サイエンス

「砂の雨が降る惑星」をNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見


サイズの割に非常に軽く、密度が小さいことから「わたあめ」に例えられることもあるガス惑星「WASP-107b」には、水滴ではなく砂粒が雨のように降ることが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測により判明しました。

SO2, silicate clouds, but no CH4 detected in a warm Neptune | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06849-0

James Webb Space Telescope detects water vapour, sulfur dioxide and sand clouds in the atmosphere of a nearby exoplanet - News
https://nieuws.kuleuven.be/en/content/2023/jwst-detects-water-vapour-sulfur-dioxide-sand-clouds

Planet where it rains sand revealed by Nasa telescope | Planets | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2023/nov/15/planet-where-it-rains-sand-revealed-by-nasa-telescope-wasp-107b

WASP-107bは、惑星が主星の前をかすめる時に光がさえぎられる現象を利用したトランジット法により2017年に発見された惑星で、地球からおとめ座の方向に約200光年離れた場所にあります。

木星に近い大きさでありながら重さは海王星程度で、既知の惑星としては最も密度が低いことから、WASP-107bは天文学者から「綿菓子惑星」というニックネームで呼ばれ、注目を集めてきました。

「本当にふんわりとしているので、絶好の観測ターゲットです。このようにふわふわした惑星の大気を見ると、たくさんのシグナルを得ることができます。私は10年間この星の姿の予想に取り組んできましたが、実際に観測するのには及びません」と、イギリス・オープン大学でジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測プロジェクトに取り組んでいるジョアンナ・バーストウ氏は語ります。

by Illustration: LUCA School of Arts, Belgium/ Klaas Verpoest (visuals), Johan Van Looveren (typography).

2023年11月に科学誌・「Nature」に掲載された新しい研究では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でWASP-107bの分厚い大気を通過した光を分析したことで、WASP-107bには砂の主成分であるケイ酸塩の雲と雨、荒れ狂う高温の嵐、水蒸気やマッチをこすった時の臭いである二酸化硫黄を含んだ大気の存在など、さまざまな知見が得られました。

特筆すべきは、WASP-107bが普通のガス惑星よりも密度が低くて「ふわふわ」な点です。これにより、天文学者たちは木星の50倍も深くWASP-107bの大気を分析することができました。雲はさまざまな惑星に存在していますが、他の惑星の雲の化学組成が詳細に特定されたのはこれが初めてとのことです。


WASP-107bの大気には、地球の水循環に似たサイクルがありますが、水ではなくケイ酸塩が個体、液体、気体として循環しています。まず、温度が1000度近くもあるWASP-107bの大気の下層からケイ酸塩の蒸気が立ちのぼると、冷却されて目に見えないほど微細な砂粒になります。そして、この砂煙の雲が十分に厚くなると大気の下層に砂の雨が降ります。このケイ酸塩がまた昇華して蒸気になることで、WASP-107bでの砂のサイクルが再び始まります。

分析では他にも、水が検出された一方でメタンは存在しないことなどがわかりました。メタンがないということは、惑星の内部が温暖である可能性を示唆しているとのことです。また、従来のモデルでは二酸化硫黄は生成されないと考えられていましたが、WASP-107bには二酸化硫黄が存在しました。研究チームは、WASP-107bの類を見ない「ふわふわな性質」により主星の光が惑星の奥深くまで届いて、そこで二酸化硫黄を発生させるのに十分な化学反応が起きるのだと推測しています。


ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主要なミッションは、地球から遠く離れた惑星の大気を分析して、生命の存在を示す「バイオシグネチャーガス」を見つけることですが、残念ながら高温で固体の地表もないWASP-107bは有望な候補とは見なされていません。

また、地球サイズの岩石惑星は大気があったとしても厚みがなく密度は高い傾向があるため、分析がより困難です。しかし、WASP-107bのような遠い惑星から詳細なデータが得られたことは、心強い前例でもあります。

論文の著者のひとりであるルーヴェン・カトリック大学天文学研究所のリーン・デシン氏は「宇宙は驚きでいっぱいで、別の惑星で生命が生まれるには、いろいろな方法があると私は想像しています。もしかしたら、地球上で知られているものとはまるで違うかもしれません。私たちは、もっと想像力を広げなければならないでしょう」と話しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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