「惑星の間をバウンドするように動く彗星」が生命の起源を運んだ可能性
地球における生命の起源については謎だらけで、一説には彗星(すいせい)が生命の基礎となる有機物を運んできたのではないかといわれています。しかし、彗星はとてつもない速度で移動しているため、通常であれば熱や衝突の衝撃により有機物は破壊されてしまいます。彗星が有機物を運んだと仮定して、一体どのように運んできたのかを調べた研究により、彗星がバウンドするように移動していた可能性が示されました。
Can comets deliver prebiotic molecules to rocky exoplanets? | Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspa.2023.0434
‘Bouncing’ comets could deliver building bloc | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1007668?
'Bouncing' comets may be able to spread life throughout the universe | Space
https://www.space.com/comets-bouncing-seed-life-on-exoplanets
ここ数十年、科学者たちは彗星が生命の誕生につながった可能性についての知見を広げつつあります。例えば2009年にNASAのスターダスト・ミッションでヴィルト第2彗星から回収されたサンプルには、アミノ酸の一種でタンパク質の構成要素であるグリシンが含まれていました。欧州宇宙機関のロゼッタ・ミッションでも、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の大気中に有機化合物があることが判明しています。
しかし、これらの有機化合物は惑星との衝突時に破壊される可能性があるため、彗星起源説を立証するには、有機化合物が無傷で生き残るというシナリオを確立させなければなりません。
そこでケンブリッジ大学天文学研究所のリチャード・アンスロー氏らがシミュレーションを行ったところ、彗星が秒速15km以下という比較的ゆっくりなスピードで動いた場合、有機物の伝播が可能であることが判明します。
彗星は惑星の引力などによって速度を低下させますが、秒速15km以下にまで減速するには、惑星の引力に引っ張られ、衝突する前に別の惑星の引力に引っ張られといったことを繰り返す必要があります。こうして惑星間をバウンドするように移動した場合、有機化合物を保ちつつ、惑星への大気圏突入が可能になるそうです。
研究チームは彗星の軌道を示せるモデルも開発していて、太陽系外惑星で生命を宿す惑星の探索に役立てる予定。アンスロー氏は「彗星が複雑な分子を運べるかどうかを確かめたかったのです。地球に生命が誕生するきっかけとなった分子は彗星からもたらされた可能性があり、同じことが銀河系の他の惑星にも当てはまる可能性があります」と述べました。
・関連記事
いまだに論争が続いている未確認の「地球外生命体の証拠」5選 - GIGAZINE
史上初の太陽系外から飛来した恒星間天体で地球外生命体の宇宙船説まで飛び出した「オウムアムア」の不自然に長細い形状の理由が判明 - GIGAZINE
「地球外生命は存在するのか?」というテーマを宇宙生物学と宇宙論の専門家が「地球という奇跡」を交えて語る - GIGAZINE
・関連コンテンツ