世界最大の携帯電話メーカーだったNokiaはなぜ没落してしまったのか?
by Nicolas Nova
フィンランドに本社を構える通信端末メーカーのNokiaは、2011年まで世界最大の携帯電話メーカーでした。しかし、その後は低迷してしまい、2013年にMicrosoftに買収され、記事作成時点では通信インフラ設備の製造が主要事業となっています。なぜ世界最大の携帯電話メーカーだったNokiaが衰退してしまったのかについて、通信解析ソフトを開発するTextQueryが公式ブログで解説しています。
Nokia Made Too Many Phones
https://textquery.app/2024/02/06/nokia-made-too-many-phones/
Nokiaはフィンランド系スウェーデン人の鉱山技師だったフレドリク・イデスタムによって1865年に設立されました。設立当初のNokiaは製紙に使うパルプ工場を営んでいましたが、事業が拡大するにつれてゴム工場やケーブル工場を抱え、電力インフラに関連する製品を製造するようになりました。
Nokiaが通信インフラ事業に参入したのは創業から100年以上を経た1970年代のことで、もともとフィンランド国防軍用の装備品を製造していたことから、軍用の通信機やラジオ、電話交換機などを製造するようになりました。
1980年代に入り、Nokiaは電子計算機市場に参入し、ミニコンピューターのMikroMikkoやIBM互換PCを発売。また、1982年にはNokia初となる携帯電話のMobira Senatorを発売しています。しかし、事業を拡大しすぎたために経営危機に陥り、Nokiaは1990年初頭に大規模な事業再編を決行。これによりNokiaの事業は携帯電話と通信インフラに絞られ、モニターやPCの製造からは撤退しました。
1998年にNokiaは世界の携帯電話市場でトップシェアを獲得し、2000年代半ばまでその地位を維持。事業を携帯電話と通信インフラに絞ったものの、かつてトイレットペーパーからタイヤまで製造して幅広い事業を手がけたNokiaの社内には、市場細分化の考え方が根付いていました。2000年代に入って携帯電話の普及が世界的に加速し、新興国市場の成長も見込まれる中、Nokiaは多様な製品ラインナップを展開することで、市場シェアの拡大と顧客満足度の向上を目指しました。2007年には、Nokiaの市場シェアは40%以上に達したとのこと。
by Joegoauk Goa
特に2005年は顕著で、同年だけでNokiaは50種類以上の新モデルを発売しました。これは、iPhoneが登場してから16年間でAppleがリリースしたモデル数よりも多い数字です。Nokiaの(PDFファイル)2005年度年次報告書には、「Nokiaにとって、競争力のある携帯端末製品ポートフォリオとは、Nokiaブランド、品質、競争力のあるコスト構造に支えられた、魅力的な機能、機能性、デザインを備え、あらゆる主要な消費者セグメントと価格帯に対して商業的に魅力的な携帯端末を幅広くバランス良く提供することを意味します」と書かれています。
Nokiaはビジネス向け、音楽向け、カメラ向けなど、1つの用途に特化したモデルを大量に作りました。ディスプレイも1ビットの単色ディスプレイから24ビットのAMOLEDディスプレイまで多岐にわたっていました。
例えば、2003年に発売されたNokia 7600は木の葉のような独特なデザインが特徴で、カバーは交換可能。動画も撮影できる640×680ピクセルのデジカメを搭載しています。
by Andrew Currie
Nokia N-Gageは2003年に登場したゲーム特化型の携帯電話。ゲームソフトはマルチメディアカードでリリースされ、「キングオブファイターズ」や「ソニック」「トゥームレイダー」「パズルボブル」などのタイトルが発売されています。
by Association WDA
2004年発売のNokia 7280は手のひらサイズの携帯電話で、「口紅」と呼ばれる見た目をしています。キーパッドの代わりにスクロールホイールを使って操作をします。
by patrix
Nokia N90は2005年に登場したモデルで、回転式のカメラモジュールを搭載し、ハンディカメラのような使用感が特徴でした。
by Douglas Porter
こうした実験的なデザインは当時の携帯電話市場において革新的な存在でしたが、一貫性のないユーザー体験や限定的な汎用性など、実用面での課題も指摘されていました。Nokiaはデザインの多様性を追求するあまり、多数のユーザーのニーズに応えるようなプラットフォームの構築に苦戦することになったのです。
そして、Appleが2007年にiPhoneを発表し、2008年にGoogleがAndroidを発表すると、スマートフォン市場が急速に変化しました。Nokiaはタッチスクリーンインターフェースとアプリ市場の普及という大きな変化に対応することができず、2011年にはSamsungがスマートフォン出荷台数でNokiaを抜き、そこからNokiaのシェアは急速に低下し、2014年にMicrosoftに携帯電話部門を買収される事態に至ります。
結果的に、製品を過度に多様化させるというNokiaの戦略は開発リソースの分散を招き、ユーザー体験の一貫性を損なう要因となりました。そして、市場の変化を予見し、適切な戦略転換を行うことができなかったことが、Nokiaの衰退につながったといえます。
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