サイエンス

ネコを太らせると体にどのような変化を引き起こしてしまうのか?


ネコは空腹からおう吐することがあるため、置きエサをしたり頻繁にエサを与えたりしてしまい、気がついたらネコがでっぷり太っていたという経験がある人もいるはず。新たにアメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、「ネコにエサを与えすぎると単に肥満になるだけでなく、食物の消化率や腸内細菌叢(そう)にも変化が現れる」という研究結果を発表しました。

Effects of overfeeding on the digestive efficiency, voluntary physical activity levels, and fecal characteristics and microbiota of adult cats | Journal of Animal Science | Oxford Academic
https://academic.oup.com/jas/article-abstract/doi/10.1093/jas/skad338/7285936


What happens when cats get fat? Scientists weigh in | College of Agricultural, Consumer and Environmental Sciences | UIUC
https://aces.illinois.edu/news/what-happens-when-cats-get-fat-scientists-weigh

Overfeeding Cats Produces Changes Inside Them We Never Knew About : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/overfeeding-cats-produces-changes-inside-them-we-never-knew-about

飼い主はネコに対して深い愛情を注ぎますが、それが結果として「エサの与えすぎ」につながってしまうことがあります。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で動物科学の教授を務めるケリー・スワンソン氏は、「アメリカのネコの約60%は太りすぎで、糖尿病や慢性炎症といった健康上の問題が引き起こされる可能性があります。ネコの体重減少については多くの研究が行われていますが、重要であるネコの体重増加についてはほとんど焦点が当たっていません」と述べ、体重増加がネコの体にもたらす変化について研究を行いました。

研究には避妊手術を受けた11匹の「痩せたメスのネコ」が用いられ、まずは2週間にわたり標準的な量のドライキャットフードを与え、ベースラインとなる健康状態を測定しました。その後、ネコに対して18週間にわたりエサを無制限に与え、好きなだけ食べることを許可したとのこと。

研究チームは、ベースライン測定時とエサを食べ放題にしてから6週間後/12週間後/18週間後に糞便と血液サンプルを採集しました。また、首輪に取り付けたモニターを介して、ネコの身体活動がどのように変化したのかも調べたと報告されています。


実験の結果、エサが食べ放題になるとネコはすぐに食物摂取量を大幅に増やし、当然ながら体重は増加し始めました。イヌやネコの体形を示すボディ・コンディション・スコア(BCS)は、ベースライン測定時は9点満点中「5.41」でしたが、食べ放題になってから18週間後には9点満点中「8.27」となり、なんと30%も適正体重をオーバーしてしまいました。

また、体重と体脂肪の増加に伴って、ネコが栄養素を消化する能力が低下しました。スワンソン氏は、「体が摂取する食物が少なくなると、栄養素の抽出効率が高まります。しかし、食物の量が増えると、消化器系を通過するのが速くなり、その過程で抽出される栄養素が少なくなります」と説明しています。


ネコの腸内細菌叢も、ベースライン測定時と食べ放題になってから18週間後では大きく変化しました。肥満化したネコでは抗菌活性や病原体の阻害作用、免疫系の刺激作用などを持つビフィズス菌の量が相対的に増加した一方、食物繊維の分解や炎症促進性疾患と関連するコリンセラ菌の量は減少したと報告されています。この結果は肥満の人間において観察されたものとは逆であり、体重増加と腸内細菌叢の関連が複雑なことを示唆しているとのこと。

ネコがエサを食べる量が増えるにつれて排せつする糞便の量も増加し、それと同時に糞便の水素イオン指数(pH)は低下してより酸性になったそうです。スワンソン氏は、「人間の場合だと糞便のpHが低いということは、炭水化物と脂肪の吸収が低下していることを示しています。糞便のpH低下は食物摂取量の増加および消化率の低下と一致するため、私たちの発見はこれと相関しています」と述べました。

一方で、研究チームはネコが肥満になるにつれ身体活動が減少すると予想していたものの、活動レベルに一貫した変化はみられませんでした。スワンソン氏は、ネコの活動量はそれぞれのネコの性質や環境、飼い主との相互作用などによって異なる可能性があると指摘しています。


研究チームは、ペットの体重増加や肥満に伴って起こる代謝や胃腸の変化を理解することが、将来の疾患予防や治療計画に役立つ可能性があると結論づけています。

もし飼っているネコを減量させたい場合、飼い主は食事制限を行ったり、ネコに運動をするように促したりすることで、ダイエットさせることが可能です。今回の体重増加に関する研究に参加した11匹のネコも、研究が終了すると再び食事量を制限され、ベースライン測定時と同程度まで体重を減らすことができたそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「ネコは進化的に完璧」と進化生物学者が熱弁 - GIGAZINE

なぜネコは箱の中が大好きなのか? - GIGAZINE

ネコがのどを「ゴロゴロ」鳴らす仕組みがついに明らかに - GIGAZINE

猫を飼うことで人の感情や健康に影響する「腸内細菌叢」はどう変化するのか? - GIGAZINE

猫は甘味をほぼまったく感じない - GIGAZINE

猫は276種もの多様な表情を持っていることが猫カフェで暮らす猫を観察した研究で判明 - GIGAZINE

「ネコは飼い主を愛しているのか?」という問いに対する専門家の回答 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article What changes will happen to a cat's ….