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AIが数学の難問を解く現状について数学者が「建設的に関わっていく方法が見いだせない」と語る


存命する数学者の中で世界最高峰のひとりと評されるテレンス・タオ氏は、現在、ほとんど数学に取り組めていないそうです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で開かれた数学のワークショップに出席したタオ氏は、AIが数学界にもたらした存続の危機について「今は臨戦態勢です」と語りました。

Terry Tao Is on the Front Lines of the Debate Over AI and the Future of Math - The New York Times
https://www.nytimes.com/2026/10/16/us/math-ai-terence-tao.html

AI企業のOpenAIは、これまでに80年近く未解決だった数学予想の反証に成功したり、数学・理論計算機科学の課題で新成果を上げたと報告したりしています。2026年10月には、722本の未解決問題に関する数学的成果を発表。これらの成果の中には、ミレニアム懸賞問題のひとつとして知られる「ナビエ–ストークス方程式」も含まれていました。

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このような状況について、タオ氏は「もうルールなんてありません」「1年前なら、唖然としていたような出来事にも、もう何も感じなくなっています。いつか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が一気に押し寄せてくるかもしれません」とThe New York Timesに語っています。

タオ氏は「自分のようなベテラン研究者は、研究者としての道を歩み始めたばかりの研究者ほどAIに仕事を脅かされていない」と言及。それでも、数学界はタオ氏に答えを求めており、タオ氏も非公式な数学界の代弁者となってしまったことを受け入れ、その役割に多くの時間を費やすようになっていると語っています。


実際、タオ氏はAI時代における数学研究の新たな方向性として、「Math 2.0」を提言し、研究の目的や評価基準を見直す必要性を力説しています。

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そんなタオ氏によると、つい最近まで同氏の役割は「ゆっくり進む高度な数学界」と「猛烈なスピードで進歩するAI界」の橋渡し役だったそうです。計算の実行やコードの作成、膨大な文献の検索、アイデア出しの補助などにAIを利用し、2023年からはOpenAIのAIモデルも利用してきたと語っています。それまで、タオ氏は「人間とAIの長所を活かす」ため、熱心にAIを支持してきたそうです。

しかし、OpenAIのAIが数学の難問を次々に解決するようになり、状況は変化しました。これについて、タオ氏は「つい1年前まで、OpenAIの多くの従業員とはかなり良い関係にありました。私が交流していた人たちの多くは、AIをどう使うべきかについて、非常によく似たビジョンを共有していました。つまり、科学者の力を高めるために使うということです。しかし、OpenAIは自分たちに必要なこと、つまりAIモデルの評価のために数学を利用するようになってしまいました。そのため、現時点では彼らと建設的に関わっていく方法が見いだせません」と語っています。

タオ氏はAIが数学の難問を次々と説いていく現状について、「映画のネタバレやクロスワードのヒントを、一度聞いたら聞かなかったことにはできないのと同じように、既存の解答を知ってしまうと、その問題を以前と同じほど実り豊かに、奥深く探究することはできなくなります。AIを開発する狂騒の中で、選ばれなかった道や失われた機会を惜しんでいます」と語りました。

ハーバード大学の数学者グループが作成した報告書でも、AIの進歩と数学界の未来について、「今後数年間、深い不確実性が続くでしょう」と語っています。同報告書はAIについて「胸躍る新しい可能性」と表現しながらも、問題を解く知的な冒険に引かれて数学の道を選んだ人々の喪失感がにじんでいるとThe New York Timesは指摘。

そんな状況下で、タオ氏はコミュニティの組織化に多くの時間を費やしています。具体的な活動内容は、数学者を集め、対応策を練り、メディアの取材に応じ、AIについて講演し、相談に乗るといったもの。「助けを求めて叫んでいる人がいるんです」「私には余裕がなくて助けられませんが、その人が相談できる別の誰かを見つけることはできます」と語りました。

なお、タオ氏がOpenAIと協力関係を築くきっかけとなったのは、ドナルド・トランプ大統領によりアメリカの各大学への研究助成金の多くがカットされたことにあります。

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研究助成金のカットにより、タオ氏が責任者を務める純粋・応用数学研究所は存続の危機に陥ったそうです。その時、資金調達の一環としてタオ氏がコンタクトを取ったのが、OpenAIでした。OpenAIは純粋・応用数学研究所への協賛に合意し、6万~7万ドル(約950万~1100万円)の資金を提供。これに伴い、タオ氏はOpenAIによる1時間のインタビューに応じ、AIの利点と欠点について語りました。

タオ氏はこのインタビュー動画が全編公開されると考えていたそうですが、実際にはわずか1分に編集され、公開されたそうです。この動画の中で、タオ氏は「(AIが)本格的に活用できる段階に来ていると思います」と語っていました。タオ氏はこの動画の利用を許可したものの、内容に「もっと強く異議を唱えるべきだった」とブログに記しています。

ただし、タオ氏は数学界の未来について、「数学の最先端分野における問題のほとんどは未解決なままで、数学は無限であり、問題の難度は際限がありません」と言及。AIによって数学者は膨大な量のデータを収集できるようになったため、これまで想像もできなかったようなプロジェクトで、ますます大規模なグループで協力して研究に取り組むようになるだろうと語りました。

それでもタオ氏と数学者を志す学生との面談は「技術的な指導というよりも、ますますセラピーのセッションのようになりつつある」そうです。タオ氏は1つの問題を単独で解決するのではなく、AIを使って10個の問題を解決し、新たなパターンやさらに多くの疑問点を見出すよう学生たちにアドバイスしていると語りました。

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in AI, Posted by logu_ii

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