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Amazonユーザーは「顧客ではなく商品」、送料無料などの特典で集めたユーザーをマケプレ業者に提供する仕組みとは?


多くのAmazonユーザーは、Amazonをインターネットショッピングのためのサイトだと考えています。しかし、消費者相手の小売業はAmazonの主要な収益源ではなく、Amazonを通じてビジネスをしているサードパーティー企業こそがAmazonの本当の顧客であり、ユーザーはそのための餌に過ぎないと著作家のマット・ストーラー氏が指摘しています。

The FTC Sues to Break Up Amazon Over an Economy-Wide "Hidden Tax"
https://www.thebignewsletter.com/p/the-ftc-sues-to-break-up-amazon-over

Amazonは1億人を超えるPrime会員に「送料無料」を含めたさまざまなサービスや特典を提供しており、そのために年会費139ドル(約2万600円、日本では年会費5900円)を請求しています。


しかし、この会費は送料無料や見放題のコンテンツのコストをまかなうにはほど遠く、JPモルガンのアナリストは「各サービスの価値を合計するとAmazon Prime会員の本当の価値は年間1000ドル(約14万8000円)になる」と見積もりました

そのしわ寄せは、最終的にAmazonで買い物をしているユーザーに行くことになります。Amazonで商品を販売している容器メーカー・Simple Modernの共同設立者であるマイク・ベッカム氏は「多額のコストがかかるものを提供するには、そのコストを別の場所で回収しなければなりません。その結果、Amazonは広告に依存するようになりました。これが、Amazonでの検索結果が日増しに悪化している理由です。オーガニックな検索結果より上に、商品の広告を表示させようというインセンティブが強く働いているのです。私は何年もAmazonで物を売ってきましたが、自信を持って言えるのは、広告費は顧客への価格に織り込まれているということです。つまり、これは顧客への隠れた税金ということになります」と話しました。


アメリカ連邦取引委員会(FTC)がAmazonを独占禁止法違反で追及した2023年9月の訴訟では、Amazonが市場の独占を通じて徴収している「隠れた税金」が争点のひとつとなっています。FTCによると、AmazonはPrimeサービスを通じてオンライン通販の参入障壁を高くしており、この独占力を行使してサードパーティー企業に「フルフィルメント by Amazon(FBA)」という在庫管理サービスやAmazonへの広告掲載を半ば強要しているとのこと。


もし企業がAmazonに従わなかった場合、その企業の商品は検索結果から事実上排除されることになります。これについてFTCは「Amazonで広告された商品は、広告されていない商品と比べてクリックされる可能性が46倍高くなります」と指摘しました。

このようにしてAmazonがサードパーティー企業に請求する費用は、Amazonの収益の50%を占めるまでに膨れ上がっており、総額1230億ドル(約18兆2600億円)と見積もられているこの資金がAmazon Primeの無料配達やPrime Videoなどのサービスを支えています。そして、サードパーティー企業がAmazonに支払う負担は、最終的に商品の価格へと転嫁されることになります。これが、Amazonの「隠れた税金」の正体です。

以下は、Amazonのマーケットプレイスに出品しているサードパーティー企業の売り上げ(青色)とAmazonのファーストパーティー売り上げ、つまりAmazon自身の売り上げ(オレンジ色)の比率を表したものです。Amazonでの売買の半分以上がサードパーティー企業によるものだということが示されています。


こうした点から、マット・ストーラー氏は「ほとんどの人は、Amazonを『顧客に物を販売する小売業者』と考えています。しかし、小売業のエンドユーザー、つまり私たちのような一般消費者は実際には顧客ではなく、商品なのです。本質的に、Amazonは私たちへのアクセスを提供する仲介業者であり、実際の顧客はAmazonのインフラストラクチャーに依存して商品を売っているサードパーティー企業です」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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