気候変動を食い止めるために個人ができる有効な取り組みとは?
近年では気候変動を食い止めるさまざまな対策の必要性が叫ばれていますが、「気候変動を食い止めるには企業や政府の力が必要で、個人にできることなんかない」と無力感を覚えている人もいるはず。そんな人に向けて、イギリス・リーズ大学の博士課程に在籍するマックス・キャラハン氏が「あなたにもできる有効な気候変動対策」を解説しています。
Here are the most effective things you can do to fight climate change
https://theconversation.com/here-are-the-most-effective-things-you-can-do-to-fight-climate-change-183555
地球温暖化による気温上昇を産業革命前のレベルと比較して1.5度以内に抑えるには、21世紀半ばまでにゼロ・エミッションを達成する必要があります。ゼロ・エミッションの達成には、生活全般を可能な限りクリーンにすることで炭素排出量を抑えつつ、大気中から炭素を積極的に除去することで避けられない炭素排出量を相殺し、年間の炭素排出量をほぼゼロにすることが求められています。
キャラハン氏は、ゼロ・エミッション達成までの時間を短縮するため、人々は化石燃料の使用を減らすためにできる限り努力する必要があるものの、多くの人は自分が何をしたらいいのかわからないと指摘。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新の報告書には、リーズ大学の研究に基づいた「個人が気候変動を抑えるためにやれること」が含まれているとのことで、キャラハン氏は以下のように内容をわかりやすく解説しています。
◆避けるべきこと
個人が炭素排出量を削減する上で最も効果的なのは、「できるだけ移動を避ける」ということです。キャラハン氏によると、車を使わない生活に切り替えることで削減できる二酸化炭素排出量は1人当たり年間平均2トンに達し、長距離の飛行機移動を避けることで年間平均1.9トンもの二酸化炭素排出量を減らすことが可能だとのこと。これは、EUにおける一般的な性能の車でドイツのハンブルクとモンゴルのウランバートルを往復する程度の二酸化炭素排出量に匹敵するそうです。
◆切り替えるべきこと
また、気候変動対策のために持続可能な生活を送ることは、何もかもを諦めることとイコールではありません。何かを別のものへ切り替えることでも、二酸化炭素排出量を大幅に削減することが可能です。たとえば、自家用車ではなく公共交通機関やウォーキング、サイクリングなどへ移動手段を切り替えることで二酸化炭素排出や大気汚染を減らすことができるほか、個人の健康にもメリットがあります。
同様に、肉や乳製品に関連する二酸化炭素排出が多いことから、より持続可能な食生活に切り替えることで食事による二酸化炭素排出量を削減できます。まったく肉や乳製品を食べないヴィーガン食は最も効果的といえますが、単に牛肉や羊肉といった特に二酸化炭素排出量の多い肉を、比較的排出量の少ない豚肉や鶏肉などに置き換えることも、二酸化炭素排出量の削減に役立つとのことです。
◆改善すべきこと
住居に断熱材やヒートポンプを設置してあまり温室効果ガスを排出しない方法で快適な室温を保ったり、ソーラーパネルを設置して再生可能エネルギーで発電したりすることも、家庭における炭素効率向上に役立ちます。また、自家用車を使わざるを得ない人であっても、ガソリン車からEV車に乗り換えることで二酸化炭素排出量を削減できます。
キャラハン氏は、野心的な気候変動対策の目標を実現するためには、少しでも多くの人々が気候変動問題に関心を持ち、二酸化炭素排出量の削減に取り組む必要があると指摘。それと同時に政治的な方面からも持続可能性の高い生活への切り替えを促進するべきであり、化石燃料エネルギーの使用に制限を設けたり、公共交通機関のや自転車専用レーンの整備を進めたりと、政治が人々の行動を変えるためにできることはたくさんあると主張しました。
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