TikTokやYouTubeで貧困地区の薬物中毒者を晒して収益を得る「Tranqツーリズム」
2021年以降、フィラデルフィア北部に位置するケンジントンに薬物中毒者があふれかえっていることが問題視されています。こうした人々を支援する団体もあれば、動画作成のネタにして小銭を稼ぐ非倫理的な人々もいるとして、The Guardianが問題提起しました。
‘Tranq tourism’: alarm in Philadelphia as TikTokers travel to film drug users | Drugs | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2023/dec/17/tranq-tourism-tiktok-philadelphia-drug-use-xylazine
ケンジントンには低所得者層が多く居住し、さらに「tranq」と呼ばれる新たな鎮静剤が流行しているため、治安がひどく悪くなっているそうです。
tranqは別名「キシラジン」と呼ばれる薬で、副作用として直立困難な状態を引き起こすことがあります。そのため、服用者はふらふらとまるでゾンビのように歩き回ることになります。キシラジンは動物用としてのみ承認されており、作用を抑える薬もないため、死亡事故が多発していると報告されています。
YouTubeやTikTokなどで動画を作成する人々はこうしたキシラジン服用者を撮影しにわざわざケンジントンを訪れ、床に横たわる人々を映したり、薬を服用した人をズームアップしたりして、「ゾンビ」「ジャンキー」などとレッテルを貼って動画を公開しているとのこと。この手の動画はほとんど個人の顔がボカされることはなく、関連する動画は合計数百万回にわたり再生されているとのことです。
動画のネタに弱者を撮影しに訪れる、通称「Tranqツーリズム」の流行とは対照的に、サラ・ローレル氏は非営利団体のサベージ・シスターズを創設して薬を服用した人々を支援しています。サベージ・シスターズは服用者に手当てをし、シャワーや日用品などのリソースを提供しているほか、治療を考えるよう勧めるなど心のケアも行っているとのこと。
そうした活動をないがしろにするかのようにケンジントンへ訪れるクリエイターに対し、ローレル氏は「後に振り返ったときにトラウマになるような撮影・質問をすることは、決して許されることではありません」と指摘しました。
クリエイターの中には、服用者を撮影し、人々の注目を集めさせることが「助け」になると考えている人も存在するそうです。ただし、こうした人々が実際に自分の手で手助けをするようなことはありません。
ローレル氏と同様に人々を支援している臨床心理学者のゲリ=リン・ウッター氏は「ヨーロッパやアメリカ中から人々がやってきて、人々の顔に携帯電話やカメラを向けるのです。そんなことは助けになりません。人間性を失わせるだけです」とコメント。ローレル氏も同じく撮影活動を否定し、ただ現れて録画するだけでなく、何か資源を持ってきて手伝ってください」と訴えました。
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