Appleの知られざる「出張修理サービス」の実態とは？

by Carl Berkeley

Apple公式の修理サービスを受けるには、故障した製品を店舗に持ち込んだり配送したりするほかに、Appleから技術者を派遣してもらう出張修理サービスを受けることができます。この出張修理サービスの技術者として働いていたというマシュー・ダッガン氏が仕組みや体験談を語っています。

Fixing Macs Door to Door
https://matduggan.com/fixing-macs-door-to-door/

Appleの製品保証サービス「AppleCare＋」のMacに関するサービス内容の紹介ページを確認すると、「デスクトップコンピュータの出張修理」という項目が存在しており、出張修理サービスを展開していることが分かります。ダッガン氏は、この出張修理サービスの技術者として2008年からシカゴで働いていたとのこと。

ダッガン氏はAppleの用意するオフィスで作業していたわけではなく、「Appleのサポートチームから発送される修理用部品を受け取り、公共交通機関を用いて顧客のもとへ向かう」という形式で働いていたとのこと。ダッガン氏の給料は年間2万5000ドル(約360万円)に修理手数料を加えたもので、当時のシカゴでは高給取りとは言えなかったと振り返っています。

ダッガン氏とApple本社との関係は希薄で、一定水準以上の顧客満足度を確保してさえいれば特別な通知が来ることはなかったとのこと。Appleは出張修理サービスの技術者に対してPDF形式の修理ガイドや内部診断ツールは提供したものの、Apple Storeのスタッフが受けるような「カスタマーサービスに関するトレーニング」は実施されませんでした。

ダッガン氏は出張修理サービスの技術者として働くなかで「超有名人のスタジオで修理作業」「Mac強盗と遭遇」といった珍しい経験をしたとのこと。ダッガン氏は当時のエピソードを細かく語っています。

◆オプラ・ウィンフリーのスタジオで修理作業
ダッガン氏は1986年～2011年にかけて放送されていた超有名トーク番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」の司会を務めていたオプラ・ウィンフリー氏のスタジオで修理作業を行った経験があるとのこと。

スタジオの従業員のほとんどは女性で、ダッガン氏は「オプラに会ったとしても、普通に行動してください。記念撮影やサインを求めないようにしてください」と念を押されたとのこと。ダッガン氏はそのスタジオでiMacを修理することになりました。

ダッガン氏がiMacのストレージやメモリ、Wi-Fiモジュールの交換を終えた頃、ウィンフリー氏が女性スタッフと共にダッガン氏のいる部屋に入ってきました。ウィンフリー氏は撮影スケジュールなどについて話していたそうですが、ダッガン氏は反射的に机の下に身を隠して目を合わせないようにしたとのこと。ウィンフリー氏が部屋を出ていった後、一緒にいた女性スタッフは「オプラに会えるなんて信じられる？」と言わんばかりの表情でダッガン氏を見てきたそうです。

by Alan Light

◆Mac強盗と遭遇
出張修理サービスの技術者は学校などに派遣されて数百台のMacのメンテナンスを実施することもありました。ある日、ダッガン氏はシカゴの中でも最も治安の悪い地区の公立学校でMacの修理を行うことになりました。

修理を終えたダッガン氏は、Macから取り外した大量の壊れた部品を「iMacの空き箱」に詰め込んで帰路につきました。ダッガン氏がバス停でバスを待っていると、1人の男性が近づいてきたとのこと。その男性は武器は持っていなかったものの、ダッガン氏を脅してiMacを渡すように要求してきたそうです。身の危険を感じたダッガン氏は要求に従って「壊れた部品が大量に入ったiMacの箱」を男性に渡しました。

ダッガン氏は箱の中身が「壊れた部品」であることがバレる前にその場を去ることができましたが、壊れた部品はAppleに送付する予定のものだったため、Appleに強盗について説明する必要が生じました。ダッガン氏が帰宅後にAppleの担当者に強盗被害について相談したところ、「強盗被害に遭った部品は『紛失した』として扱われる」「強盗被害がダッガン氏の評価に影響を及ぼすことはない」と告げられたとのこと。数週間後にダッガン氏は以下のメモ帳をAppleから受け取りました。ダッガン氏は「強盗被害とメモ帳のプレゼントは無関係かもしれない」と述べつつ、メモ帳の送付はあまりにも奇妙なタイミングだったと述懐しています。