前に意見を聞きたいです。何か見逃していることはありますか?集中して欲しいところは?」と質問するとのこと。その後、チームメンバーの話を聞いたり、過去にうまくいった経験やうまくいかなかった経験を話したりします。
こうしたリストを書き始める前はベネット氏は目に付いた問題をすぐに取り上げていましたが、チームメンバーから「ベネット氏はいつも物事について不平不満を言っており、我々がちゃんとやってなかったと思っている」と低い評価をもらっていました。そしてメンバーはベネット氏の話を聞かなくなり、ベネット氏もイライラしていたとのこと。
「問題ではないこと」「チームが問題とみなしていないこと」「すでに修正の努力がされていること」について大騒ぎすることで、新しいチームメンバーとしての信用は簡単に地に落ちてしまいます。チームにはいつも非常に多くの問題と改善できる点が存在しており、1人のメンバーが解決できるのはそのうちほんの一握りだけです。問題に気付いた順序で解決しようと試みるのは効率的とは言えません。
ベネット氏は「WTF Notebook」を作成することで、「今すぐ問題を解決したい」という衝動を止め、最初に何を取り組むべきかというコンテキストを集めることができるようになりました。2週間、ただ問題点を書いて状況を確認することで悪評の代わりに「ベネット氏がチームに加わってすぐに小さなことが良くなり始めた。私たちは少しずつ前進し始めているように思います」や「ベネット氏は私が問題を解決するのを手伝ってくれたり、気にかけていることを完了させてくれたりします」などの評価を得ることができると述べられています。
◆フォーラム開設中
本記事に関連するフォーラムをGIGAZINE公式Discordサーバーに設置しました。誰でも自由に書き込めるので、どしどしコメントしてください!Discordアカウントを持っていない場合は、アカウント作成手順解説記事を参考にアカウントを作成してみてください!
• Discord | "新しいチームやクラスに所属するときに心掛けていることはある?" | GIGAZINE(ギガジン)
https://discord.com/channels/1037961069903216680/1232260178632638524
・関連記事
長く成果を上げ続けるチームや組織の構築に必要なスキルとは? - GIGAZINE
上司が「アルゴリズム」に置き換わることは従業員にとって何が問題なのか? - GIGAZINE
「感情の多様性」がチームの創造性を高めるとの研究結果、ポジティブな人だけでは不十分 - GIGAZINE
プログラマーを解雇して新しい人員に置き換えることがソフトウェアにとって致命的になり得るという指摘 - GIGAZINE
大手IT企業も実施している目標管理法「OKR」が一部の企業で失敗している理由とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ