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Amazonの衛星インターネット「Project Kuiper」が赤外線レーザーを使用し地上の光ファイバーケーブルより約30%高速なデータ通信技術の検証に成功


Amazonが開発中の衛星インターネット「Project Kuiper」が、プロトタイプ衛星を駆使して地球低軌道上で光メッシュネットワークを構築し、衛星インターネットでの100Gbpsという高速通信の実証に成功しています。

Amazon’s Project Kuiper completes successful test of space lasers
https://www.aboutamazon.com/news/innovation-at-amazon/amazon-project-kuiper-oisl-space-laser-december-2023-update


Project Kuiper's optical mesh network in low Earth orbit - YouTube


Amazonは2023年10月にProject Kuiperのプロトタイプ人工衛星2基を打ち上げて以来、エンドツーエンドの通信ペイロードとネットワークの大規模なテストを実施してきました。11月にはすべての優先システムとサブシステムの検証を行い、Project Kuiperネットワークのデモンストレーションを実施しています。そんなProject Kuiperにおける重要なシステムのひとつが、光衛星間リンク(OISL)機能です。


Project Kuiperのプロトタイプ衛星であるKuiperSat-1とKuiperSat-2には、高度な光通信ペイロードが含まれています。この光通信ペイロードを用いた複数回のデモンストレーションに成功したとAmazonは発表。Amazonによると、デモンストレーションでは約1000kmの距離で100Gbpsという高速通信のリンクを維持することに成功しています。テストでProject Kuiperの高度な通信アーキテクチャの最終コンポーネントが実証されたため、2024年前半に打ち上げが予定されているProject Kuiperの量産型衛星でもOISLが動作することが期待できます。

Project Kuiperを担当するAmazonの技術担当ヴァイスプレジデントのラジーブ・バディアル氏は、「Amazonの衛星群全体にわたるOISLにより、Project Kuiperは宇宙空間でメッシュネットワークとして効果的に動作します。このシステムは速度・コスト・信頼性を最適化するために完全に自社設計されたもので、アーキテクチャ全体が最初から完璧に機能しています。このような即効性のある結果は、Amazonが完全に統合されたシステム設計の一部としてOISLアーキテクチャの開発に取り組んだからこそ得られたものであり、顧客のために創意工夫を重ねるチームの意欲の証です。我々は初日からすべてのProject Kuiper衛星で次世代OISL機能をサポートできることに興奮しています」と語りました。


OISLは赤外線レーザーを使用して惑星を周回する衛星間でデータを相互通信できるようにするというもの。既存の衛星インターネットでは個々の衛星と地上のアンテナの間でデータを送信することに限定されますが、OISLでは衛星がコンステレーション内の他の衛星に直接データを送信することが可能となります。AmazonはすべてのProject Kuiper衛星に複数の光端末を搭載することで、一度に複数の衛星と接続し、宇宙に安全で復元力のあるメッシュネットワークを形成する高速レーザークロスリンクを確立することが可能となると説明しました。これらの機能によりコンステレーション全体でスループットが向上し、遅延が短縮されます。

OISLのもうひとつの利点は、データを世界中に送信できる速度にあります。光はガラスを通過するよりも空間内を通過する方が速く移動できるため、Project Kuiperの衛星インターネットは地上の光ファイバーケーブルを介して提供されるインターネット通信サービスよりも約30%速くデータの転送が可能となります。Project KuiperはAWSのサービスとインフラストラクチャーを活用してデータトラフィックをルーティングするため、ネットワーク全体の遅延をさらに短縮することが可能です。

OISLは地球低軌道(LEO)衛星のブロードバンド接続に対する長年の課題でした。レーザーリンクを確立して維持するには、光の広がりを最小限に抑えながら強力な信号を確保したり、最大2600kmの距離で通信を確立したり、最大時速2万5000kmという速度で移動する人工衛星同士の接続を維持したりする必要があります。人工衛星のダイナミクスを補正しながら、上記のすべてを達成する必要があります。今回のテストにより、Amazonはこれらの課題に対処できる最先端の光学系および制御システムの設計に成功したこととなるわけです。


Project Kuiper専門部門であるKuiper Government Solutionsでヴァイスプレジデントを務めるリッキー・フリーマン氏は、「Amazonの光メッシュネットワークは宇宙を介してデータをルーティングするための複数のパスを提供し、世界中で情報を安全に転送する必要がある顧客に回復力と冗長性をもたらします。これは傍受や妨害を受ける可能性のある通信アーキテクチャを回避したいと考えている企業にとって特に重要で、遠隔地から目的の宛先にデータを届けたいと考えている公共部門の顧客がこれらの機能を利用できるようになることを楽しみにしています」と語りました。

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in ネットサービス,   ハードウェア,   動画, Posted by logu_ii

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