Netflixのロゴが表示されるイントロを毛糸で再現したストップモーションムービーに隠された秘密とは?
ストップモーションアニメのクリエイターであるケビン・パリー氏は、2022年に「Netflixのイントロを30ドル(約4500円)分の毛糸で再現するムービー」を投稿しました。ムービーはYouTubeの完全版が60万回以上、ダイジェスト版のYouTubeショートやその他パリー氏のSNSなどで公開した動画を合計すると5000万回以上再生され高い反響を得ましたが、実はこのムービーは物理的に再現不可能なもので、「大きなウソ」がいくつも含まれているとパリー氏が告白しています。
I Lied About Recreating the Netflix Intro
https://kevinparry.tv/blog/i-lied-about-recreating-the-netflix-intro
Recreating the Netflix Intro with $30 Worth of Yarn - YouTube
パリー氏がストップモーションアニメで再現しようとしたのは、以下の画像左側で示されているように、赤い「N」のロゴが表示されるNetflixのイントロ。
Nのロゴはアップになり、細かい糸状にほどけていきます。
ほどけた線はカラフルに変化。
このイントロを毛糸で再現するために、さまざまなカラーの毛糸を購入しました。毛糸の値段は、ムービーのタイトルにもあるように合計で約4500円程度。
Netflixのイントロは背景が黒で、カメラは固定のため、まずは専用の台を作成しています。
そして、赤い毛糸でNの文字を作成しました。
Nの毛糸を長さの変わる支柱に取り付け、真上にカメラを固定して撮影を開始。
Nの毛糸をカメラに近づけていくことで、映像ではNの文字がアップになっていくように撮影。そして、イントロを再現するために、アップになるにつれてNの文字を解体していきます。
イントロの最後にNの文字がさまざまなカラーの糸にほどけていくシーンを再現するために、綿密な調整をしています。
ムービーの最後では、実際に作成されたストップモーションアニメを見ることができます。毛糸で再現された赤いNのロゴ。
ロゴはアップになるにつれて消失していきます。
画面いっぱいに拡大したら、さまざまなカラーの毛糸に変化。ムービーによると、糸を1フレームずつ動かして撮影していくため、わずか3秒のムービーの撮影に約3日間を費やしたとのこと。
ムービーは合計5000万回以上再生され、Netflixの目にも止まってパリー氏の元に連絡が来た他、Netflixオリジナルアニメのラブ、デス&ロボットのデヴィッド・フィンチャー監督がインタビューで「パリー氏のストップモーションアニメを作品に使いたい」と発言したとパリー氏は語っています。
しかし、ムービーを投稿してから約1年後となる2024年2月に、パリー氏は自身のブログで「Netflixのイントロを再現したとウソをついた」という投稿をしています。パリー氏によると、ムービーのほとんどはウソで、静止画だけで作られたストップモーションアニメではなく、制作時間やタイトルにある毛糸の費用すら真実ではないそうです。
パリー氏はムービーにあるように、専用の台および背景を設置した後、毛糸でNのロゴを作成して、実際にストップモーションアニメに取り掛かりました。しかし、アニメーションが5フレームほど進んだところで、元のイントロに合わせて糸を1フレーム動かすのに5分かかったため、「このアニメは実現不可能だ」と感じたとのこと。そのため、パリー氏は撮影した写真を元にコンピューター上で動かしたりカラーを変更したりしてデジタルなアニメーションを作成し、最終的な「偽のストップモーションアニメ」を仕上げました。
ムービーで「イントロの最後にNのロゴがさまざまなカラーにほどけていくシーンを再現するために糸の配置を試行錯誤」している以下のシーンは、実際には糸をランダムに動かしている様子をタイムラプスで撮影して、それっぽくムービーにしたのみだそうです。
結果として、ムービーでは「糸を1フレームずつ動かすため、ムービー全体で約3日間撮影に費やしました」と語っていますが、実際にはデジタル処理によって1日の作業で完了したとのこと。さらに、「30ドル(約4500円)分の毛糸」とタイトルにありますが、実際には100ドル(約1万5000円)以上かかったにもかかわらず、「より安い方がより面白い」ということで低い数値で表記したとパリー氏は語っています。
パリー氏は「私の経験では、あらゆる芸術プロジェクトは半分くらいで、想像力が能力を上回り、実現不可能なことを理解する『絶望の谷』に突き当たります。そこからはい上がるには、既成概念にとらわれない考え方や、手段・ツールの切り替えが必要で、その谷を越えた先で創造性が繁栄します。クリエイティブな成功とは、必ずしも計画を守ることではありません」と、ストップモーションアニメからデジタル処理に切替えたことでうまくNetflixのイントロを再現したムービーを完成させた満足感を述べています。
一方で、「絶望の谷を乗り越えるのはいいことですが、どうやってそこから抜け出したかについてふざけるのはよくありません」とパリー氏は付け加えています。パリー氏は以前も、自身のYouTubeチャンネルで「視聴者をだますトリックムービー」とその解説を投稿しており、「視聴者がウソを見つけるのに参加できる、楽しいウソ」の面白さを語っています。しかし、見る人がただダマされてしまう面白くないウソもあり、今回のムービーは面白くないウソに該当するため、無責任で反省すべき点があったと語っています。
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