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ニコンが買収を発表した映像機器メーカー「RED Digital Cinema」とは?


カメラメーカーのニコンが、アメリカのカメラメーカーであるRED Digital Cinemaを買収し完全子会社化することで合意したと2024年3月7日に発表しました。RED Digital Cinemaはデジタルシネマカメラのメーカーとして知られていることから、ニコンが業務用ビデオカメラの市場に進出することが期待されます。

米国の映像機器メーカーRED Digital Cinema.com, LLCを子会社化 | ニュース | Nikon 企業情報
https://www.jp.nikon.com/company/news/2024/0307_01.html


RED Digital Cinemaは、サングラスや安全メガネのメーカーとして知られるOakleyの設立者であるジム・ジャナード氏によって2005年に設立されました。ジャナード氏はカメラマニアを自称しており、比較的手頃な価格の4Kデジタルシネマカメラを提供したいと考えていたそうです。

RED Digital Cinemaの設立当初は2K画質が一般的でしたが、RED Digital Cinemaはハリウッド向けのデジタルシネマカメラを開発する上で4K解像度を採用。フレームレートを犠牲にすることなく、デジタル一眼レフカメラと同等の焦点品質を達成するという課題を背負い、アナログフィルムと同等の物理サイズを持つセンサー「Mysterium」を開発。2006年に初の4KデジタルシネマカメラであるRED ONEを発表しました。


RED Digital Cinemaのデジタルシネマカメラに注目した1人が、映画「ロード・オブ・ザ・リング」で知られるピーター・ジャクソン監督です。ジャクソン監督は2007年に短編映画「Crossing the Line」を、プロトタイプのRED ONE2台で撮影しました。

Crossing The Line - Full Length Trailer - YouTube


そして、この「Crossing the Line」を見たスティーブン・ソダーバーグ監督は、ジャナード氏にRED ONEのプロトタイプの貸出を依頼し、映画「チェ 28歳の革命」の撮影に使用しました。RED ONEは他にも、映画「アメイジング・スパイダーマン」「プロメテウス」「華麗なるギャツビー」「ドラゴン・タトゥーの女」やテレビドラマ「ER緊急救命室」など、さまざまな映画やドラマの撮影に使われています。当時のシネマカメラは非常に高価で1台2000万円することもあったそうですが、RED ONEは1万7500ドル(当時のレートで約200万円)という破格の値段だったため、プロだけではなくアマチュアの映画製作者からも人気を集めました。

こうしてRED Digital Cinemaの知名度は伸び、RED Digital Cinemaのデジタルシネマカメラはハリウッド映画の撮影現場で使われるようになりました。以下はデータ企業のStephen Followsによる「興行収入トップ200の実写映画で使われているカメラのメーカーシェア」を2007年から2018年まで示したグラフ。2011年頃からシェアトップはARRI(アーノルド&リヒター、水色)で、2位がRED Digital Cinema(紫色)となっています。ただし、RED Digital Cinemaのシェアは2016年頃に20%弱まで拡大したあと、少しずつ減っています。


RED ONEは2012年に生産終了しましたが、記事作成時点では「DSMC2」「KOMODO」「V-RAPTOR」といった機種がリリースされています。また、RED Digital Cinemaが開発する独自の圧縮RAWフォーマット「RED Digital CinemaCODE」は「データの圧縮率を自由に変えられる」という特徴を持つロスレス圧縮で話題となりましたが、このRED Digital CinemaCODEの特許をめぐり、さまざまな企業と法廷闘争を繰り広げることとなりました。

たとえば、2013年にRED Digital Cinemaは「ソニーがRAW圧縮の特許を侵害した」として連邦裁判所に提訴しました。2019年にはAppleがApple ProRes RAWコーデックでREDのライセンスは認められないとして訴訟を起こしています。

さらに今回RED Digital Cinemaを買収したニコンは、2022年にRAW動画フォーマットの特許について、RED Digital Cinemaから訴えられています。

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ただし、ニコンに対するRED Digital Cinemaの訴訟については2023年4月に取り下げられたことが報じられました。訴訟が取り下げられた理由について、ニコンがRED Digital Cinemaとなんらかの合意に至ったとみられていましたが、その具体的な内容は明らかにされていません。

なお、ニコンは買収決定のリリースで「今回の子会社化により、製品開発における高い信頼性や映像処理技術、ユーザーインターフェイス、光学技術などの知見を持つニコンと、独自の画像圧縮技術やカラーサイエンスをはじめとしたシネマカメラにおけるノウハウを培ってきたRED社の強みが一体化され、業務用動画機において特色のある製品開発が可能になります」とコメントしており、デジタルシネマカメラを含む業務用ビデオカメラ市場に打って出る可能性を示しています

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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