アルミ球や金属の粒が入ったコップを使って電球を点灯させたり無線通信できたりする「コヒーラ効果」とは?
コヒーラ効果とは、接点の被膜が電気的に破壊されることで、接触抵抗が急激に減少する現象のことです。このコヒーラ効果は、アルミホイルや電球を使って簡単に確認することが可能で、科学系YouTubeチャンネルのElectroBOOMが作り方を紹介していたので実際にやってみました。
Wireless Communication with a Cup of Balls, Coherer Effect - YouTube
ElectroBOOMのMehdi Sadaghdar氏。
Sadaghdar氏の説明に従って、コヒーラ効果を簡単に確認できる「コヒ―ラ検波器」を作っていきます。まずはカップに2枚のアルミホイル箔(はく)をセット。
アルミホイルを丸めたものをいくつか作ります。
アルミホイルと電球をミノムシクリップやリード線で直列につなぎます。
電源をつなぎ、丸めたアルミホイルをカップに投入。
アルミホイル同士が接触することで電気が流れ、電球が点灯します。
カップを揺らして丸めたアルミホイルを動かし、電球を消灯。アルミホイルの表面は薄い酸化皮膜で覆われているため、少しの衝撃で安定した電流が流れなくなり、回路が切断され、電球が光らなくなってしまいます。
電球が消灯したら、カップのそばで着火ライターを点火。着火ライターの引き金を引くと、電球が点灯しました。この現象は、着火ライターの引き金を引いたことで、先端から発生した電磁波がアルミホイルの酸化皮膜を溶かし、回路がつながったことで発生します。
使用した回路がこんな感じ。
Sadaghdar氏はさらなる実験として、横一列に並べたアルミホイル玉と電球をコードでつなぎました。
着火ライターの引き金を引くと、電球が点灯。
さらにSadaghdar氏はコヒーラ効果の確認に加え、電球が点灯したときの電圧を測定。カップの中で着火ライターの引き金を引くと、電圧計のメーターが振り切れてしまいました。
少し離して測定すると、およそ10ボルトの電圧が回路にかかっていることが判明。
また、電気抵抗を測定すると、どの距離で着火ライターの引き金を引いても、約1.7Ω~2Ωの範囲にとどまることがわかりました。
Sadaghdar氏によると、カップに入ったアルミホイルがエネルギーを拾うアンテナのような働きをしつつ、不要な高周波パルスを取り除くことで電球を点灯させるのに十分な電圧を得ているとのこと。
かつては、2つの接点の間に小さな金属粒子やボールを置いて、電磁波が発生するとベルを鳴らし、ボタンを押すと回路を切断する初期のモールス信号機にコヒーラ効果が利用されました。
電磁波が発生する理由は、今回用いた着火ライターにあります。着火ライターは、物質に力を加えると圧力に比例した分極が現れる「圧電効果」を利用して点火しており、そのために圧電素子が組み込まれています。そのため、圧電効果によって放出された電磁波がアルミホイルに作用して電流が流れたというわけです。
説明のために分解した着火ライターとリード線をつなぎ、離れた場所から電球の点灯を試みるSadaghdar氏。
数メートル離れた位置からでも電球の点灯に成功しています。
しかし、フロアの端から端まで回路を伸ばすと点灯しなくなりました。Sadaghdar氏は「もっと遠くから点灯させたい場合、共振回路を拡大する必要があります」と述べました。
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