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国連の気候変動関連会議の議長が温室効果ガス削減を目指しながら各国政府との会談では「化石燃料取引を促進するロビー活動」を行っていたことが内部告発により明らかに


アブダビ国営石油会社のCEOでありながらアラブ首長国連邦(UAE)で開催中の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で議長も務めるスルターン・アル・ジャーベル氏が、気候変動サミットに参加する各国政府に対して「化石燃料ビジネスを促進するためのロビー活動」を行っていたことが内部告発により明らかになりました。気候変動を抑制するための会議の議長でありながら、その立場を利用して気候変動の原因のひとつとされる化石燃料を販売していたため、多くの批判が集まっています。

COP28 president secretly used climate summit role to push oil trade with foreign government officials – Centre for Climate Reporting
https://climate-reporting.org/cop28-president-oil-climate/


Documents Show Plan for Leader of COP28 Climate Talks to Promote Fossil Fuels - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/11/28/climate/uae-cop28-documents-al-jaber.html

ジャーベル氏はアブダビ国営石油会社のCEOでありながら、COP28の議長も務めているという人物。COP28の議長に就任してから、ジャーベル氏には「アブダビ国営石油会社のCEOから辞任せよ」という声も投げかけられていたそうです。


そんなジャーベル氏は、COP28の議長としての立場を利用しながら、世界中の政府高官や王族、ビジネスリーダーらと多数の会談を行い、アブダビ国営石油会社の石油やガスの輸出量を増やすためのロビー活動を行っていたと、国際非営利組織(NPO)の調査報道機関である気候報道センター(CCR)が報じました。

CCRは、2023年7月から10月にかけてジャーベル氏が開催した会談のためにCOP28チームが作成した、150ページ以上の資料を入手したと報じています。CCRはBBCと協力して内部告発者から入手した資料の信頼性を検証しており、「我々の調査では、少なくとも一度は国家がジャーベル氏との会談で提起された商業的議論をフォローアップしたことが確認されています」と言及しています。また、内部告発者とは別の情報筋も、「アブダビ国営石油会社のビジネス上の利益が他国との会談中に話題に上がることがあった」と認めているそうです。

ただし、すべての国がジャーベル氏と化石燃料の輸出に関する話題に乗ったわけではないようで、「いくつかの国はCOP28関連の会談に先立って準備された会議の中で、ジャーベル氏と商業的利益について話し合うことを拒否しました」とCCRは報じています。


シェフィールド大学のマイケル・ジェイコブス教授は、ジャーベル氏の行動を「息をのむほど偽善的」と批判。続けて、「現在、UAEは世界の温室効果ガスの排出削減を目的として国連プロセスの管理者となっています。それにもかかわらず、その目標を追求しようとする会議の中で、世界の温室効果ガス排出量を増加させることにつながるような、付随的な取引を行おうとしています」とコメントしています。

CCRの問い合わせに対して、COP28は気候変動サミットに関する二国間会議を商談に利用していることを否定しませんでした。COP28の報道官は「スルターン博士(ジャーベル氏)はCOP28の議長としての役割に加え、多くの役職を兼務しています。これは広く知られていることです。私的な会合の内容は非公開であり、それについてコメントすることはできません」と述べています。

この他、COP28の政府担当ディレクターを務めるモハメド・アル・カービ氏について、内部告発者は「ジャーベル氏は、カービ氏がアブダビ国営石油会社で継続的な役割を担っているにもかかわらず、COP28の主要スタッフに加えた」と発言しています。CCRが問い合わせたところ、COP28の報道官はカービ氏について「ジャーベル氏のポートフォリオ全体に携わっている」ことを認めたそうです。なお、CCRが入手したメールや内部資料では、カービ氏だけでなく複数のCOP28スタッフがアブダビ国営石油会社の従業員と定期的に連絡を取り合っていることが確認されています。

なお、2014年にペルーのリマで開催されたCOP20で議長を務めたマヌエル・プルガー・ビダル氏は、「COP議長として国益や商業的利益を代表すべきではありません。世界をリードすることがあなたの仕事のはずです」とジャーベル氏を批判しました。

CCRは内部告発者から入手した資料の一部を公開しており、以下からチェックできます。


なお、ジャーベル氏はCOP28の議長として応じたインタビューの中で、「地球温暖化を1.5度以内に抑えるには化石燃料の段階的廃止が必要である」という主張に対して「科学的根拠は存在しない」と語ったことが波紋を呼んでいます

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in メモ, Posted by logu_ii

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