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ウクライナへの軍事支援に用いられる155mm口径のM795榴弾の量産が困難な理由とは?

by 7th Army Training Command

2022年2月から始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻において、アメリカはウクライナへの軍事支援を行っています。しかし、アメリカがウクライナに供給できる軍事資源には限度があり、155mm口径の砲弾である「M795榴(りゅう)弾」を十分なだけ生産することが不可能であることが報告されています。

As Much As You Ever Wanted To Know About 155m Artillery Shell Production and More
https://roblh.substack.com/p/as-much-as-you-ever-wanted-to-know


155mm口径の砲弾には、M712 カッパーヘッドM107など、複数の種類が存在しますが、エンジニアのRob L氏は「M795」に絞った解説を行っています。

M795は、鋼製のボディの中に爆発性フィラーや回転バンドが搭載されていて、ウクライナでは、アメリカなどから供与されたM777 155mm榴弾砲を用いて発射され、ロシアの無人機への攻撃や侵攻の阻止に用いられることが想定されています。

M795の製造はペンシルベニア州のスクラントン陸軍弾薬工場アイオワ陸軍弾薬工場などで行われており、2022年にロシアがウクライナへ侵攻する以前の時点では、一カ月で1万4000発が製造可能でした。

ウクライナからの要求に応じるため、2023年9月時点でこれらの工場は月に2万8000発の製造を行っています。しかし、ウクライナは月によっては60万発を使用することもあると述べ、アメリカに対しM795の生産拡大を要求しています。


アメリカは、2025年度初頭までに月に10万発の製造を行うことを目標に、工場の建設や拡大を図っていますが、砲弾のケーシング生産の困難さが生産拡大のネックとなっています。

M795で用いられている「HF-1」と呼ばれる外殻は、シリコンや炭素、マンガンからなる鋼を使用して製造されます。砲弾の基本的な要件として、発射の際の大きな圧力に耐える頑丈さと爆発時の高い破砕特性が求められます。M795は他の砲弾に比べて破砕特性が(PDFファイル)優れているとのこと。


一方でHF-1は複数回の加熱や成型といった複雑なプロセスを経て製造されるため、量産が困難という課題も抱えています。

HF-1の製造過程を示した動画が以下。「長さ20フィート(約6m)の鉄を正確にカット」「鉄を約1100度に加熱」「溶けた鉄を成型」「冷却」「研磨」などの工程を経てHF-1は製造されます。

Go inside the plant making artillery rounds for U.S. and Ukrainian armies - YouTube


また、HF-1に用いられる鋼を製造、加工できる金属3Dプリンターはほとんど存在せず、3DプリントしてHF-1を大量生産することは不可能です。さらに、外殻の大きさが長さ858mm、直径155mmであることから、多くの金属3Dプリンターではサイズの問題で出力できないほか、Velo3Dの大型金属3Dプリンター「Sapphire 1MZ」を用いることで理論的には製造が可能ですが、出力に時間がかかるため、量産が困難となってしまいます。


エンジニアのRob L氏は「アメリカがウクライナへの軍事支援をさらに拡大する場合、アメリカ国防総省は許認可の問題は後回しにして、砲弾の製造を拡大するために多くの企業と契約を結ぶでしょう。続いて国防総省が直面する問題は、工場の拡大に伴って増大した従業員の育成です」と指摘しました。

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in メモ,   動画, Posted by log1r_ut

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