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マツダがスマートカー機能のオープンソースソフトウェアとの統合を突如削除


日本の自動車メーカーであるマツダは、スマートカー機能のコネクティッドサービスを提供しており、これはオープンソースのホームオートメーションソフトウェアである「Home Assistant」と統合されていました。しかし、突如この統合が削除されたため、一部の開発者から疑問の声が上がっています。

Mazda Slaps Developer With Cease-and-Desist for DIY Smart Home Integration
https://www.thedrive.com/news/mazda-slaps-developer-with-cease-and-desist-for-diy-smart-home-integration


Mazda’s DMCA takedown kills a hobbyist’s smart car API tool | Ars Technica
https://arstechnica.com/cars/2023/10/mazdas-dmca-takedown-kills-a-hobbyists-smart-car-api-tool/

オープンソースの「Home Assistant」は、1000を超えるデバイスやサービスとの統合を可能にするホームオートメーション用ソフトウェアです。対応サービスにはマツダのコネクティッドサービスも含まれており、これを利用することで一部のマツダ車オーナーは、「朝の出発前にガソリンの残量をチェックする」「雨が予報される日には窓が閉まっているかどうかを警告する」「寒い日には遠隔操作でエンジンを始動しておく」など、さまざまな自動化を行っていました。オープンソースのHome Assistantを使えば、マツダの公式アプリが提供する以上のことが可能になっていたと海外メディアのArs Technicaは指摘しています。


しかし、2023年10月11日にHome Assistantが公式ブログを更新し、同ソフトウェアとマツダのコネクティッドサービスの統合機能を削除することを発表しました。Home Assistantとマツダのコネクティッドサービスを統合するためのライブラリを開発していたソフトウェアエンジニアのブランドン・ロスワイラー氏が、マツダから各種ライブラリに対してデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく削除通知を受け取ったことが、統合機能削除の理由です。

Removal of Mazda Connected Services integration - Blog - Home Assistant Community
https://community.home-assistant.io/t/removal-of-mazda-connected-services-integration/625885


ロスワイラー氏はマツダのコネクティッドサービスとHome Assistantを統合するために、複数のライブラリを開発していますが、このうち「pymazda」「node-mymazda」「mazda-mobile-start」といったライブラリが、マツダの独自アプリである「MyMazda」(iOS/Android)のソースコードを利用しており、これが著作権侵害に当たると指摘されています。このDMCA削除通知を受け、ロスワイラー氏はpymazda、node-mymazda、mazda-mobile-startのGitHubリポジトリを削除しました。


さらに、マツダはMyMazdaの最新バージョンを2023年10月12日にリリースしており、同バージョンからはマツダのコネクティッドサービスとHome Assistantの統合機能が削除されています。

この対応について、Home Assistantは「マツダがこの方針を決めたことに失望しています。また、マツダが最初にとった手段が、我々のメンテナンス担当に連絡することではなく、DMCA削除通知を送信することであったことも残念です」と述べました。

Home Assistantの開発に携わっているエンジニアのニック・コストン氏は、マツダのDMCA削除通知について「通知で参照されているPyPIパッケージ内に著作権で保護されたコードは見つからなかったので、どのコードが著作権を侵害しているのかわかりません」と指摘。別の開発者からは「DMCA削除通知を受けたライブラリはPythonやJava Scriptで書かれているため、MyMazdaのコードをコピーして利用している可能性は低い」という指摘もあります。


ただし、電子フロンティア財団のリバースエンジニアリングに関するFAQを参照すると、「MyMazdaの詳細をHome Assistantに公開するなどの相互運用のためのリバースエンジニアリングは、DMCAにおけるフェアユースの範疇から外れる可能性がある」とArs Technicaは指摘。

Home Assistantは同ソフトウェアを使って各種サービスと接続しているユーザーの数を公式サイト上で公開しています。これによると、マツダのコネクティッドサービスとHome Assistantの統合が削除される前の段階で、Home Assistant経由でマツダのコネクティッドサービスを利用していたユーザーの数は227人でした。ただし、この統計情報に加えられるのはオプトインしているHome Assistantユーザーのみで、これは全体の3分の1程度と推定されています。加えて、Home Assistantはスバル、日産、テスラなど、他の自動車メーカーとの統合を続けているため、Home Assistantはまだまだ自動車との連携に利用できるとアピールされています。

Ars Technicaがロスワイラー氏にメールでインタビューしたところ、統合関連の詳細についてはコメントできないと述べつつ、Home Assistantとマツダのコネクティッドサービスとの統合はあくまで自身の趣味として行ってきたことであると述べました。

「マツダから連絡があった時、私のとれる選択肢は従うか潜在的な法的リスクにさらされるかのいずれかでした。たとえ自分のやっていることが道徳的に正しく法的に保護されているものであると信じていたとしても、法的手続きには依然として経済的コストがかかります。そのため、リスクのある選択肢を選ぶことはできませんでした」とロスワイラー氏は述べています。

Home Assistantの創設者であるPaulus Schoutsen氏は、Ars Technicaに対して「ユーザーが自分のデバイス上のデータから締め出されてしまうことを残念に思います」「今回のケースのように、クラウドに接続されたデバイスを所有することは、たとえお金を払っていてもメーカーの恩恵に永久に依存するということを意味することを改めて示しています」「ユーザーがHome Assistantをサポートするデバイスを利用してくれるのは、ベンダーがプラットフォームやデバイスに関するコミュニティを構築してくれるためです。これは奨励されるべき行為であり、争われるべきではありません」と述べました。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by logu_ii

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