Amazonの「AIによるカスタマーレビュー要約」機能の結果がネガティブ寄りで販売業者から不満の声
大手通販サイト・Amazonでは、2023年夏からカスタマーレビューの内容をAIが3行程度に要約してくれる機能が加わりました。一見、要点だけをかんたんに把握できるいい機能に思えるのですが、実際のところは、カスタマーレビュー全体からするとわずかしかないような批判的意見が取り上げられ、販売業者にとってはうれしくない状況になっていることが報告されています。
Misleading AI Product Reviews on Amazon Spook Sellers During Holiday Season - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-12-19/misleading-ai-product-reviews-on-amazon-spook-sellers-during-holiday-season
Amazon Merchants Give Low Marks to AI-Powered Review Highlights
https://www.pymnts.com/news/artificial-intelligence/2023/amazon-merchants-give-low-marks-ai-powered-review-highlights/
Amazonのカスタマーレビューは、ものによっては数多くのレビューが寄せられ、せっかくなので参考にしたいのですが、読み比べるのが大変なこともあります。
この問題を解決すべく、Amazonは2023年夏からAIを用いてカスタマーレビューを数行に要約する機能の提供を開始しました。しかし、すでに数々の事例で明らかになっているように、AIが必ずしも正しい答えを出力するわけではなく、AIレビュー要約機能も同じ壁にぶつかっていることが指摘されています。
たとえば、フィットネス企業のTeeterは、腰痛対策の運動を行える「反転テーブル(inversion table)」と呼ばれる製品を販売しています。製品ページに掲載されている写真の通り、だいたい誰が見ても「健康器具」「運動器具」とわかる外観です。
Amazon | Teeter EP-560 Ltd. 腰痛用インバージョンテーブル FDA登録済み UL安全認定 耐荷重300ポンド (EP -560 Ltd.) | TEETER | 筋力トレーニング
しかし、AmazonのAIが要約した内容は「お客様はこのデスクの堅牢性や調整のしやすさ、痛みを軽減してくれるところを気に入っています」というもので、健康器具をデスク扱いしています。
名作ボードゲーム「ブラス」をベースに作られた「ブラス:バーミンガム」の場合、AmazonのAIはレビュー要約を「しかし、お客様からは遊びやすさについて賛否両論があります」と締めくくっています。この結論部分を読むと、まるで「ブラス:バーミンガム」には批判的なユーザーも多いように思えますが、実際には500件以上のカスタマーレビューによって星4.7と高い評価を受けており、遊びやすさに言及しているレビューはわずかに4件、全体の1%しかないとのこと。
Amazon | アークライト ブラス: バーミンガム 完全日本語版 (2-4人用 60-120分 14才以上向け) ボードゲーム | ボードゲーム | おもちゃ
同様に、4300件以上のカスタマーレビューにより星4.7という相当な高評価を受けているPennのテニスボール3個セットの場合も、「一部のお客様は製品の匂いに失望している」と要約されていますが、匂いに言及したレビューはわずか7件。しかし、買い物をする人が「実際には匂いを気にしている人はほぼいない」と気づくためには、わざわざ要約されたレビューの「匂い」の項目をクリックしなければわかりません。
Amazon | Championship テニスボール - 超高耐久フェルト加圧テニスボール エクストラデューティー | Penn | ボールかご
ニュースサイトのBloombergは調査により、「レビュー要約は賛否両論取り上げる」「批判的意見も掲載する」という一貫した方針になっているわけではないことを確認しています。たとえば、2万件以上のレビューがあり星4.7という評価のバックパックには、「ストラップに難がある」という指摘が900件以上あったものの、要約ではストラップへの言及はなかったそうです。
Bloombergの報告に対して、Amazonの広報担当者は「我々の分析では、レビュー要約機能は、お客様が欲しいものを見つけるのに役立ち、売上増加につながっていることがわかりました。我々は正確性を重視しており、時間をかけてレビュー要約機能を改善していく予定です。機能について心配の声はほとんどいただいていませんが、もし質問等ありましたらセラーサポートにお問い合わせください」と返答したとのこと。
販売コンサルティング会社・Black Label Advisorのジョン・エルダー氏はニュースサイト・Bloombergに対し「一握りの否定的なフィードバックを、まるで一貫した意見であるかのようにAIが要約してしまうのは、フェアではありません。このことによる金銭的影響がどれぐらいかを正確に把握するのは困難ですが、販売業者は満足していません」と語っています。
なお、カスタマーレビューの中にはベストセラー商品のウソを暴く非常に有用なものも存在しており、こういう情報をうまく拾って要約してほしいところです。
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