サイエンス

夜中に人工的な光を浴びることが精神疾患のリスクを高めるという研究結果


19世紀末から20世紀初頭に電球が普及することで、人間は暗い夜でも仕事を続けることができるようになりました。しかし、本来なら眠るべきにもかかわらず、夜に明るい場所にいることは健康に悪影響を与える可能性が指摘されてきました。モナシュ大学の心理学者であるショーン・ケイン教授が「人工的な光が精神疾患のリスクを高める」と主張する論文を発表しました。

Day and night light exposure are associated with psychiatric disorders: an objective light study in >85,000 people | Nature Mental Health
https://www.nature.com/articles/s44220-023-00135-8


Artificial light exposure is extremely harmful to our mental health • Earth.com
https://www.earth.com/news/artificial-light-exposure-is-extremely-harmful-to-our-mental-health/

人間は「概日リズム」と呼ばれる生理現象の周期を持っています。この概日リズムはだいたい25時間単位の明暗周期に従っており、自然と眠くなったり目が覚めたりはこの概日リズムに左右されています。しかし、夜中に必要以上に光を浴びてしまうことで、この概日リズムに狂いが生じてしまいます。


ケイン教授は「概日リズムの乱れは多くの精神疾患に共通する特徴です。光は概日リズムを左右する要素であり、夜間の光は概日リズムを乱します。したがって、習慣的に人工的な光を浴びることは精神疾患を患いやすい環境的危険因子である可能性があります」と述べています。

ケイン教授はUKバイオバンクに登録している8万6772人を対象に、光を浴びる量、時間、睡眠パターン、身体活動レベル、精神的な健康状態を分析しました。

その結果、夜間に人工光を浴びることが不安や双極性障害、PTSD、自傷行為といった疾患を抱えるリスクの増加に関連していることが示されたとのこと。また、夜間に光を浴びる量が多い人のうつ病リスクは30%増加することも明らかになったそうです。


逆に、昼間に十分光を浴びる場合はうつ病のリスクが20%低下し、他の精神疾患のリスクの低下との関連も示されたとのこと。また、被験者のメンタルヘルスは夜間に光を浴びることによる影響を受けていたものの、身体活動レベル・季節・雇用形態による影響は見られなかったことは重要だと、ケイン教授は主張しています。


ケイン教授は、人間の脳は明るい昼間に光にさらされ、夜間は完全に暗闇に包まれるという条件で進化してきたと指摘。「自然の明暗サイクルに比べて、現代の私たちの昼間は暗すぎ、夜は明るすぎる電灯の下で1日の約90%を屋内で過ごしています。この生活が、私たちの体を混乱させ、気分を悪くさせるのです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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