取材

Blueskyの開発者に「鍵アカウントの実装予定は?」「日本支社の設立予定は?」など何でも聞けるイベントが開催されたので行ってみたら開発者の「やることリスト」に追加されるアイデアが続々飛び出す充実のイベントでした


Bluesky開発チームに直接質問できるイベント「Bluesky Meetup in Osaka Vol.2」が2024年4月14日(日)に大阪で開催されました。イベントにはBluesky開発チームのテクニカルアドバイザーを務めるWhy氏が登壇し、ユーザーからの「こんな機能の実装予定はある?」「日本支社の設立予定は?」といった多様な質問に答えてくれました。

Bluesky meetup in Osaka Vol.2 - connpass
https://428lab.connpass.com/event/313710/

・目次
◆1:会場はこんな感じ
◆2:Bluesky Meetup in Tokyo Vol.2のおさらい
◆3:Why氏との質疑応答
◆4:Why氏への直撃インタビューもあり

◆1:会場はこんな感じ
Bluesky MeetupはBluesky開発チームにリアルタイムで質問できるイベントで、大阪だけでなく東京でも開催されています。今回のBluesky Meetup in Osaka Vol.2にはBluesky開発チームでテクニカルアドバイザーを務めるWhy氏が大阪まで来てくれるとのことなので、実際に参加してBlueskyについて気になっていることを聞いてみることにしました。

Bluesky Meetup in Osaka Vol.2は大阪市中央区にある第2野村ビル8階のNTTデータSBCで開催されました。


第2野村ビルに到着。日曜日なので正面入口ではなく裏口から入ります。


とても広いエレベーターホール。


8階へGO。


会場の入口に到着。


扉にはBluesky Meetup in Osakaの案内が掲げられていました。


扉を抜けて進むと、会場が見えてきました。


受付ではBlueskyステッカーが配られていました。


会場はこんな感じ。


寄せ書きコーナー。


軽食コーナー。


たこ焼きコーナーもあります。


たこ焼きコーナーはまさかの2カ所用意。たこ焼きへの並々ならぬ情熱が伝わってきます。


開会時間になると、Blueskyのテクニカルアドバイザーを務めるWhy氏が紹介されました。以下の写真の左側に写るのがWhy氏で、右側はWhy氏の友人で通訳を担当してくれるチャド氏です。


◆2:Bluesky Meetup in Tokyo Vol.2のおさらい
まずは、複数Blueskyボットの作者であるShino3氏による、2024年4月13日(土)に開催されたBluesky Meetup in Tokyo Vol.2での質疑応答のおさらいからスタートしました。


質疑応答の内容は以下の通り。

質問:
鍵アカウントや、ポストを非公開にする機能の実装予定はありますか?

回答:
Bluesky上のデータは現在はオープンな状態ですが、いずれ非公開機能に対応したいと考えています。

質問:
Blueskyで使われている「AT Protocol」と「Nostr」や「ActivityPub」といった他のSNSプロトコルの違いはなんですか?

回答:
他のプロトコルはデータをローカルに持ちます。AT Protocolはネットワーク全体のコンテンツを提供します。また、AT Protocolにはプラグインの仕組みが存在し、サードパーティーは接続するだけでサービスを提供できます。さらに、AT Protocolはアカウントのポータビリティを確保しており、サーバーを移管しても同様の振る舞いを維持できます。

編集部注:「AT Protocol」「Nostr」「ActivityPub」の仕組みや違いは以下の記事でも確認できます。

分散型SNSプロトコル「AT Protocol」「ActivityPub」「Nostr」は一体何が違うのか?それぞれの特徴をまとめてみた - GIGAZINE


質問:
ユーザーが独自に設置したPDSサーバーを収益化する手段はありますか?

回答:
例としては、PDSに参加する際に料金を請求することなどが考えられます。

質問:
開発にJavaScriptやReact Nativeを利用するにあたって、苦労した話はありますか?

回答:
バグは無限で尽きることがありません。iOSやAndroidなど、端末によって多様なバグに遭遇します。テストするためにスマートフォンを購入しました。

最後にはFacebookでReactを開発した人をチームに呼びました。彼は「アプリ全体を捨ててしまいたい」と漏らしていました。また、Bluesky開発チームの中には「このアプリはプロトコルの可能性を示し、React Nativeの限界をテストするために作られたんだ」と言う人もいました。

質問:
フィードを開き直した際に、既読位置を保存して続きから読めるようにしてほしいです。

回答:
フィードの問題は把握しています。その機能のサポートは現時点では難しいですが、問題としては認識しています。

質問:
PDSを簡単に設置し、維持するためのモチベーションはどんなものがありますか?

回答:
PDSのデータの仕組みを変えれば、それ専用のサービスを新たに構築できます。長期的な視点では、データ管理のみに専念したり、コミュニティやモデレーションのためにPDSを使うこともできます。

質問:
PDSの設置を容易にする方法は検討していますか?

回答:
すでにインストーラーのパッケージが用意されています。将来的にはウェブ上のインターフェースを用いてPDSを簡単に設置できるようにしたいです。

なお、会場の参加者に「PDSを自前で設置しているか」を聞いたところ、約40人の参加者のうち7~8人がPDSを自前で設置していました。


質問:
長文を分割投稿したりマンガを連載したりするために、リプライツリー機能が欲しいです。

回答:
需要があることを理解しました。フィードバックありがとうございます。検討の余地はあると思います。

質問:
スマートフォンをダークモードに設定した状態でBlueskyアプリを起動すると「星空の画像」が表示されるようになりました。スプラッシュスクリーンに星空を選んだ理由を教えてください。


回答:
最初はダークモードでも白い雲が表示されており、「スマートフォンをダークモードで使っているときにBlueskyを起動すると、スプラッシュスクリーンが明るすぎてまぶしい」という問題がありました。これを解決するために明るくない画像へと調整しました。さらに、小さな点を追加して星空であることが分かるようにしました。

ユーザーが投稿した「暗い部屋でBlueskyを起動するとまぶしすぎる」という内容のマンガがバズったことも記憶に残っています。

改善希望です

[image or embed]

— mukuuji (@mukuuji.bsky.social) Feb 16, 2024 at 17:27


◆3:Why氏との質疑応答
続いて、Bluesky開発チームのテクニカルアドバイザーを務めるWhy氏に対してユーザーが質問を投げかける質疑応答タイムが始まりました。Why氏の日本観光について尋ねる質問から、新機能の要望まで質問内容は多種多様。Why氏が「やることリストに追加する」と宣言する提案が複数飛び出したり、未発表の検討中機能が明かされるなど盛りだくさんな質疑応答タイムとなりました。


主な質問とWhy氏の回答は以下の通り。

質問:
Blueskyに下書き機能を実装する必要はありますか?長い文章を書く際や後で投稿したい際に下書き機能が欲しいです。

Why氏(以下、Why):
やることリストに追加します。

質問:
Why氏は昨年と今年の2年連続で日本を訪れたわけですが、気に入った日本の観光スポットを教えてください。

Why:
群馬の宝川温泉がグッド。京都の東山や宇治川を歩くのも好きです。金沢の庭園も素晴らしかった。広島のウナギも大好きですし、岡山デニムも最高です。大阪は今のところおでんがおいしかったです。

質問:
(Blueskyクライアント「Ucho-ten」の作者でBluesky Meetup in Tokyo Vol.2の司会も務めたばいそに氏による質問)私はいいね数やリポスト数などを表示しないBlueskyクライアント「Ucho-ten」を開発しています。Ucho-tenではlistNotificationsを用いて各種情報を取得しているのですが、listNotificationsではUcho-tenにとって不要な情報であるいいねや引用などの情報も取得できてしまいます。listNotificationsで情報を個別に取得できるようにはなりませんか?

Why:
listNotificationsにフィルター機能があると便利そうですね。やることリストに追加します。

質問:
Blueskyでは一般ユーザー独自の条件でコンテンツを収集して並べる「カスタムフィード」を使えます。このカスタムフィードをもっと使いやすくするような機能強化の予定はありますか?

Why:
将来的にスマートフォン向けアプリからカスタムフィードを作成できるようにする予定です。また、サードパーティー開発者がフィードジェネレータを作れるようにすることも考えています。

質問:
カスタムフィードを作るためにどんなAPIを追加予定ですか。どんな情報を確認できるようにする予定ですか?

Why:
現時点ですべての情報が利用可能です。「カスタムフィードを誰がフォローしているのか」という情報も公開されているので、カスタムフィードのパーソナライズも可能です。また、これはまだ開発中なのですが、機械学習を用いて「ユーザーが興味を示しそうな投稿」を抽出する機能も追加予定です。

質問:
迷惑かもしれませんが、私は7個くらいのボットを作って公開しています。現状では、各種情報を取得するにはFirehoseを見るか、Blueskyのアカウントを作成してlistNotificationsを見に行く必要があります。Outgoing Webhookの実装予定はありますか?

Why:
(ボットの作成は)全然迷惑じゃないですよ(笑)。いいアイデアだと思います。どんな機能が必要か共有してください。

質問:
Blueskyの招待制廃止に伴って、日本人ユーザーが急増したと思います。この盛り上がりについてどう考えていますか?また、もっとユーザー数を増やすための施策はありますか?

Why:
日本人ユーザーが増えたことについて、驚くと同時にワクワクもしています。しかし、私たちは日本での需要をまったく理解できていません。どうすれば日本のユーザーにアプローチできるのか分かりません。だから、私は日本に来ました。色んなアイデアを共有してください。

質問:
Blueskyに投げ銭機能があれば、盛り上がりにつながると思います。

Why:
私たちは、ユーザーが収益化できるサブスクリプションモデルについて検討を進めています。ユーザー同士が金銭のやり取りをできる決済システムを導入したいと考えているのですが、決済システムの実装には複雑な法律の問題に対処する必要があります。Bluesky PBC(BlueskyおよびAT Protocolの開発を主導する企業)の従業員は20人しかいないので、そこまで手が回らないのが現状です。

質問:
私は以前からSNSプロトコルに興味を持っており、Blueskyの基盤となっているAT Protocolの発表時には大きな感銘を受けました。以前はTwitter(現X)一強のような状態でしたが、現在は「SNS戦国時代」の様相を呈しています。SNS戦国時代における今度のBlueskyの展望を教えてください。

Why:
まず、テクノロジー業界では、以前から「1人の大名によってすべてが掌握されるシステムは良くない」という認識がありました。この考え方がテクノロジー業界以外の人々にも広まりつつあります。これはいい流れです。Blueskyは「XやInstagramなどの一流SNSよりも良いものにする」ということを目指しています。「レスポンスの速さ」「UXの使いやすさ」といった面で現在主流のSNSに負けないようにする必要があります。

質問:
成人向けコンテンツのモデレーションに関する質問が2つあります。Blueskyの招待制が廃止された直後、日本では伊東ライフ氏など複数のイラストレーターの投稿した画像が「成人向けコンテンツ」として非表示になる事態が発生しました。しかし、どのようなコンテンツが「成人向けコンテンツ」と判断されるのかは国や地域によって異なります。例えば、伊東ライフ氏のイラストは日本では一般的に「成人向けコンテンツ」とは判断されないと思います。こういった状況に対処するために、国や地域によってモデレーションの判断基準を変化させる構想はありますか?


Why:
現在、Blueskyではアカウント作成時に生年月日の入力を求めています。具体的な数字までは覚えていませんが、年齢に応じて表示するコンテンツを変化させる設定があります。モデレーションについては、AppleやGoogleといったアプリ配布プラットフォームの強い規制に従っています。私はモデレーションについてはそこまで詳しくありませんが、AppleやGoogleのルールに従えば自然とそれぞれの国や地域に合ったモデレーションが可能なのではないでしょうか。

ちなみに、モデレーションチームは全部で22人いて、「英語チーム」「日本語チーム」「ポルトガル語チーム」に分かれています。

質問:
これは私のXでの経験なのですが、スレッド内の投稿に性的な画像が含まれた場合、スレッドの一部が見られなくなることがありました。これはアクセシビリティ上の問題だと思うのですが、画像の非表示の代わりに代替テキストを表示するような機能は実装できないでしょうか。

Why:
それは興味深いですね。(スマートフォンにアイデアをメモ)


質問:
Blueskyの運営企業はBluesky PBCで、公益法人(Public Benefit Corporation)という営利企業ではない形を取っています。今後、文化的な違いなどに配慮するために海外、例えば日本に拠点を置く考えはありますか?

Why:
現時点では日本にオフィスを設置する予定はないです。ただし、Blueskyにとって日本が大きな市場であり続け、日本語翻訳者、モデレーター、アクセシビリティに重点を置いた開発者が必要になれば日本にオフィスを設置する可能性はあります。

質問:
これまで色んなSNSを約15年使ってきてずっと欲しいと思っていた機能なのですが、フォロワーやフォローしている人にメモを付ける機能は実装できないでしょうか。

Why:
それは興味深い機能ですね。AT Protocolではフォローやフォロワーに関するデータが公開されています。このため、サードパーティーアプリがフォロー関連の機能を追加できます。Ucho-tenに追加してよ(笑)

ばいそに:
やることリストに追加しておきます(笑)。

質問:
Blueskyにログインする際に二要素認証やパスキーを使えるようになるのはいつ頃ですか?ロードマップに記載されているのは知っていますが、実装される時期を知りたいです。

Why:
今四半期(2024年4月~6月)にOAuthに対応する予定です。二要素認証もパスキーもOAuthに依存しているので、OAuthの実装完了後にサポートされる予定です。

質問:
Blueskyはオープンソースで開発されていますが、ライセンスは何を採用していますか?

Why:
「MIT License」と「Apache License, Version 2.0」のデュアルライセンスです。どちらかを選んで適用できます。

質問:
Blueskyの検索機能は日本語の検索性能が低く、「カタナ」で検索しても「タナカ」「カナタ」といった誤った単語が検索結果に表示されてしまうことがあります。日本語検索性能を改善する予定はありますか?

Why:
ちょうど2024年4月12日(金)にアップデートしました。まだパーフェクトではないですが、試してみてください。

こんにちは日本????????

投稿(まだプロフィールではない)内の日本語テキストを検索するためにいくつかの変更を加えました。 あなたがどう思うか興味があります!

— bryan newbold (@bnewbold.net) Apr 13, 2024 at 2:36


◆4:Why氏への直撃インタビューもあり
質疑応答はここで終了となり、たこ焼きを作りながらWhy氏と語り合う懇親会がスタートしました。


懇親会の時間中に、Why氏に直接質問をする機会が得られたので、質疑応答では出なかった「今Blueskyについて知りたいこと」を大量に質問してきました。インタビューの全容は、以下の記事で確認できます。

Blueskyの中の人に「Blueskyの野望」「Blueskyの収益化計画」「Bluesky公式サーバーのスペック」「APIが使えなくなることはあるのか」「ジャック・ドーシーとBlueskyの関係」など今知りたいことを全部聞いてきました - GIGAZINE


◆フォーラム開設中
本記事に関連するフォーラムをGIGAZINE公式Discordサーバーに設置しました。誰でも自由に書き込めるので、どしどしコメントしてください!Discordアカウントを持っていない場合は、アカウント作成手順解説記事を参考にアカウントを作成してみてください!

• Discord | "今後のBlueskyに期待することは?" | GIGAZINE(ギガジン)
https://discord.com/channels/1037961069903216680/1229361913960333384

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Blueskyの開発者に「鍵アカウントの実装予定は?」「日本支社の設立予定は?」など何でも聞けるイベントが開催されたので行ってみたら開発者の「やることリスト」に追加されるアイデアが続々飛び出す充実のイベントでした - GIGAZINE

SNS「Bluesky」のジェイ・グレイバーCEOが「Twitterから独立した理由」「BlueskyとAT Protocolの関係」などを語る - GIGAZINE

分散型SNSプロトコル「AT Protocol」「ActivityPub」「Nostr」は一体何が違うのか?それぞれの特徴をまとめてみた - GIGAZINE

ついにX(旧Twitter)に似たSNS「Bluesky」が招待制を廃止して誰でも参加可能になったのでアカウント作成方法をまとめてみた - GIGAZINE

「Bluesky」で本人認証をする方法、Twitterと違って無料&自分で全部可能 - GIGAZINE

Twitter代替有力候補SNS「Bluesky」でGIGAZINEが新着ニュース配信を開始&どういう仕組みなのか解説 - GIGAZINE

Blueskyのデータを独自サーバーでホストする仕組み「PDS(Personal Data Server)」を使ってみた - GIGAZINE

in 取材,   モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス,   ウェブアプリ, Posted by log1o_hf

You can read the machine translated English article here.