サイエンス

880光年離れた巨大惑星は液体のルビーやサファイアが降り注ぐ星だった


地球からとも座の方向に約880光年離れたところに存在する惑星がWASP-121bです。WASP-121bは木星の約1.2倍の質量と1.8倍の半径を持ち、表面温度が約2000℃という灼熱(しゃくねつ)巨大ガス惑星であることが知られていましたが、マックス・プランク天文学研究所の研究チームにより、「金属の雲が浮かび、ルビーやサファイアの雨が降り注ぐ環境」である可能性が新たに示唆されました。

An exotic water cycle and metal clouds on the hot Jupiter WASP-121 b | Max Planck Institute for Astronomy
http://www.mpia.de/news/science/2022-05-wasp121b

This Extremely Extreme Exoplanet Has Metal Vapor Clouds And Rains Liquid Jewels
https://www.sciencealert.com/this-wild-planet-has-metal-clouds-and-rains-liquid-jewels

WASP-121bは、恒星WASP-121の回りを30時間の周期で公転しています。自転周期も公転周期とほぼ同じなので、WASP-121bの半面は常に恒星を向く昼半球で、もう半面は常に外を向く夜半球となります。今回研究チームはハッブル宇宙望遠鏡で、WASP-121bの昼半球と夜半球の両方でスペクトル解析を行い、その上層大気の組成を調査しました。

by Kevin Gill

調査の結果、WASP-121bでも水循環が確認されました。地球上では、川や海の水が蒸発して雲を形成し、雨が降り、川や雨に水が戻っていくという循環をみせます。しかし、WASP-121bにおける水循環は地球とは全く異なるそうです。

WASP-121bの昼半球では上層大気の温度が最大で3000℃を超え、水は蒸発するだけではなく、さらに水素と酸素に分解されます。一方で夜半球の上層気温は1500℃にまで下がります。昼半球と夜半球で1500℃も気温差が生まれることで、西から東へと強風が吹き抜け、水素と酸素を夜半球まで運びます。そして、夜半球側で水素と酸素が再結合して水蒸気となり、そのまま再び昼半球に吹き込むという循環です。

いずれにせよ、夜半球ですら気温が1500℃を超えるので、地球のように水の雲が作られることはありません。その代わり、WASP-121bには鉄やマグネシウム、クロム、バナジウムといった金属で構成される雲が浮かんでいるそうです。これら金属原子は水と同じように、昼半球で蒸発して強風によって夜半球に吹き運ばれ、凝縮して雲になるとのこと。そして金属雲は昼半球まで再び吹き運ばれ、蒸発するという流れ。

by Traveller_40

さらにスペクトル解析の結果、WASP-121bの大気中にはアルミニウムやチタンが検出されなかったことがわかりました。スペクトル解析はWASP-121bに反射した光の周波数を解析しているので、あくまでも上層部分についてしかわからず、地表付近は観測できません。このことから、研究チームはアルミニウムやチタンが凝縮し、地表に降り注いでしまったために検出されなかったのではないかと推測しました。

そしてアルミニウムは、大気中の酸素と凝結すると「コランダム」という鉱物になります。このコランダムにクロムや鉄、チタン、バナジウムなどの不純物が含まれるとルビーやサファイアになるため、研究チームは液体のルビーやサファイアがWASP-121bの夜半球に雨となって降り注いでる可能性があると指摘しています。

研究チームの一人でオープン大学のジョアンナ・バーストウ氏によると、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも、WASP-121bの研究を引き続き行っていく予定だとのこと。バーストウ氏は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡により、ハッブル宇宙望遠鏡の観測範囲を超える波長をカバーすることで、WASP-121bの大気中の炭素量を測定することができ、WASP-121bがどこでどのようにして形成されたのかを知る手がかりになります。また、大気中のさまざまな高度での風速を知るための精度の高い測定も可能になります」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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