サイエンス

カフェイン断ちをするとどんなメリットがあるのか?


コーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは世界で最も広く使われている精神活性化合物です。成人はカフェイン摂取量を1日あたり400mg以下(コーヒー約4杯以下)に抑えることが推奨されており、摂取量が多すぎると筋肉の震えや吐き気、頭痛、心拍数の増加などが引き起こされる可能性があるとのこと。近年ではカフェインの悪影響を懸念して「カフェイン断ち」をする人も増えていますが、実際にカフェイン断ちをするとどのようなメリットがあるのかについて、イギリス・ランカスター大学の解剖学教授であるアダム・テイラー氏が解説しています。

Caffeine: here’s how quitting can benefit your health
https://theconversation.com/caffeine-heres-how-quitting-can-benefit-your-health-220746


◆脳機能や精神への悪影響が減る
カフェイン断ちをすると、一時的に疲労や頭痛が増すことがありますが、これは体にカフェインへの耐性がついたためだとのこと。カフェインは体内のアデノシンという物質の受容体に結合し、本来アデノシンが受容体と結合した際に生じる疲労感を遅らせる効果を持ちます。ところが、体はこれに対応してより多くのアデノシン受容体を産生するようになるため、カフェイン摂取をやめるとアデノシン受容体が過剰になり、以前よりも疲労感を強く感じることがあるそうです。

また、カフェインが持つ脳血管収縮作用は脳に流れ込む血流を減少させ、一時的に痛みを軽減する効果があります。ところが、カフェイン摂取をやめると24時間以内に血管が正常に戻り脳への血流が増加することで頭痛が引き起こされてしまうそうで、最大9日間にわたり頭痛が持続することもあるとテイラー氏は指摘しています。さらに、アデノシン受容体も痛みの調節に関わっているため、カフェインを断ってアデノシン受容体が多くなると、痛みの知覚が一時的に上昇する可能性もあるとのこと。

多くの人はカフェインと聞くと「眠気が覚める」という効果を連想するはずです。確かにカフェインは睡眠を調節するメラトニンの分泌を遅らせるため、一時的に眠気を軽減することができますが、これは全体的な睡眠時間や深い睡眠の短縮を引き起こし、結果として翌日の疲労感は増えてしまうとテイラー氏は述べています。カフェインで眠気を遅らせた結果翌日の疲労感が増し、その眠気を再びカフェインで飛ばすサイクルにつながると、睡眠障害が引き起こされる可能性もあるそうです。そのため、カフェインを断つと睡眠が改善されることがあり、早ければわずか12時間で改善がみられるという研究結果もあります。

さらに、カフェインは不安障害やパニック障害の増加にも関連しており、カフェインを減らしたり完全に断ったりすると、気分が改善する可能性があるとのこと。これは睡眠不足が改善されたのが理由と考えられるほか、カフェインが結合するアデノシン受容体がストレス幸福恐怖に関するその他の神経伝達物質の調節にも関与しているからかもしれないと、テイラー氏は述べました。


◆胸焼けや心血管系に変化が生じる
カフェインは胃酸の分泌を誘発し、胃の内容物が食道に逆流しないようにしている食道括約筋を緩めるため、カフェインを摂取しすぎると胸焼けや消化不良を起こすことがあります。そのため、カフェイン断ちをすることで胸焼けや消化不良が治る場合があるとのこと。

また、カフェインを長年摂取し続けると神経系や心臓がカフェインの刺激作用に適応するので、カフェイン断ちによって血圧心拍数が下がる可能性もあるとテイラー氏は述べています。

◆歯の白さや味覚が改善される
カフェインを含むコーヒーや紅茶には、歯が黄ばむ原因になるタンニンなどの化合物が含まれているため、意識的にカフェインを控えようとすると歯が白くなる可能性があります。また、エナジードリンクなどに含まれる砂糖の摂取量も減るため、歯の健康状態の改善につながる上に、カフェイン入りの飲み物が歯を守る唾液の分泌量を減らす可能性も示唆されています

◆トイレに行く回数が減る
カフェインは膀胱(ぼうこう)を刺激して尿意を引き起こしたり、腎臓のアデノシン受容体に結合することで水分の貯留に影響を与えたりして、軽度の利尿薬としても作用します。また、カフェインが腸を収縮させて便意を生じさせることも指摘されており、カフェイン摂取を控えることでトイレに行く回数が減る可能性があるとのことです。


この世に存在する多くの食品や栄養素と同様に、カフェイン摂取は節度のある量に抑えることが重要です。しかし、いきなりカフェインを完全に抜くと頭痛や倦怠(けんたい)感などの副作用が2~3週間続くことがあるため、徐々に1日あたりの摂取量を減らすのがオススメだとのこと。テイラー氏は、「カフェイン断ちによる副作用がどれほど重く、長く続くのかは、1日に摂取したカフェインの量や習慣が続いた期間に左右されます」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
カフェインを過剰に摂取するとどうなってしまうのか? - GIGAZINE

「コーヒー200杯分のカフェイン」を誤って摂取した男性が死亡してしまう - GIGAZINE

カフェインは世界一のドラッグ、継続的な摂取により中毒症状や健康被害を引き起こす可能性大 - GIGAZINE

コーヒー中毒者がコーヒーをやめて分かった「コーヒーのメリット/デメリット」とは? - GIGAZINE

カフェインを摂取する代わりに「軽い有酸素運動」をすることでワーキングメモリをブーストできるとの研究結果 - GIGAZINE

コーヒーを飲んでいないときに起きる頭痛は「カフェイン切れ」の可能性アリ - GIGAZINE

カフェインは眠気を取り除くだけでなく「認知能力への悪影響」を減らすと判明 - GIGAZINE

カフェインは頭痛を治すこともあれば頭痛の原因にもなる「両刃の剣」と専門家、そのメカニズムとは? - GIGAZINE

in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.