ハードウェア

携帯型ゲーミングPC「ROG Ally」に搭載されたSoC「Ryzen Z1」のパフォーマンステストを行った結果とは?


2023年6月にASUSが発売した携帯型ゲーミングPCの「ROG Ally」には、AMDの「Ryzen Z1」というSoCが搭載されています。そんなRyzen Z1について、海外メディアのChips and Cheeseが詳細なパフォーマンステストを行っています。

AMD’s Mild Hybrid Strategy: Ryzen Z1 in ASUS’s ROG Ally – Chips and Cheese
https://chipsandcheese.com/2024/02/12/amds-mild-hybrid-strategy-ryzen-z1-in-asuss-rog-ally/


AMDが2023年4月に発表した「Ryzen Z1」は、2つの高性能なZen 4と、スペースに合わせて最適化されたZen 4cが4つ組み合わさった、「セミハイブリッドコア構成」と呼ばれるプロセッサです。


Zen 4cは、通常のZen 4とアーキテクチャが共通ですが、ダイ領域を小さくするためにクロックの面でZen 4に劣るとされています。実際にRyzen Z1に搭載されたZen 4とZen 4cをクロック速度の面で比較したグラフが以下。赤で示されたZen 4は最大5GHzで動作しますが、オレンジで示されたZen 4cは最大3.55GHzでの動作にとどまっています。なお、どちらのコアもおよそ1.5ミリ秒で最大クロック速度で駆動することが可能です。


続いて、キャッシュメモリに関する比較を行ったグラフが以下。Zen 4とZen 4cのL2キャッシュメモリへのアクセスは、どちらも14サイクルです。また、L3キャッシュメモリへのアクセスはどちらも50サイクル程度。L4キャッシュメモリになると、Zen 4のサイクル数がZen 4cを上回ることが報告されています。


Zen 4とZen 4cのレイテンシーを比較すると、Zen 4に比べてクロックが劣るZen 4cのレイテンシーは高く、L1キャッシュメモリの時点でZen 4の0.84ナノ秒に対し、Zen 4cは1.14ナノ秒、L2ではZen 4が2.94ナノ秒でZen 4cが4.00ナノ秒、L3ではZen 4が10.46ナノ秒でZen 4cが14.16ナノ秒です。なお、L4キャッシュメモリでは両者のレイテンシーは123.90ナノ秒で共通しています。


12個のコアを持つRyzen Z1で、L3キャッシュメモリにおいて各コアのレイテンシーを比較した表が以下。レイテンシーの測定に当たって、Chips and Cheeseは、該当のコアのレイテンシーを測定し、別のコアにはダミーの負荷をかけたとのこと。緑で示された論理コアの1、2、9、10番がZen 4コアで残りはZen 4cです。Chips and Cheeseは「Zen 4cコアがアクティブな場合、Zen 4コアはL3レイテンシーのペナルティを受けません。Zen 4cコアの場合、Zen 4をアクティブにすると、L3におけるレイテンシーがわずかに改善されます」と報告しています。


キャッシュとメモリにおける帯域幅を比較したグラフが以下。Zen 4の帯域幅はL1で286.63GB/秒、L2で157.25GB/秒、L3で132.83GB/秒、L4で41.71GB/秒です。また、Zen 4cの帯域幅はL1で206.99GB/秒、L2で112.65GB/秒、L3で94.79GB/秒、L4で43.27GB/秒です。


クロックの面ではZen 4に劣るZen 4cですが、Ryzen Z1ではZen 4cの数がZen 4に比べて2倍になっています。そのため、4つのZen 4cが、2つのZen 4よりも多くのキャッシュ帯域幅を享受していることが示されています。


また、Chips and CheeseはRyzen Z1とデスクトップ向けCPU「Ryzen 9 7950X3D」のキャッシュ帯域幅の比較を行いました。その結果、両者ともL1データキャッシュ帯域幅が1200GB/秒以上と、高い性能を発揮することが明らかとなりました。


Ryzen Z1とIntelのMeteor Lakeマイクロプロセッサのコア間レイテンシーを比較した表が以下。右のMeteor Lakeμプロセッサではコア間のレイテンシーにばらつきが見られますが、左のRyzen Z1ではばらつきはほとんど確認できません。


総評として、Chips and Cheeseは、「セミハイブリットコア構成を採用することで、最適化の可能性は制限されるものの、コア間のレイテンシーにばらつきが見られるというIntelの課題を克服することが可能です」と述べています。また、「ハイブリッドコア構成という戦略は、IntelやNVIDIAなどの競合他社に比べて、小規模なAMDの立場と一致しています。今後、AMDがハイブリッドコア構成を継続して定着していくのか、非常に興味深いです」と語りました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
AMDが高性能かつ省電力な携帯ゲーム機向けプロセッサ「Ryzen Z1」&「Ryzen Z1 Extreme」を発表 - GIGAZINE

Windows 11&AMD Ryzen Z1搭載でいつでもどこでもPCゲームが遊べるASUSの携帯型ゲーミングPC「ROG Ally」フォトレビュー - GIGAZINE

ASUSの携帯型ゲーミングPC「ROG Ally」のバッテリーと冷却性能を確かめてみた - GIGAZINE

エルデンリングもApex Legendsも塊魂も場所を選ばずにプレイできるASUSの携帯型ゲーミングPC「ROG Ally」でゲームをプレイするとどんな感じなのか? - GIGAZINE

SteamもXboxもこれ1台でどこでも遊べるASUSのWindows 11搭載モバイルゲーミングPC「ROG Ally」セットアップ編 - GIGAZINE

7インチ液晶とコントローラーが合体して持ち運び可能なゲーミングPC「ROG Ally」の持ち心地をNintendo Switchと比べてみた - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.