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YouTubeのアンチ広告ブロッカーはなぜ「プライバシー規則違反」と主張されているのか?


YouTubeが2023年10月ごろから本格的に開始した広告ブロッカーの規制に対し、複数のプライバシー活動家や政治家がプライバシー侵害であるとの声を上げています。このYouTubeの「アンチ広告ブロッカー」が、EUのeプライバシー指令に抵触しているとの主張の根拠や今後の展開について、IT系ニュースサイトのThe Vergeがまとめました。

YouTube’s ad blocking crackdown is facing a new challenge: privacy laws - The Verge
https://www.theverge.com/2023/11/7/23950513/youtube-ad-blocker-crackdown-privacy-advocates-eu

広告と広告ブロッカーの戦いは新しいものではありませんが、YouTubeが2023年に広告ブロッカーを阻止するための「世界的な取り組み」を開始したことで、この話題への関心が再燃しました。


海外メディア・Wiredのレポートによると、インターネットユーザーはYouTubeの規制に影響されない広告ブロッカーを見つけるため、記録的なペースで広告ブロッカーをインストールしたり、アンインストールしたりしているとのこと。一方、YouTubeは「広告ブロッカーはYouTubeの利用規約に違反し、クリエイターが広告収入を得るのを妨げている」と主張しています。

YouTubeの反広告ブロッカーの動向に対し、一部の専門家は具体的な行動を開始しています。プライバシー活動家のアレキサンダー・ハンフ氏は2023年10月に、YouTubeの広告ブロッカー検出スクリプトがユーザーの同意を得ずに動作している点がEUのeプライバシー指令に違反しているとして、Googleが欧州拠点を構えるアイルランドのデータ保護当局に申し立てを行いました。

YouTubeによる広告ブロッカー検出スクリプトはユーザーの同意を得ずに動作しておりEUの指令違反だと活動家が主張 - GIGAZINE


YouTubeでは、ページに何が表示されるのかをチェックするJavaScriptか、広告を読み込むために必要な要素がブロックされているかどうかの判別により、広告ブロッカーを検出するようになっています。

これについて、ハンフ氏はThe Vergeに対し、「AdBlock検出スクリプトはスパイウェアとしか表現できず、同意もなくこれを導入することは容認できません。私は、私のデバイスをスパイするために使用することができる技術の使用は、ほとんどの状況で非倫理的かつ違法であると考えています」と述べました。

実は、ハンフ氏がアンチ広告ブロッカーについて当局に申し立てをしたのは、今回が初めてではありません。ハンフ氏は2016年にも、広告ブロッカーを検出する技術について欧州委員会に訴えています。

eプライバシー指令は、特にCookieにアクセスする際にユーザーに同意を求めることを規定していることから「Cookie法」と呼ばれています。

ハンフ氏の訴えを受けて、欧州委員会は、「明確な説明なくユーザーデータにアクセスすることを禁止するeプライバシー指令の第5条第3項は、ユーザーが広告ブロッカーをインストールしているかを検出するスクリプトにも適用される」として、Cookieだけでなく広告ブロッカー規制もeプライバシー指令の対象であるとの見解を示しました。


とはいえ、その後の展開は思わしくありません。欧州委員会はその後、2017年の個人情報保護法改正案で「ウェブサイトのプロバイダーはユーザーの承認なしに広告ブロッカーを使用しているかどうかをチェックできるようにするべきだ」と述べて、立場を翻しています。

ハンフ氏は「広告ブロッカー検出スクリプトは、eプライバシー指令以外にも、世界人権宣言などの条項で定められた基本的人権を侵害している」と考えており、アイルランドデータ保護委員会(DPC)もそのことに同意しているとThe Vergeに話しています。しかし、DPCはThe Vergeのコメントの要請に応じませんでした。

YouTubeの広告ブロッカー規制に反対しているのはハンフ氏だけではありません。ドイツ海賊党に所属するデジタル権利活動家で欧州議会議員でもあるパトリック・ブライヤー氏はSNSで、「YouTubeはアンチ広告ブロッカーの壁で、私たちを監視広告とトラッキングに追い込もうとしています」と述べて、ハンフ氏に賛意を表明しています。


こうした意見に対し、YouTubeの広報担当者であるクリストファー・ロートン氏は、The Vergeの以前の問い合わせに対する回答を繰り返して、「YouTubeは広告ブロッカーを規制する『世界的な取り組み』を開始しました」と述べました。また、ロートン氏は「もちろん、DPCからの問い合わせには全面的に協力します」と付け加えました。

記事作成時点では、YouTubeの広告ブロッカー規制に対するEU当局の姿勢は不透明ですが、ハンフ氏は一歩も引かない構えです。「YouTubeが私たちのデバイスにスパイウェアを導入しても問題ないと言い続けるなら、私は彼らを倒すつもりです」とハンフ氏は述べました。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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