SF作家たちが「作家の寛大さを悪用するAIトレーニングは許せない」として著作権当局に規制を要請
ジェネレーティブAIは高度な文章や画像を生成できる一方で、AIをトレーニングするためのデータの扱いがしばしば問題になっています。作家活動の支援として著作権関連のサポートも行う非営利団体のアメリカSFファンタジー作家協会(SFWA)は、アメリカ著作権局に対して提出した書簡の中で、AIトレーニングに作品が使用されることに反対する理由について明確にしました。
SFWA Comments on AI to US Copyright Office - SFWA
https://www.sfwa.org/2023/11/03/sfwa-comments-on-ai-to-us-copyright-office/
Science Fiction and Fantasy Writers Take Aim at AI Freeloading * TorrentFrea
https://torrentfreak.com/science-fiction-and-fantasy-writers-take-aim-at-ai-freeloading-231213/
AIを訓練するための学習用データセットが著作権やプライバシーを侵害しているという問題はしばしば指摘されています。過去には、ChatGPT開発のOpenAIが学習用データをめぐって集団訴訟を起こされていたり、Metaの大規模言語モデル「LLaMA」のトレーニングにも使用された「Books3」を削除するよう著作権侵害対策グループから要請されたりといった件が報道されました。また、学習に使われている作品が、正規の手段で手に入れたものではなく海賊版だったことが発覚し、違法なデータだということが問題視されるケースも起きています。
「ChatGPTの学習に海賊版の本が使われた」として作家がOpenAIを告訴 - GIGAZINE
SFWAはサイエンス・フィクション(SF)およびファンタジーに関連する作品を発表するクリエイターが2500人以上所属している非営利団体で、出版業界における詐欺などの調査および注意喚起、出版トラブルの仲裁、著作権問題の調査や対処など作家のサポートを実施しています。アメリカ著作権局が2023年8月ごろにAIによって引き起こされる問題について広くコメントを呼びかけたことを受けて、SFWAは2023年10月30日に「AIツールがもたらすフィクション市場への損害と著作権への脅威の問題は、改めて議員や官僚に周知される必要があります」として、アメリカ著作権局に書簡を送りました。
SFWAの理事会は、「私たちのコミュニティ内で、AIと著作権の件に関して、幅広い意見があることは承知しています。その上で、議員や官僚に周知させると同時に、作家側にもAIが自分のキャリアに与える影響について知ってもらうように呼びかけています。AIが創造的な労働者の権利を尊重した方法で作成および利用されることを保証するための、正しいコンセンサスを得ることが目的です」と語っています。
SFWAの主張では、主に「フェアユースの観点で書籍の自由な共有が奨励されていた状況で、AIがこういった作家たちの寛大さを『悪用』している」ということを問題視しています。SFWAは海賊版の書籍がAIのトレーニングに使用されるべきではないことはもちろん、作家が自ら公開している書籍であっても、同じようにAIのトレーニングのため無制限に使用されてはいけないと述べています。
書簡の中では、「AIツールが研究や学術などの非営利目的でメンバーの著作物を使用しても、不快感を抱くことはありません。しかし、AIおよびトレーニングデータを商用ツールにするのは行き過ぎです。作家を含むクリエイティブな労働者がAIから恩恵を受けたり費用を支払われたりするどころか、むしろ執筆と出版のビジネスに損害を与えています」と指摘されています。結論として、AIの流行を「クリエイターと消費者の両方にとって潜在的に壊滅的なプロセスの始まりにすぎません」とSFWAは表現しました。
クリエイターを保護して将来の創作能力を維持するための「救済策」としてSFWAは4つの提案をしています。まず、AIによって作成された文章は、AIによるものだと誰でもわかるよう明示する必要があります。また、作品の一部がAIによって作成されたものでも、何%がAIによるものか明確化することをSFWAは求めています。3点目に、AIが生成した作品に著作権を認める前には、トレーニングデータに含まれる全てのライセンスまたは法的権利を証明しなくてはなりません。最後に、トレーニングデータに使用した作家からは暗黙の了解ではなく明示的な許可を得るべきであり、明確なライセンスなしにAIが作成した作品は常に著作権を侵害している物として扱われるべきとSFWAは主張しています。
書簡の末尾には、「SFとファンタジーの作家として、私たちは、AIシステムを世界にもたらした研究者たちの無限の創意工夫によって、私たちの権利を完全に尊重した研究を行う方法を見つけてくれると確信しています」と記されています。
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