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AIを軍事活用し「自律型無人機の運用」「宇宙空間の脅威監視」「航空機や兵士のメンテナンス」などをアメリカ国防総省が目指す


自動車や翻訳サービス、クレジットカードの不正使用検知などさまざまな分野でAIを活用したシステムの導入が進む中、「AIの軍事活用」にも大きな注目が集まっています。アメリカ国防総省(ペンタゴン)もAIの導入を積極的に推し進めており、その野心的な計画や課題について海外メディアのAP通信が報じました。

Pentagon’s AI initiatives accelerate decisions on lethal autonomous weapons | AP News
https://apnews.com/article/us-military-ai-projects-0773b4937801e7a0573f44b57a9a5942


アメリカ国防総省は2023年8月、比較的安価で消耗品のAI対応自立型無人機を2026年までに数千台配備する「Replicator(レプリケーター)」というイニシアチブを発表しました。この野心的なイニシアチブについて国防副長官のキャスリーン・ヒックス氏は、「私たちはアメリカ軍の技術革新が遅々として進まない中、小型かつスマートで、安価で、多くの機能を備えたプラットフォームを活用する方向への転換を活性化することを目指しています」と述べています。

近年は多くの国や地域、テロ組織が殺傷力を持った無人機(ドローン)の配備を進めており、科学者や軍事関係者の中では、アメリカ軍が今後数年以内に完全自立型の致死的兵器を保有することはほぼ確実視されています。また、当局は「無人機は常に人間がコントロールする」と主張しているものの、データ処理速度や無人機間通信の進歩により、いずれ人間が監督的な立場に追いやられることも予想されています。


レプリケーターの資金調達は不確実であり、その詳細についても記事作成時点では曖昧なことしかわかっていません。しかし、アメリカ国防総省のポートフォリオには800以上のAI関連プロジェクトが存在し、その多くがテスト中だとのこと。ジョージ・メイソン大学のロボット工学センター所長で元海軍戦闘機パイロットのミッシー・カミングス氏は、「現時点で国防総省に導入されているAIは、非常によく活用され、人間の能力を増幅させています」「AIが勝手に走り回ることはありません。人々は戦争の霧をよく理解するためにAIを使っています」と述べています。

AP通信が挙げた「アメリカ国防総省がAIを軍事利用している事例」が以下の通り。

◆宇宙空間の監視
AI支援ツールが軍事活用されている領域のひとつが、軍事競争における最前線である宇宙空間です。中国は人工衛星やAIを活用して敵と味方を判別する仕組みを構想しており、アメリカ宇宙軍もこれに歩調を合わせて「Machina(マキナ)」という監視システムのプロトタイプを開発しています。マキナはグローバルな望遠鏡ネットワークで毎晩数千ものデータを収集・調整し、宇宙空間にある4万以上の物体を自律的に監視しているとのこと。

マキナのアルゴリズムは望遠鏡のセンサーを武器化するものであり、コンピュータービジョンと大規模言語モデルが追跡するオブジェクトを教えてくれるほか、天体物理学のデータセットを利用することも可能だとされています。また、アメリカ宇宙軍が進める別のAIプロジェクトでは、レーダーデータを分析して敵のミサイル発射を検知しているそうです。

◆航空機および兵士のメンテナンス
アメリカ空軍は戦略爆撃機B-1や多目的ヘリUH-60を含む2600機以上の航空機をメンテナンスするべき時期を、AIを使用して予測しているとのこと。機械学習モデルは障害が発生する数十時間前に潜在的な障害を特定すると、アメリカ空軍と契約を結ぶC3 AIのトム・シーベルCEOは説明しています。

また、AIを活用したパイロットプログラムとして、アメリカ陸軍第3歩兵師団に所属する1万3000人以上の兵士の健康状態を追跡するプログラムがあります。兵士の健康状態を追跡することにより、ケガの減少やパフォーマンスの向上が期待できるとのことです。


◆ウクライナ支援
ロシアによる侵略に抵抗しているウクライナでは、アメリカ国防総省やNATO同盟国が提供するAIが役立てられているとのこと。同盟国は人工衛星や無人機、人間が収集したデータを共有しており、一部のデータはアメリカ国防総省傘下の国家地理空間情報局が運用するAIプロジェクト「Maven」に由来するそうです。

MavenはISISやアルカイダと戦うアメリカの特殊作戦部隊を支援するため、中東で展開するドローンが撮影した動画を分析する取り組みとして2017年にスタートしました。記事作成時点ではドローンに限らず、さまざまなセンサーおよび人が収集したデータを集約し、分析しているとのこと。

◆統合全領域指揮統制
近年の戦場では敵の行動を補足するセンサーが指数関数的に増加しているため、前線部隊は目立たず迅速に移動することが求められます。そのため、アメリカ国防総省は全兵士を迅速に連携させるため、あらゆる軍事データを自動処理して戦闘ネットワークを構築する統合全領域指揮統制というシステムに取り組んでいます。

また、アメリカ国防総省は「人間と機械のチーム化」にも積極的に取り組んでおり、無人航空機による監視や無人ドローンの活用などを進めています。さらにアメリカ空軍は、有人航空機と自立型航空機を組み合わせたシステムを考案しており、2020年代後半には航空機パイロットが無人機を展開する「loyal wingman(忠実な僚機)」プログラムの展開を目指しているとのことです。


AIの軍事活用において懸念されるのが、「自律型兵器が期待されていたようには機能せず、非戦闘員や友軍を攻撃してしまうのではないか」という点です。これに対してアメリカ国防総省で最高デジタル・AI責任者を務めるクレイグ・マーテル氏は、「システムの自律性に関係なく、システムの限界を理解して十分な訓練を受け、いつどこで展開可能かについて自信を持って判断できる責任あるエージェントが常に存在します」と述べ、こうした問題は起こらないと主張しています。

また、AP通信は「AI革命が戦争を変革することが約束されている中、レプリケーターは国防総省の調達および開発における膨大な技術的・人的課題を強調しています」と指摘しています。博士号を持つ優秀なAI開発者は一般企業で軍の将軍や提督よりも多くの収入を得ることができるため、アメリカ国防総省は人材獲得に苦戦していると、AP通信は報じました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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